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NEW!!【活動報告】第17回「統一教会と政治を考える」講演篇

第17回は「武蔵野政治塾IN鹿児島」として、鹿児島県鹿児島市のサンプラザ天文館で開催されました。
テーマは「統一教会と政治を考える」で、ジャーナリスト・鈴木エイトさんが5月25日の第15回に続いて、武蔵野政治塾へ二度目の登場となりました。
司会は前衆議院議員(鹿児島県第1区)川内博史さん。

川内博史さんの挨拶から始まりました。
「統一教会と政治を考える」、みんなで考えるという会をスタートさせていただきます。
岸田総理は、解散権を弄んで、解散を回避しました。本来、本日の会は決起集会にするつもりだったんです。何としても勝たなければならない。日本の政治を皆さんの生活のためのものにするために、変えたいと思っています。そこで、鈴木エイトさんに、統一教会と自民党の関係についてしっかりと解説していただき、皆さんと知識を共有して、多くの県民の皆さんに知っていただいて、政治を変えてくことにつなげていこうということで、この会を企画しました。
この会は「武蔵野政治塾in鹿児島」です。武蔵野政治塾さんにご協力いただいて、川内博史と武蔵野政治塾との共催という形でこの会は実現いたしました。
今日は、橘さんの代理として、武蔵野政治塾運営委員の丸山弘志さんがいらしています。私と同年代で、京セラにお勤めされていたこともあり、鹿児島にも縁の深い方です。

丸山弘志・運営委員
武蔵野政治塾運営委員の丸山弘志と申します。
武蔵野政治塾は2022年10月10日に第1回を開催し、本日で第17回になります。さまざまなテーマで講師の先生をお呼びし、会場の皆様と議論を行なってまいりました。人とリアルに会い、議論を交わし、意見交換をする場を提供しています。
「いまの政治を変えたい」との思いは、みなさん共通だと思います。議論の復活によって、政治の再出発を目指したいと思っています。
ここにいらした皆さんは、日本をとりまくさまざまな問題に高い関心がおありかと思います。人がその場に出かけて、行ってまでして話を聞こう、議論をしようという意思の力は、すごく大きいと思います。
本日のテーマは「統一教会と政治を考える」です。山上容疑者による銃撃事件からまもなく、1年が過ぎようとしています。メディアも、統一教会のことをあまり取り上げなくなってきました。しかし、(春の)統一自治体選挙では統一教会の支持を受けた議員が当選し、その事実が隠されています。
私たちはこの問題を絶対に風化させてはならないと考えています。武蔵野政治塾は過去4回、この問題をとりあげてきました。
鈴木エイトさんは、3000日、約21年にわたり、ありとあらゆる妨害があるなか、統一教会を追及してこられました。心から敬意を表したいと思います。
武蔵野政治塾は、「静かに、落ち着いて、そして激しく議論する」場です。本日も、そうしていきたいと思います。

再び、川内博史さんがせマイクを持ち、会の趣旨を説明しました。

最近、政治や行政が、みんなの気持ちを踏みにじっていると強く感じます。どこにそんなにお金があると思っているのか、無い袖は振れないはずなのに、防衛増税などと総理が平気で発言する。増税しても大丈夫だと平気で言っています。
昨日(6月23日)は、沖縄戦の全戦没者追悼の記念の日でした。沖縄戦では20万人の方が殺されたわけです。毎年、追悼式に内閣総理大臣が出席しています。その式辞では「沖縄戦の犠牲者」という言葉を使います。地震の犠牲者、風水害の犠牲者、台風の犠牲者という、自然災害と同じ扱いをしています。
でも、日本国憲法には「戦争は政府の行為によって起こる」と書いてあります。したがって、日本国総理大臣としての正しい言葉は「政府の行為によって起こされた間違った戦争によって犠牲になられた人びとを追悼する」とあるべきで、私が総理大臣であるならば、そう述べます。
最近の政治や行政は、嘘や誤魔化しが横行している。その原点に、統一教会が深く深く影を落としているのではないか。そして、そのことを私たちがしっかりと認識し、多くの人びとと共有することで、日本の政治・行政を変えていかなければならない。
一部の人たちのものではなく、みんなが助け合い、みんなが思いやりをもって、子どもたちの成長を育めるような社会にしていかなければならない。
その思いから、鈴木エイトさんのお話を聞く機会を提供させていただくことにしました。

鈴木エイトさんの講演は、スライドを見せながらのものでした。スライドには書かれていますが、発言されなかった部分もあり、このレポートでは、スライドから適宜、補っています。
なお、現在は、「世界平和統一家庭連合」という名称ですが、講演ではすべて「統一教会」となっております。

