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【活動報告】第12回「敵基地攻撃と日米一体化、防衛費倍増は国民負担に?!」質疑応答篇

90分にわたる、半田滋さん、猿田佐世さんによる対談の後、松下玲子さんの司会で、質疑応答となりました。

■政府は戦争になることを考えていない

会場の方1
財政についての質問です。いままで日本が戦争をするときは、臨時特別軍事費とかああいうところが引っ張ってきたと思います。これから防衛費が上がることに関して、昔のように国債から持ってこれないのであれば、特別会計の大きな比率を占める年金を削って捻出するのではないか。それが公になると、世論も変わってくると思います。
防衛費を増額するための財源について、政府の腹積もりがあるのか、教えていただきたい。

半田
政府は敵基地攻撃能力さえ持てば、日本はますます安全になるという立場なので、戦争になるなどとは、微塵も考えていないと思います。
本来そんなことではいけないわけです。抑止をやることと同時に、対処、つまり武力を使うこともセットで考えなければいけないんですが、少なくとも、それを考えている節はないです。
したがって財源の問題以前のところで、どういう形で戦争になるんだろうとか、どんな敵基地攻撃が可能だろうなどと考えているんだと思います。

■日本が中立なんてありえない

会場の方2
グァムが攻撃されたとき、たまたま自衛隊がいて、日本のほうが先に察知したら、いままでの自衛隊は撃ち落とせなかったのが、できるようになる。これは同盟国ですから、当然じゃないでしょうか。やれなかったら、日米同盟は完全に崩壊するんじゃないでしょうか。
猿田さんは「事前協議でノーと言える」というようなことをおっしゃっていました。真ん中に立つってことですよね。もしそんなこと言ったら、もう日米同盟、完全に崩壊します。
日本は、あくまでアメリカサイドに行かないとダメじゃないか。日本が攻撃されないから、アメリカの戦艦が攻撃されても、自衛隊は守れても何もしないというのはまずいんじゃないか。
軍事訓練では、アメリカ側から、「自衛隊がすごくたのもしい」と言われるようになった。僕は、これはちょっといい方向に行くんじゃないかなと思うんですけど、違うんでしょうか。

半田
存立危機事態は、アメリカからの要請がないとやれません。自衛隊がそこにいるからといって、自動的にアメリカを守るような行動はできない。
グァムに自衛隊が展開するという前提が考えにくいです。そのこと自体、まず起こり難いことを仮説としておっしゃっていられるので、そのようなことはまずないと、お答えをしておきます。

猿田
私は、「事前協議の場面が来たときにノーと言ってください」と言っているのではありません。事前協議の話をするということは、米軍がその協議でOKが出たら1時間後には飛び立つという状況で、飛び立った瞬間、中国から地方から敵基地攻撃をしていいということになります。
そんな場面を想定して言ってるんじゃないんです。
そういうことにならないように、前から「ノーと言うかもしれない」と言っておくんです。
いまのアメリカ議会は、中国に対して過激な委員会が立ち上がっていて、対中強硬論ばかりです。中国を叩いておけば次の選挙で票が増えるような状況です。
バイデン政権もそっちに引っ張られている。中国が「台湾を訪問するな」と言っていたのに、ペロシ下院議長は訪問し、そうしたら、日本の排他的経済水域にミサイルが落ちました。
行かなければ、あんな大きなミサイル演習をしなかったし、あれがデフォルトになって次の演習はもっと拡大されていく。
その意味で言うと、事前協議でノーと言うのではなく、アメリカの挑発的な声を止めるために、別にオモテでノーと言ったと広めなくてもいいんです。裏で、「もしかしたら、ノーと言う可能性がありますよ」と、ささやくだけでいいんです。
「アメリカのやることすべてに対してイエスと言うんじゃないよ」と、言うだけでいい。
このことは、すでに国会で答弁を得ていますので、そういう意味でアメリカに届いてると思います。

松下
猿田さんの、「事前協議の対象で基地は使わせない」との言葉に、私はちょっと引っかかっているんです。「使えない」じゃないですか。「使わせない」でいいんですか。
憲法9条との関係で「使えない」と言えないのかなと思うのですが。

半田
それは言えないでしょう。在日米軍は日本防衛のためだけじゃなく、極東の安定と平和のためにもいるわけです。必ずしも日本のためじゃなくて、海外での戦争のときの作戦行動もするのが前提になっているわけです。憲法9条のもとでどうこうという話ではないんです。

