今回の会場からの声は、質問というより、主張が多く、旧統一教会への憤りが強いものでした。
「統一教会は私の推計では累積1兆円のお金を韓国に送っている。日本から外国にこれだけ多額の金額を送ることを、政党が支援していたのなら、戦前なら売国奴です。日本の国益に合わない。この点が、日本国家の問題として、いちばんの問題だと思う」
「毎日新聞が、文鮮明が書いたという膨大な資料を解読してスクープしていました。いま、途中で止まっているんですが、そのなかに天皇に関する記述があるかどうかを知りたい。」
「山上徹也容疑者は、「母を信じたかった」と書いていたそうですが、それが本当なら、あまりにも可哀そうで涙が出できます。事実ですか?」
「政治と宗教というと、公明党です。幸福の科学も政党を持っています。そういうところは、どれくらい政治に宗教が影響を与えているんでしょうか。宗教が実際の選挙で票にどれくらい影響を与えているのかに興味があります」
「有田さんや紀藤(正樹)弁護士が統一教会から訴えられましたが、どのように有田さんたちを応援したらいいでしょうか」
「統一教会と関係があるという200人を超える議員への対応はどうなりますか」
「立憲民主党は、野党とは言えない維新と国会で手を組んで、信用できなくなっている。私は社民党のファンですが、野党はリベラルな人たちを失望させないでほしい」との訴えもありました。
有田氏は、「僕は答える立場じゃないんだけれども、維新との関係は、僕が理解してる限りでは、国会での行動に限定しているものだと思います。維新については、立憲民主党の菅(直人)さんは、今年の参院選でもずっと大阪に入り、維新を批判していましたが、現実には野党ではなく与党だと思います。そんな党と一緒にやっていくような人間になってはいけないと個人的には思ってます」と答えました。
では、以下、会場からの質問への答えです。
■統一教会の経済活動と韓国への送金方法の変化
統一教会の、日本から韓国への送金は1兆円よりはるかに多い。
日本における経済活動は、最初はリアカーで廃品回収をやり、その次にハンカチや珍味を売っていたんですが、それではお金にならない。
文鮮明教祖が1975年7月に日本の組織に対して、もっとお金を送れという「送金命令」を出しまして、それから霊感商法が主要な経済活動になっていきます。
月20億円で、1975年から約10年近くで2000億円、1999年から9年間に約4900億円を送っています。これは統一教会の内部文書による数字です。
ところが、2009年、民主党政権になってから、統一教会系の「新世」という印鑑販売会社が、警視庁公安部に摘発された(「新世事件」)。以後、霊感商法ができなくなった。
そこで、山上徹也容疑者のお母さんのように、お金を持ってる人を信者に仕立て上げて、1億、2億と取るようになり、いまはこのやり方が主流となっています。
韓国への送金ルートは、今は韓国のウリィ銀行を通じて送っています。
■信者が現金99万円を持って韓国へ行く
もうひとつの特徴的な方法が、信者が現金を持って韓国へ行く方法です。昔からのやり口で、この11月も、日本から女性信者300人が韓国への施設に行きますが、ひとり99万円の現金を持って行きます(外為法で現金で100万円以上持ち出す場合は申告が必要なため)。300人ですから約3億円です。これがいまの基本的なやり方です。
1990年代の合同結婚式のときも、韓国へ行く女性たちは白い封筒を持たされ、99万円を入れて行きました。韓国の空港へ着くと、まず、その白い封筒を集める人が来ます。
一時的には北朝鮮にも送金していたので、信者が香港に行って、香港の銀行から北朝鮮に送っていたこともあります。今はそれも厳しくなって台湾から送っています。
統一教会で現金を運んだことのある人に聞いた話では、1億円を東京から大阪まで運ぶとき、新幹線のグリーン車の窓側にかばんを置いて、運んだそうです。
とにかく、いろんな形でお金を韓国に送り続けていることが、統一教会の大問題であることは、いま、ご指摘の通りです。お怒りはもっともです。
このままでは、ずっと貢がされ続けます。
■安倍元総理のスローガンは、偶然なのか、統一教会と一致
統一教会の教えは、「いずれ世界は韓国語に統一される」というものです。
『原理講論』という教典に書かれていますが、日本は代々、天照大神を崇拝している全体主義国家でサタンの側にあり、韓国を植民地支配したこともあるから、韓国の文鮮明教祖にお金を出すのは当たり前だ、という考えです。
なぜ自民党の人たちが、そんな人たちとべったりだったのか。これからもっと問題にしていかなければなりません。