まず、自己紹介からで、配布資料を紹介しました。

【自己紹介】
鈴木エイト:ジャーナリスト・作家、滋賀県生まれ。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」主筆。宗教カルトと政治というテーマの2011年よりジャーナリスト活動を始める他にカルトの2世問題や反ワクチン問題・ニセ科学問題を取材しトークイベントの主催も行う。
近著: 『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言 』 『自民党の統一教会汚染 追跡3000日 』(小学館 )、編著:『カルト・オカルト 忍びよるトンデモの正体』(あけび書房)、共著に『自民党という絶望』(宝島新書)、『統一教会 何が問題なのか 』(文藝春秋)、『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)、『日本を壊した安倍政権』(扶桑社)など
マインドコントロール問題対策DVD『カルト ~すぐそばにある危機!~』(日本脱カルト協会/JSCPR)監修

続いて、最近の著書の紹介となりました。

■『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)
この本は8万部売れましたが、『安倍晋三回想録』にはとても及びません。まだお読みでない方がいらしたら、ぜひお読みいだたけたらと思います。
第2次安倍政権が発足してから9年間ずっと、政治家と統一教会の関係を追って来たので「追跡3000日」となったのですが、この題名について、一部で「この題名を付けていいのか」との意見が出ました。なぜかというと、オウム真理教事件で真摯なレポートをされた江川紹子さんの本が「オウム真理教 追跡2200日」なので、江川さんより自分のほうが長いから偉いんじゃないかとマウントとっているんじゃないか、などと言われました。けっして、そんな意図はないです。これは小学館が付けたタイトルです。

■『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)
5月出した本です。(安部元首相銃撃事件)の事件後のレポートを中心にしたものですが、事件の前に、山上徹也被告から僕にメッセージが来て、やり取りをしたことも書いています。
また、7月21日には、講談社から山上徹也被告に特化した本が出る予定です。(『「山上徹也」とは何者だったのか 』講談社+α新書)

■『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)
事件の前(2017年)に、こういう本も出しました。これは共著で、20ページ分ぐらいしか書いてないんですけど、すでにこの本の中で、昨年の事件以降にいろいろ話題になったことが、書いてあります。

■『カルト・オカルト』(あけび書房)、『統一教会 何が問題なのか』(文春新書)、『自民党という絶望』(宝島社新書)
この3冊は事件後に出たもので、いろいろなレポートを書いていますので、機会があったら、ぜひ見ていただきたいと思います。

■統一教会とは何か
統一教会は宗教団体ではあるんですが、偽装会員であるとか、高額の壺などを売る霊感商法などで悪名高き団体です。合同結婚式は違法判決も出ていますが、教祖の選んだ相手と結婚させられるなど、いろいろな問題を起こしてきました。
国際勝共連合、UPF(天宙平和連合)、世界平和連合、世界平和女性連合など政治団体も持ち、いろいろな経済グループ、会社を全世界に持つ、コングロマリットでもあります。
これが反共運動を通じて保守派の政治家を取り込んできました。

■教祖・文鮮明と韓鶴子
教祖は文鮮明で、その妻・韓鶴子(ハン・ハクチャ、カン・ツルコ)が、いまの総裁です。
文鮮明は、11年前の2012年に亡くなり、現在、韓鶴子の独裁体制になっています。息子たちを全部追放し、いろいろ後継争いも起こっています。
霊媒師・金孝南(キムヒヨナム)は内部抗争で更迭され、その次の尹煐鎬(ユン・ヨンホ)世界宣教本部長も更迭されたとの情報があります。
このように韓国では、ナンバー2だった人間が更迭されるなど、お家騒動が起こっています。

■統一教会の日本進出の経緯
統一教会のこれまでをざっとお話しします。
もともと反共団体ではなかったんですが、朴正熙・韓国軍事政権(1963~)の影で動いていたKCIAが、統一教会を反共組織化し政治の駒として使う事例がありました。
そうした流れのなかで、時の政権に乗って大きくなってきた団体です。
アメリカにも進出したので、1978年に議会下院は「フレイザー報告書」を出しました。これは、「KCIAによる米政財界工作・コリアゲート事件」をまとめたものです。ここに、統一教会の「アメリカでのロビー活動」の実態や、「宗教ではなく政治・経済組織、謀略組織である」などと書かれています。
その流れの中で、反共団体を作り、日本へ進出してきました。
1970年、WACL(世界反共連盟)大会を、統一教会・勝共連合が実質主催しました。
1974年5月、日本の帝国ホテルで「希望の日晩餐会」が、岸信介・名誉実行委員長のもと、開催されました。当時の大蔵大臣・福田赳夫が「アジアに偉大な指導者現る。その名は文鮮明」と称えました。
1974年に「世界平和教授アカデミー」を創設し、学者の取り込みも始めました。
こうしたことが、統一教会の実相となります。
日本で霊感商法を始めたのは1970年代で、日本だけが経済的負担を強いられてきました。金額で言うと、数百億円が韓国の教団の関連組織、関連機関に流れました。
なぜ、こんな悪い団体が摘発を受けてこなかったのか。これは長年、日本に進出してきた当時から、元首相など有力な政治家の後ろ楯を得ていたからです。
これが、この教団がずっと日本の中で生きながらえてきた原因、要因になると思います。