■台湾有事は不可避ではない

会場の方3
いろいろなお話の中で、台湾有事が不可避ではないということを、はっきりさせておきたいと思います。米中対立ですから、日本単独で戦争になる理由はないということ。北朝鮮だって、敵はアメリカですよね。
たとえば、北朝鮮に日本が財政を保障するとか、「台湾有事に関わりません」と予めはっきりさせておく。台湾で独立したいというのは1割もいないというなら、中国の内政問題に日本国民の命を危険にさらすような行動はすべきじゃない。
あるいは中国との関係では、尖閣の問題について、緊張を和らげる一定の合意ができないのか。そんなことを思います。

猿田
昨日まで韓国にいたんですが、誰ひとり台湾有事について話してくれないんです。私が会うのは、安全保障の専門家とか、現政権や前政権の幹部なんですが、こちらから振らない限り、台湾有事の話が出てこない。
北朝鮮の話と、日韓関係ばかりです。韓国は台湾から遠いし、中国が韓国を攻撃することはありえないので、あまり関心がない。東南アジアの国もそうです。
東南アジア11カ国の人と一緒にヨーロッパへ行き、NATOの幹部と安全保障戦略の会議をしたんですが、そこでも台湾有事の話をするのは私だけでした。
この感じだと、台湾有事と言いまくってるのはアメリカと日本だけなんじゃないか。
日本も冷静になるべきです。ウソも100回言うと本当になると言われるように、これだけ軍事力を高めていくと、中国に高められたっておかしくないわけです。
いま、中国はASEANの国々がすごくかわいいわけです。「どっちを選ぶか選ばせないで」と言うので、大事にしています。アメリカも同じです。
さきほど、中立はよくない、日本は100%アメリカ寄りであるべきというご意見の方がいらっしゃいましたが、私は「真ん中に立て」と言っているのではないんです。日本がアメリカ寄りだなんて分りきっているので、ちらっと中国や北朝鮮を見て、手を差し伸べるだけできっと緊張が緩和され、アメリカも喜ぶと思うんです。
そういう外交をすることが何よりも大事だと思います。

■中国は台湾をどうしたいのか

会場の方4
中国は台湾を軍事的に抑えようと思っているのでしょうか。もし中国が台湾の繁栄をそのまま自分の国家として取り込みたい場合、戦争という手段を使わないことが非常に現実的ではないか。
統一することに一番腐心しているのに対して、アメリカがちょっかいを出してくるので、それが中国にとって非常に良い論争になってるんじゃないか。そんな気がするんですが。

半田
習近平主席は去年の10月の共産党大会でも、「平和的統一が一番だ」と言っているわけです。
しかしながら「外国からの働きかけや、また台湾の独立勢力の動きに対しては武力の行使の放棄は約束しない」と言っている。つまり、台湾の独立が、中国にとってのデッドラインです。そこは絶対に踏んじゃいけない。
だから、そこが維持されていれば、細く短い安定は期待できるかもしれないんですが、一方でやはりアメリカの働きかけが強まったり、習近平国家主席の政治的な野心が台湾統一という成果をもたらしたいとなったら、起きるんじゃないか。
台湾の人たちの気持ちよりも、むしろアメリカと中国の考え方によって起きる可能性がゼロではないと思います。

■フィリピン外交を知りたい

会場の方5
今日のテーマのひとつである、敵基地攻撃と日米一体化の危うさがよく分かりました。
私は今日の議論の元凶は安保条約だと思うんです。
ですから、日米安保を破綻させればいいわけですが、今までずっと取ってきた方式ですし、それなりの価値はあったと思います。
それで、フィリピンとアメリカの条約で、有効基地使用条約を、ドゥテルテ大統領が破棄したそうですが、どうしてできたんですか。

猿田
フィリピンは私の専門で『米中の狭間を生き抜く』という本も書きましたので、これを読んでいだたけるとありがたいです。
ドゥテルテ大統領は人権問題などで問題が多く、お好きではない方も多いと思いますが、外交ではものすごく見事で、フィリピンが経済発展をする道はここしかないという確信を持って国を治めています。
フィリピンも中国との間で領有権争いをしていて、国民からも「フィリピン軍を送って中国の漁船を追い出してくれ」との声も来るそうですが、それに対して、施政方針演説で「国民のなかから軍隊を出してくれと言う声があるが、そうしたいなら、君たちは、私を大統領に選ぶべきではない」と言うんです。
「あの中国の軍隊と戦ってうちの軍隊が勝てるわけがない」と言ってしまう。
自分たちには外交しかない、と。あの「アジアのトランプ」と呼ばれるようなハチャメチャな大統領がそういうことを言う。
フィリピンは1992年に米軍基地を撤退させています。そのあと、98年に米国と「訪問米軍地位協定(VFA)」を締結し、米軍を呼び戻しました。ただ何万にもいたのに、600人程度です。フィリピン軍のなかに、米軍が少しいる程度です。
その地位協定は日本よりもひどくて、米軍が何か犯罪をしても裁判もないような状態なので、そんなことを続けるのであれば、地位協定を破棄してこれなくすると宣言したんです。
これはドゥテルテ流で、本当にやりたくてやったのか、バーターで、他のものを引き出そうとしてやったのかは、分からないのですが、アメリカには効きました。そして中国からの投資も引き出した。本当にずる賢い。
最終的には撤回をやめて、地位協定をそのまま結んでおくことになりました。
そういう荒っぽいことはドゥテルテしかできません。シンガポールのリー・シェンロンぐらいのほうが、バランスがいいとは思います。
でも、そういう東南アジアのしたたかな、ずるがしこさの中で、小国ながら戦争には絶対に巻き込まれたくないということでやっています。
日本も、その100分の1でもいいから、日米同盟の中で中国ともバランスを取っていけるんじゃないかと思います。