安倍晋三さんは「美しい国 日本」をスローガンにし、総理になる直前の2006年7月に、『美しい国へ』(2013年に完全版)という本を文春新書から出しましたが、その2年前に出た、日本の統一教会の初代会長である久保木修己(くぼきおさみ)の遺稿集のタイトルは『美しい国 日本の使命』(2004年刊)です。
さらに安倍さんが政権を取った時、2012年の選挙のスローガンにしたのは「日本を取り戻す」でしたが、(統一教会系の)世界平和連合の機関誌「世界思想」の12年5月号の特集は「戦後憲法の終焉 今こそ日本を取り戻そう」。
偶然だとは思いますが。
■文鮮明は日本の天皇をどう考えているのか
毎日新聞がスクープしたのは、文鮮明が話したことを書いた450巻以上の本のことで、中断しているのは、おそらくまだ翻訳してるんだと思います。
文鮮明は、(オウム真理教の)麻原彰晃もそうなんですが、教祖というのは誇大妄想です。自分がメシアであると自分で信じ込まないと、メシアになれない。だから大きなことばかり言っています。文鮮明は「私は王の王になる」と言っていました。
日本の天皇については、「皇居をぶっ壊す」「二重橋をぶっ壊す」と言っています。
1984年の「文藝春秋」7月号に、副島嘉和(そえじまよしかず)さんという、統一協会の広報局長、「世界日報」編集局長をやっていた人が、「これが『統一教会』の秘部だ」というレポートを発表しました。そこには皇室について文鮮明がどういう立場なのかが暴露されています。
統一教会には「四大名節」という記念日がありまして、その日は朝5時から文鮮明教祖夫妻と家族が集まります。そこに、世界各国の指導者が来る。本人が来るのではなく、当時のアメリカ大統領レーガンの役をアメリカの統一教会の幹部がやり、全斗煥の役は韓国の幹部、そして日本の天皇の役は、日本の統一教会の久保木修己会長がやっていました。
この人たちが、ひとりひとり文鮮明夫妻の前で、跪いて、拝跪し、ひれ伏すという儀式です。それが副島さんによって暴露された。
「文藝春秋」のその号は6月10日発売ですが、その8日前に、副島さんが世田谷のマンションに帰ろうとしていた直前に、暗闇からスキンヘッドの男が現れて左の顔をメッタ打ちされ、ナイフで心臓のまわりを刺されて危篤、重症となった事件もありました。
副島さんは「文鮮明の指示に基づいて、韓国から来た男が私を襲ったんだ」と、今は言っています。
こういうことが、おそらく、これから明らかになってくると思います。もしかしたら、「毎日新聞」が自粛しているのかもしれませんが、それは調べてみます。
■山上徹也容疑者と母の関係
山上徹也容疑者は、お母さんが1億を超える献金をして、家庭が破壊され、自分も自殺を図っていますが、お母さんを殺害しようと思ったことは一回もないんです。
お母さんを大事にしていたし、お母さんは被害者だという理解をしています。
息子がああいうこと(安倍元首相銃撃)をしたら、普通は「息子がとんでもないことをした」と統一教会をやめると思うんですが、山上容疑者のお母さんは、そうではない。
検察の取り調べでお母さんは「教団に(対して)悪いことをした」と供述しています。
今、お母さんは奈良から東大阪に移転して暮らしていますが、毎日、430万円もする『天聖経』という文鮮明教祖の御言葉集を読んで勉強しています。「自分の信仰が弱かったから、あんな事件が起きてしまった」と思ってしまっているんです。
それが統一教会の怖さです。お母さんは家族を破壊するようなことをやってしまったんだけれども、やっぱり被害者なんですよね。
その構造を、山上容疑者はよく分かっているんだと思います。
非常に不幸な家庭ですが、それは山上一家だけではありません。報道されていないだけです。全国で10年も20年ずっと続いてる。これが統一教会の反社会性です。
山上容疑者への同情の声は多く、全国から差し入れが倉庫三つ分くらい集まり、現金も100万円をこえています。
安倍元首相はお気の毒でしたが、その事件の背景を知ることで、山上容疑者への同情が広がっていることも、事実としてお伝えしておきたい。
その意味でも、裁判をしっかりやらなければだめです。これを隠すようなことがあったら、問題になります。
戦後史の闇も含めて、明らかにしなければと、強く思っています。
■統一教会の選挙での役割とその力
統一教会の票をもらって当選したのは、安倍元総理の補佐官をしていた、参議院議員の井上義行さんです。この方は、2019年の参院選で自民党の比例代表区から出て8万7946票で落選しましたが、今年(2022年)は16万5062万票で当選しています。倍近くになっています。8万票を増やしています。そのうち5万から6万が統一教会の票ではないかと思っています。