■カルト問題にかかわるきっかけ
僕が、なぜこの問題に関わるようになったのかをお話しします。
ちょうど21年前、JR渋谷駅の改札を出たところで、統一教会の正体を隠した偽装勧誘現場に遭遇したのが始まりでした。手相を見ていたんです。このときは男性・女性の2組が、若い女性をつかまえているところでした。ちょうどその前の日に、日本テレビの報道番組で「偽装勧誘の実態」が報じられ、それと同じ光景を見ていたので、後先考えず、割って入って止めさせたのが最初でした。
最初は「勧誘でしょう」と問い詰め、つかまっている人に、「宗教団体の勧誘なんですよ」と話しました。当然、「違います。何、言っているんですか。統一教会なんか知りません」と言ってくるので、その嘘をついてくる人を論破しまして、非常に楽しかったです。
【映像を見せながら】
当時の渋谷には、こういう感じで勧誘してる人たちが20組いました。
「青年の意識調査アンケート」という形でやるんですが、アンケート用紙を持っている人が勧誘員で、相手の個人情報を聞き出して、教団施設へ誘い込んでいきます。
こういう勧誘員の子たちも、元々はこういう偽装勧誘にあって信者にさせられた被害者なんです。
こうやってカルト問題の構造を知るにつれて、のめり込んで、調べていく形になりました。

■街頭での勧誘の実態
「手相を見ます」の他に、すれ違いざまに、「お顔に気になる相が出ています」とか、そういう感じで声をかける方法もあります。
「転換期トーク」というのもあります。「人生最大の転換期です」と言って、「運勢鑑定、姓名判断の偉い先生がすぐ近くにいるからみてもらいましょう」という形で連れて行くんです。
【名刺がたくさん、映りました。】
これは勧誘員が持っていた鑑定士の名刺で、鑑定士とか開運アドバイザーとか、有限会社のもあります。勧誘の特徴としては、最初に声をかけてくるのは1人なんです。
【勧誘の様子の写真】
黒いズボンで、アンケート用紙を持っている女性が信者です。スカートの女性が勧誘を受け、適格者になりかけている人です。すぐ右、向かって左側にいるスマホをいじっている女性も、実は仲間なんです。声をかけて、「この子はうまく教団施設、偽装施設へ連れて行けそうだ」となったら、ブロックサインを出します。髪に手をやるとか、足を組み替えるとか、「協助」のサインが出ると、「あら、なにしてるの、偶然ね」などと言って加わり、「一緒に勉強している友達なんです」とか言いながら、2対1の状況を作ります。常に2対1の状況で勧誘していきます。
【偽装勧誘の休憩時間に教祖への祈りを捧げている写真】

この写真は、勧誘員が持っていたアンケート用です。2019年のものなので、世界平和統一家庭連合という教団名が書いてありますが、宗教団体への勧誘だとは言わないんです。
「AKYC OB/OG会」とあるのは、「荒川ユースカルチャー」というカルチャーセンターのOB/OG会という意味です。そこで学んだ卒業生として、素晴らしかったので紹介したいという体裁で声をかけてきます。
そして、どこに連れて行くか。
【AKYCの建物の写真】
僕が11年前に取材をしたときはAKYCではなく、ビデオセンターでした。教団の偽装教化施設です。

■勧誘を止めさせた
【勧誘しているところを撮った映像】
僕も長年やっているので、雑踏を見て、どこに勧誘員がいるのか、「ウォーリーを探せ」みたいに、パッと分かるんです。友だち同士で話してるのか、勧誘員につかまっている人なのか、すぐに分かるようになります。
【鈴木さんが、勧誘しているところに割り込み、「最初に、宗教の勧誘だと聞きましたか」「宗教の勧誘じゃないです」「これ、統一教会でしょう。勧誘するので声をかけたんでしょう」「違います。アンケートです」などと話しています。】
こういう形で嘘をつくんですよね。
「カルチャーセンターを紹介するだけです」と言うので、「連れて行って、宗教団体、統一教会に勧誘しないの?」と言ったら、「もしその人が、その先を学びたいと言えば、紹介することはあります」と答えます。
ワンクッション置くんですけど、当然ながら不法行為です。最初から目的を偽って声をかけています。
【勧誘活動員が持っていた用紙が写ります。右側には、「正」の字がたくさんあり、これは声をかけた人の人数です。右には、声のかけ方が書いてあり、「あ、すいません。お顔の相、いいですね (賛美) アンケートお願いします 3回は言ってみる」とある。】
数は「59」「39」「218」とあります。218人に声をかけて、ようやく止まってくれたという数字です。やっと止まってくれたところに、僕が入って止めさせたので、非常に恨みを買っていたそうです。