■日本は日米安保をうまく利用していた

半田
安保条約が元凶というお話でしたけれど、安保条約は、かつては日本政府の方が上手に使っていました。軍事的にお金をかけず、アメリカの軍事力を上手に日本の安全のために役立て、経済大国に向かえたわけです。
しかし、冷戦が終わったあたりから、アメリカからの圧力も出てきましたし、また日本の政治家が、過去の戦争を経験してない人たちが増え、勇ましいことを言った方が票になると考えている人もます。アメリカも日本が軍事的な強化をし、アメリカ軍が出て行かなくても、日本が独自に対処できるまでの軍事力を持ってくれた方が便利だという思いになってきました。
それをさらに超えて、「アメリカ軍を守るために戦争するんだ」とまで言う首相が出てきた。アメリカはそんなことを言わなくなってるのに、いつの間にか日本側が、相手を忖度をして、どんどんアメリカを楽にさせようとしています。
アメリカの武器を買うなんて、楽どころかアメリカに日本の富を付け替えてるようなものです。ガラクタを買わされてるのに、喜んでお金を払い続けるわけですから。
安保条約の、使い方の問題なんだろう思います。

■安全保障のリアルを知って、知らせよう

松下
対談を通じて、会場の皆様の質疑応答を通じて、今日は敵基地攻撃能力というのがまさに先制攻撃で、そして米軍とともに日本の自衛隊が他国と戦争することになるということも、明らかになったのかなと思っております。
もっともっと私たち議論が必要だと思っておりますし、さらにはフィリピンからも学びたい。命がけの外交によってフィリピンはしたたかなずる賢さの外交をしていると、猿田さんからお話ありました。半田さんからは、平和は軍事力ではなく、命がけの外交によって初めて実現するというお話をいただきました。
最後に、お2人から一言ずついただきます。

猿田
3文書改定から、全国を回らせていただいています。いろんな悩みを聞きました。
こういう会には、お年寄りしか来なくて、「若い人は関心がない」とか、「どんなに頑張っても、政治は変わらない」とかいろんな悩みを聞きました。
結局、私たちひとりひとりが動くしかないんです。
ご家族やお友だちと話をしてみるとか、政治家に、国会で取り上げてくださいと手紙を書くとか、何かしてみる。
今日は疲れているでしょうから、明日の朝になったらちょっと元気を出して、何かをしていただく。それしか社会を変える方法ないんです。

半田
政府は長い時間をかけて我々を洗脳してきた面もあると思います。
北朝鮮がミサイルを撃つたびにNHKがトップニュースで伝えたり、尖閣諸島に中国の公船が入るたびに、危険をあおったりしてきました。
実際に北朝鮮は日本を攻撃する意図があるのか、中国は日本を侵略するつもりでやってるんだろうか。そうではないんでしょう。そこをちゃんと勉強していく必要があると思うんです。
新聞もテレビも断片的な情報ばかりで、体系的な話はほとんど得ることはできません。
今日の猿田さんの話、私の話も、一応、体系的になっていますので、こういった機会に、事実を、できる限り詳しく理解をしてほしい。
理解ができたことは、できるだけ多くの方に伝えていってほしいと思います。
選挙や、市民としての活動を通じて、日本の平和を維持していくためにお力を尽くしていただければいいかなと思います。

松下
今日はありがとうございました。
私自身も今日のお話を聞いて、改めて安全こそ大切だけれども、武器を買ったり、敵基地攻撃能力を保有したりするのではない、相手を威嚇しない安全保障を、もっと考えないといけないと思っています。それは食料安全保障、エネルギー安全保障です。食料は農業政策、またエネルギーも自然エネルギーに転換をする。そういう議論をしながら、市民ひとりひとりが考えながら政治を変えていきたいと、改めて思った次第です。
ありがとうございました。

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