「ウコンの力」を作っている統一教会のコスモフーズは、埼玉県神川町に工場があり、ここには文鮮明が3回訪れていまして、統一教会にとって「聖地」になっています。
井上義行さんが今回の選挙で取った票が、いちばん得票率が高いのが、この神川町なんです。工場に勤めている信者が暮らしているからです。
(注・参議院の比例代表区は政党名と個人名で投票できるが、大半が政党名で投じるので、自民党の場合、12万票取れば、当選できた。)
立正佼成会など、宗教団体が政治活動をすること自体は問題ありません。自分たちの要求、目的を実現するために政党を支援し、一緒にやっていくことはあるでしょう。
以前、創価学会が問題になったのは、「国立戒壇」にして、創価学会の教えを「国教」にしようとしたことです。それには相当な批判があり、できなくなりました。
今、宗教団体でいちばん勢力があるのは、創価学会・公明党の関係ですから、日本の政治をどう動かしていくのかは、批判的に見ていかなければならないと思います。
選挙に弱い人たちが、猫の手も借りたい、少しでも票がほしいと、統一教会の誘いに乗って、政策協定にサインしたり、応援にきてもらったりしました。
統一教会の信者たちは真面目ですから、朝9時から夜9時までずっと電話かけをしてくれます。よく働いてくれるんです。一般のボランティアと一般の宗教団体のボランティアではエネルギーが違う。
今回の参院選の後、統一教会の古参の幹部から聞きましたが、「死に物狂いで選挙をやって、憲法改正に必要な3分の2の議席を獲得した」と言っていました。彼らはそう思っている。
また、「政策協定合意書を書いてもらったのは、自民党だけじゃなく、維新と国民民主」とも言っていました。
この構造を、全部、今回のことをきっかけに暴き出して、こんなことでいいのかっていうような政治を作らなければいけないと思っております。
■名誉毀損で訴えられた
日本テレビの「スッキリ」という番組で、「警察は統一教会を反社会的団体と認定している」と発言したとして、前統一教会から名誉毀損で訴えられました。もちろん受けて立ちます。
「統一教会は反社会的」と言ったのは、統一教会が銃砲店を経営していたことについて、国会で問題になったときに、警察庁も「これは違法です」と言っているからです。違法団体なんです。霊感商法についても1987年5月の衆議院の法務委員会では、「各種の悪徳商法のなかでも、最も悪質だ」と警察庁が言っています。
だから、負けるはずはない裁判なんで、全部で五つの裁判が別々にあるんですが、統一教会の本質についての裁判は僕が抱えることになります。
すでに「有田芳生を支える会」がほぼできていまして、近々インターネットで公表します。弁護団も5人がほぼ決まりました。
そう長くかからずに判決を出したい。この闘いは、「裁判で判決が出て勝ちました」だけで終わらせてはならない。その先についても、いまは言えませんが、考えています。
■統一教会と関係のある政治家はまだいる
いま、自民党の調査で統一教会とかかわっていた国会議員は180人となっていますが、もっといます。「自分は関係ない」と言っている人で、関係のある人もいます。
その隠れているひとりが、麻生太郎さん。福岡で「日韓トンネル研究会」の顧問をやっていましたし、1980年代からの繋がりがあります。
参議院の山谷えり子さんも、「統一教会には関係ない、私は選挙の支援を受けていない」と言っていますが、まったくの嘘です。統一教会の信者たちで証言する人たちもいますし、証拠もあります。
これから年末年始にかけて、あるいは来年の地方選挙に向けて、ボロボロ、国会議員、地方議員で出てきます。
地方議員では、全国で30人を超える信者議員がいます。北海道の旭川市には2人、新潟の県議に女性県議ひとり、大阪の維新にも信者で合同結婚式、霊感商法をやっていた人がいましたが、もう出ないようです。徳島の自民党市議、宮崎の県議などなどです。
そういう人たちが隠れていますから、地方選挙に向けて明らかにしていかなければなりません。
国会議員については200人以上がドロドロの関係にあるわけです。
1986年の衆参ダブル選挙のとき、130人が「勝共推進議員」として当選したと、当時、国際勝共連合が発表しています。その後、150人まで増えたと発表している。90年には「思想新聞」という彼らの新聞に105人の名簿が出ています。
そこには90年に初当選した細田博之さんや、麻生太郎さんも入っています。
いま自民党の調査で180人ですから、隠れている人を含めれば200人はいるはずで、引きずり出さなければなりません。日本の政治は歪められてきました。政策にも影響を与えています。
それを明らかにすることで、日本の民主主義を復活させる行動をとっていきたいと思います。
会場は大きな拍手となりました。