■統一教会の偽装勧誘の数々
【ビデオセンター(偽装教化施設)の写真】
サロン的な感じで入りやすいんです。
左の写真は2000年代、水晶が主力商品だったときの「風水四神」で、一体150万円ですが、相手の経済状況に合わせて600万円まで購入させていました。
ビデオセンターのパンフレットや、使っていたチラシは、まったく宗教色がなく、統一教会であると分からない。
「毎週水曜日はカレーの日です」なんてポスターもあります。食事をちゃんと出すんです。学校終わり、仕事終わりに通いやすいところです。週3回の来場で、もれなくスペシャルプレゼント、さらに来場週4回でスーパープレゼント、週5回でウルトラプレゼントがもらえる。こういう感じで、毎日通わせて、統一教会の伝道場であることを知らせないまま、マインドコントロールをしていくことを、統一教会はずっとやってきました。
ビデオセンターにはビデオブースがあり、最初は教義とは関係のない社会問題のものを見せ、だんだん宗教的なものを入れて、マインドコントロールをしていくやり方です。
霊感商法が一時摘発された後に、教団が何をやったかというと、家系図を使った勧誘でした。
した。
「風水講演会」「整体イオン整体」も統一教会です。見ただけでは分からない。「オーラ測定会 あなたのオーラの色が分かります」とか言って誘います。
全国各地、北海道から沖縄まで、偽装講演会とかセミナーをしていて、そのチラシを見ると、どこにも「統一教会」とは書いてないんですが、使っているイラストが全部一緒なんです。こういうところから見破っていきます。

■人間関係を構築していく手口
ボランティア団体を装った勧誘があります。
直近だと、SDGsなどを掲げて、「CARP(カープ、原理研究会)」が偽装勧誘をしています。
CARP(原理研究会)は表向きは統一教会とは別団体ということになっていますが、実際は一緒で、構成しているのはほとんどが2世信者です。
直近ではコロナ禍に、「CALLEGE SUMMIT for Peace」が行なわれました。統一教会の学生組織CARPがやっていました。
こういう活動から、統一教会に誘っていくわけです。

■誰もがカルト被害に遭う可能性がある
何か精神的に弱っていたとか、何かにすがりたくて、こういうところに行ったわけじゃないんです。どちらかというと、アンケートをずっとやっていてかわいそうだな、答えてあげようかなと思うような人が、誘い込まれてしまいます。
誰もが被害者になる可能性があります。
こういう被害者が信者となって、次の被害者をリクルートするという、カルト被害の連鎖が続いていました。僕はそういうことを止めようと思って、偽装勧誘の最初の入口、マインドコントロールされる前の最初の段階で救出することで、偽装勧誘の阻止活動を、10年ぐらい、ほぼ毎日やっていました。最近はやれていませんが、数万人規模の救出活動をしたと思います。
ビデオセンターの中に入れてもらえるときは入って、ビデオブースにいる受講生に声をかけて施設の正体を知らせて救出する。中に入れてもらえないときは、外で待ち伏せをして、出てくる受講生に声をかけて救出する活動をしています。
こんな活動を続けているとどうなるか。

■「全国指名手配」になった
【「要注意人物」として、鈴木エイトさんの写真と特徴が載ったチラシが映しだされました】
「反対活動家」で「やや日刊カルト新聞」記者と書かれています。
このチラシは、ある人から送ってもらいました。全国の教団の施設に貼られているんです。
僕はこれを見て「ひどい」と思い、チラシの下に問い合わせ先として、「世界基督教統一神霊協会広報部」とあるので、「ひどい、これはちょっと許せないです」と抗議の電話をしたんです。
「なんで、こんな不細工な写真を使うんだ」って。【笑い】
「写真がひどいので、差し替えてくれ」と言ったら、替えてくれました。
【変更後のチラシが映り、場内に笑い】
あと、「長身185センチぐらい」とあります。そんなに高くないです。それも指摘したら、「180センチくらい」となりました。
もうひとり、一緒にカルト新聞をやっている藤倉善郎さんというライターもチラシに載っています。藤倉さんはこれを知って、「鈴木エイトはずるい。自分も替えてくれ」と教団に、メイド服を着ているコスプレの写真を送ったんですけど、それはさすがに替えてくれませんでした。というオチがつきました。

■霊感商法の商品
教団が長年やってきた霊感商法なんですけど、「先祖の因縁」などを説き、高価な商品を買わせる悪質商法です。
【被害者からもらった品物の写真】
印鑑とか壺などです。上の方にある白い家の模型は、霊界へ行くと住める「善霊堂」という家です。数百万円献金すると霊界に家がもらえるんです。
教祖のサインもあります。
2012年ころの教団の主力商品が、430万円献金するともらえる「天福箱」という箱で、教団の経典セットです。
年間、教団は感謝献金などで600億円近くの収入があり、いろんな経費を引いて、1年間当たり200億から300億円が韓国に送られてきました。
さっきの「天福箱」ですが、430万円献金するともらえ、「真の父母様の印」ももらえます。さらに1300万円献金すると、教祖の直筆サインがもらえ、3000万円献金すると、直筆サインが2つ、1億円献金すると「真の父母賞」として写真がつく。
そういうサインとか写真が欲しくて、信者は献金しているわけじゃなくて、「摂理」としてこういう献金をしないと大変なことになるみたいなことをいろいろと刷り込まれているんです。
こういうお金が何に使われているのか。
世界平和のために使われていると説明を受けていますが、教団が豪華な施設を建てたり、教祖一族がラスベガスで豪遊したり、そういう風に使われてきたのが実態です。
その被害額が、全国霊感商法対策弁護士連絡会の集計で1237億円という金額が出ていますが、実際はそのうち数十倍、1兆円を超えてると言われています。

■破壊的カルト
こういう団体は、「破壊的カルト」と言われます。
通常の悪徳商法ですと、数十万円の被害を受けたらそれで終わりなんですが、この教団には人生そのものを破壊されてしまう。そういうところから破壊的カルトと言われています。
若い青年信者に対しては、カードローンを何社も組ませた上で自己破産させるやり方を、教団が指南している事例もあります。組織的にこういうことをやってきた。
通常の宗教団体であれば、自らの生活とか、家庭が自己破産とかするまではしないです。でも、この団体の信者は、家屋とか不動産まで売ってしまってまで、さらに借金までして献金をしてしまう人間に作り変えられてしまうんです。
非常に悪質だと思います。
なので、「宗教の問題」ではなく、「宗教カルトの問題」だということです。

■新世事件とは
教団が肝を冷やしたのが、2009年の「新世事件」です。
当時の警察はがんばっていて、2009年2月、渋谷の印鑑販売会社「新世」が摘発を受け、警視庁公安部が「渋谷教会」「豪徳寺教会」「南東京教区事務所」へガサ入れ(家宅捜索)をしました。渋谷教会と南東京教区事務所は教団本部の向かいのビルにありました。
ところが、警視庁公安部が教団本部へ強制捜査に入ろうとしたところ、有力政治家の口利きによってストップしてしまいました。その有力政治家が誰かは、僕の本に書いてありますが、亀井静香さんです。

■摘発を受けて、政治家対策を強化
摘発を受けてから、霊感商法はほぼ止めているんですけど、信者が自主的にやっていたと言い逃れをしています。
教団が今までやってきた霊感商法を反省したのかというと、そうではなく、摘発を受けたのは政治家対策を怠ったからだと反省し、政治家対策をここからさらに強化していきます。
形だけのコンプライアンス宣言を当時出していますが、全部信者の責任にしています。
法令遵守、コンプライアンスを宣言しなければいけない公益法人、宗教なんて、そもそもおかしい。こんな団体が税制上の優遇を受けている現状を、何とかしなければいけない。
結局、摘発があって霊感商法ができなくなったことによって、家系図や「先祖解怨」など、直接信者から高額な献金を収奪する手口へと移行していきました。

■無名の候補者が教団の支援で市議選でトップ当選
僕がなぜ政治家の追及を始めたかというと、統一教会信者が素性を隠して地方の市議選に立候補していたことを知ったからです。
東京の足立区の区議会議員選挙で、まったく無名の候補、長谷川たかこさんという、当時民主党から出た方が、信者運動員をさんざん使って教団が組織ぐるみで支援して、トップ当選したんです。【スライドには、千葉県松戸市議・おおた惠美の記事も】
その情報を得て僕が取材を始めた途端、この人は「まったく知りませんでした。分かっていたら頼んでません」みたいなことを言うんです。礼拝なんかにも参加していたんです。世話になっているんですから、お礼を言った上で、関係を断つとか言えばいいのに、ポイ捨てしました。
信者たちは教団から人権侵害を受けている被害者だと僕は見ているんですが、その信者たちを散々利用してポイ捨てするような政治家はさらにひどい。そこで政治家の追及を始めました。
僕が出している「ほぼ日刊カルト新聞」で長谷川たかこさんの追及を始めると、当時の民主党の本部の顧問弁護士を含め、12人の弁護士の連名で催告書が届きました。政治家は追い込まれると、そういう形で圧力をかけてきます。
でも、これ以上書いたら訴えますということです。これは、弱いクレームなんです。今の記事に対してではなく、「次に書いたら訴えます」ですから。
長谷川たかこさんは、いまは国民民主党にいます。僕は自民党だけを追及したわけではないんです。

■2013年参院選で、北村経夫候補を支援する教団の内部文書
国会議員を追及することになったのは、2013年の参院選からです。
当時の安倍晋三首相肝いりの候補者だった北村経夫さんへの組織票を統一教会に依頼するという、教団の内部FAXを入手しました。
これがその内部文書です。いろいろ書いてあります。
「全国区の北村さんは山口出身の政治家、天照皇大神宮教(「踊る宗教」とも)の北村サヨ教祖のお孫さんです。首相からじきじきこの方を後援して欲しいとの依頼があり、当落は 上記の「踊る宗教」と当グループの組織票頼みですが、まだCランクで当選には遠い状況です。」
「参院選後に当グループを国会で追及する運動が起こるとの情報があり、それを守ってもらうためにも、今御選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の死活問題です」とあり、とくに「死活問題」は大きい文字で強調しています。
これは安部さんだけでなく、菅(義偉)さんも実は関与していました。
選挙前に、北村恒経夫はこっそりと、統一教会の地区教会へ久留米と福岡へ派遣していたことも、教団の内部資料から発覚しました。
結局、北村経夫は教団票8万票の上乗せによって当選しています。
この問題を、「ほぼ日刊カルト新聞」では書いているんですが、一般紙でもちゃんと問いたいと思い、いろんなメディアへ話を持っていきましたが、どこも興味を持ってくれなくて、唯一「週刊朝日」だけが掲載してくれました。

■安部元首相はいつから教団と関係があるのか
安倍さんが、いつから統一教会と関係があるのか。一番古いところでは、2005年と2006年のUPF大会へ祝電を送っています(当時は小泉内閣の官房長官)。
もうひとり、保岡興治さんも送っています。

■鹿児島の保岡興治議員と教団の関係
保岡興治さんは、(鹿児島が)地元ですよね。妻が霊感商法の壺を購入したり、統一教会の集会に出席をしていて、信者疑惑があります。
法務大臣だったときの秘書官に統一教会信者を登用しています。この人は、それ以前から政策秘書で、合同結婚式に参加している信者だったことが分かっています。
保岡さんは弁護士ですが、統一教会の顧問弁護士だった稲見知之さんと一緒に法律事務所を運営していたともあります。
また、息子さんの保岡宏武さんも、昨年の事件以降、教団との関係が取り沙汰されています。統一教会のフロント組織である「日韓トンネル推進鹿児島県民会議」「平和大使協議会セミナー」に参加し、「ピースロード」の顧問でもあります。
鹿児島県姶良市にあった農水省の施設が2007年に、統一教会の「霧島家庭教会」になったんですが、その落札者が信者疑惑のあった人で、保岡さんと親交があったと指摘されています。

■2015年に、いきなり教団名変更
安倍さんと統一教会の関係は、2005年に教団の内部文書に、教団が反ジェンダーの運動をしていく中で名前が出てきます。
2010年の参院選で、有田芳生さんを落選させようとする教団内部の書面にも、安倍さんの名前があります。
このとき以降、教団のイベントにどんどん国会議員が参加しています。2014年には萩生田光一さんが出ています。
2015年に教団名の変更がいきなり認可され、「世界平和統一家庭連合」になりました。
1997年から、文鮮明は教団名を変えるようにし指示を出したんですけど、文化庁は、訴訟ばかり起こされている教団の名称変更を認めるわけにいかないと、ストップをかけていたんですが、2015年になぜかーー下村博文さんが圧力をかけたと言われていますけどーー変更されました。

■教団の傑作ショートムービー
教団としては悲願の教団名変更だったので大喜びして、名称変更式典を開き、名称変更記念のショートムービーを作っています。
【映像が流れました。幸せそうな家族やカップルが次々と写り、「一番大切なものを名前に入れました」と字幕が出ました】
実はもう1本は公開3日でお蔵入りになりました。教団はこのショートムービーを教団本部の外に向けた大型モニターで映してたんですけど、3日で、公開が停止になりました。
このショートムービー、自虐的なギャグも入れてあって、僕は非常に高く評価していたんですが、3日でお蔵入りしてしまいました。
作ったのは鴨野守さん、当時の広報局長でした。起教団内部で抗議が殺到したらしくて、鴨野さんはこの更迭され、北陸へ飛ばされてしまいました。そして、北陸で何をやったかというと、富山県の新田知事の擁立などに関わっています。

■利用される2世信者たち
2世問題が、昨年の事件からいろいろと報じられるようになってきましたが、僕が前の本(『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』)で描こうとしたのは、現役の2世たちがどのように教団や政治家に利用されているかでした。
2016年1月に、突如、国際勝共連合大学生遊説隊「UNITE」(ユナイト)という団体が、登場し、いきなり、「共産党反対」「安倍政権支持」「憲法改正賛成」をテーマに、街宣などを始めました。保守派の大学生が自主的に始めたっていう体裁です。
勝共連合という名前がついていますが、勝共連合の傘下団体ではなく、まったく自主的に始めたという形でした。2016年1月とは、2015年秋に学生団体SEALDsができ、注目されていた頃です。また、選挙権が18歳へ引き下げられる最初の選挙を迎える前でした。さらに、共産党が野党の候補者一本化に初めて同意をした時期でもあります。
共産党が初めて自民党の脅威になっていた時期に、「共産党反対」などの演説をする団体が活動を始めていました。
自主的な活動をうたい、全国で発展して自然発生的に広がっていったという体裁だったのですが、これはちょっとおかしいんじゃないかと調べました。
すると、平井卓也さん(自民党のネットメディ局長)が、フェイスブックに「学生はSEALDsというイメージは間違いです」と投稿していました。これは何か変だ、UNITEの結成や活動に政権の意向が働いているんじゃないかということで調査を始めました。
現地へ行くと、勝共連合の遊説隊のリーダーが仕切り、UNITEのメンバーが全員2世信者でした。UNITEの研修が全国で行なわれている決定的な証拠を入手しました。
最初の全国一斉遊説の前日に、西東京教区の信者にまわっていたメールに、「エイト(鈴木エイトさんのこと)が来るかもしれない……とのことですので、対策関連の内容です」とありました。
そこには、UNITEと勝共連合の関係は「外的には2つの看板を背負っての活動ですので関係性を明確にしてください」とあります。
別にひとつの団体でも問題ないはずなんですよ。勝共連合の青年組織が安倍政権の支持をしていても問題はないです。なぜか、わざわざ2つの看板を背負って、学生たちが自主的に安倍政権を支持している形にしている、それを欲していたのは誰か。やはり政権側しかないんじゃないかということで調査を始めました。

■教団の女性蔑視の思想が分かるチラシ
この団体の特筆すべきことは、女性蔑視、反ジェンダーなんですね。こういうチラシを配っていました。
【スライド「女子高生にもわかる憲法改正」】
「高校生にもわかる憲法改正」ならば、まだ分かるんですが、なぜ「女子高生」と「女子」をつけるのか。こういうところに、この教団の、ミソジニー、マチズモの女性蔑視の思想体系下にあることが分かります。
2016年の参院選の前で、宮島喜文という清和会の候補者への組織票の差配を安倍さんか細田さんが依頼したのではないか。
この時期、安倍さんが首相官邸に教団幹部を招待していました。僕だけがスクープとしておさえている情報です。

■詰めの甘いUNITE
結局、僕が正体を暴いたことで、UNITEは翌年、勝共連合傘下団体として体裁だけ整えました。16年12月に最後に行ったUNITEの大規模なデモのとき、皆で集合写真を撮った後に、ダンボールに入ったお菓子が配られたんですね。エクレアでした。そのとき「OBからの差し入れです」と言って配っていたんですが、なぜ結成初年度の団体にOBがいるのかとか、最後まで詰めの甘いところがありました。
UNITEは地方紙で活動が好意的に紹介されています。統一教会との関係にはまったく触れずに。知らなかったのかもしれませんが。

■統一教会、日本の「国家復帰指令」
統一教会は国会議員連合を全世界で作り、政治家の取り込みをやっていて、日本でも2016年11月に衆議院議員会館の国際会議場で、100人以上の国会議員と秘書が集まっています。
2017年2月に韓国で行なわれた総会で、韓鶴子が「国家復帰指令」を出しました。「国家復帰」とは、国ごと統一教会にしてしまうことです。その命令を受けたのが、山本朋広、九州の武田良太などです。
翌年、アメリカの教団幹部が日本へ視察に来て、自民党本部に招待され、当時の高村副総裁などが対応しています。翌年、これを韓鶴子に報告する会があり、北米会長は「ヨシヒデ・スガが首相官邸に招待してくれた」と話しています。
安倍さんと菅さんが教団幹部を首相官邸に招待していたのです。

■止まらない政界汚染
その後も政界汚染は止まりません。
山本朋広のマザームーン発言で有名なったのが、2017年5月14日・母の日に開かれた有明1万人集会です。山本は、韓鶴子に、「自分の母親にもあげたことのない特大のカーネーション」を贈呈しました。
参院選で統一教会の支援で当選した宮島喜文さんは、僕が取材したときは「まったく知りません」「勝手に応援したんじゃないですか」などと答えていたんですが、「皆さんのおかげで当選しました」と信者にお礼を述べています。
夜の祝勝会には北村経夫さんも出ていました。【スライドには、中川雅治氏の名も】
政治家がこういう団体のイベントに参加するのは、広告塔として使われていたのではないんです。教団の出版物とかウェブサイトなどには、「国会議員が挨拶」とは書かれていますが、どの国会議員か名前は書かないんです。外聞の悪い団体と分かっているので、政治家に迷惑がかかってはいけないというので、公表してないんです。
では政治家はどのように使われたか。内部統制の手段としてなんです。高額な献金などが続いて信者が疲弊して、「この団体はおかしいんじゃないか」「やめようか」となったとき、「こんな偉い政治家の先生が来て挨拶してくれるならば、ちゃんとした団体なんだと」という、動機づけになっています。
そういう意味でも、政治家がこういう団体のイベントに参加するのは非常に問題だと思います。
また、自民党国会議員は教団のお金で海外(アメリカ)へ行っています。
こうした動きから、全国霊感商法対策弁護士連絡会が、統一教会と関係を持たないよう、全国会議員に申し入れて、参議院議員会館で緊急院内集会をしたんですが、その直後のイベントに、相変わらず国会議員が参加していました。
そのとき取材したのは僕と藤倉さんと2人だけでした。
韓鶴子への報告会でも、現在の日本の会長が、「勝共推進議員が200人とかいった80年前と同じような雰囲気になっています」「議員の紹介活動を国家復帰へ向けて頑張ります」などと、勝手なことを言っています。

■疑惑の政治家への直撃取材
僕は疑惑の政治家への直撃取材が大好きでして、山本朋広さんにも直撃しました。
このとき山本朋広さんは防衛副大臣で、選挙自由妨害で警察に逮捕されそうになりました。
だいたい、政治家は僕の顔を見ると、ちょっと嫌な顔をするんですね。僕は自分を嫌ってる人に取材するのが大好きなんです。
菅原一秀さんは、僕の地元なんですが、UNITEの大会で信者を激励したというので、自転車で取材に行きました。菅原さんは、最初は話してくれたんですけど、僕がどういう記事を書いているか分かったとたんに、一切無視です。
【映像で、菅原一秀議員と鈴木さんのやりとりが流れました。「あなたのは脅迫ですよ」「説明責任を果たさないんですか」「記者会見をやりました」「あれで説明責任を果たしたと思われますか」「思ってます」「拒否をするなら議員を辞めてください。国会議員である以上、取材に答える義務があります。」「取材じゃない」「取材です」「あなたのは取材じゃない。申し込みもないし」「じゃあ何だと言うんですか」「あなたのは脅迫です。取材という名の嫌がらせじゃないですか」「刑事告訴という名の嫌がらせですか」】
菅原さんの事務所に取材を申し入れたところ、居留守を使われたので事務所に入ったところから、警察を呼び、建造物侵入で刑事告訴までされたんです。
菅原さんが街頭演説をしていたので、僕が取材に行くと、僕の本名であるとか、住んでる場所などを、嫌がらせ的に言うんです。菅原さんはそういう人で、僕は大好物なんです。【笑い】
僕が逆に嫌がらせをされているというのが、ここ5、6年の流れになります。

■教団イベントに参加する政治家
教団イベントに続々と国会議員は参加しています。
【スライドには、加藤勝信(官房長官、厚労大臣)、山下貴司衆議院議員、北村経夫参議院議員】
幕張メッセでの「提言」イベントでは、どんな政治家が来るのか潜入しようとしたんですが、すぐばれてしまいました。
2018年10月25日、キャピトルホテル東急で、国際勝共連合創設50周年記念式典が開かれました。衆議院の議員会議のすぐ裏なので、議員会館とそのホテルを往復する議員がたくさんいたので、信者の妨害を受けながら、撮影してきました。
この取材がきっかけで、ハーバー・ビジネス・オンライン(扶桑社)というメディアで、「安倍政権と問題教団の歪な共存関係」という連載をするようになりました。

■反ジェンダーで組織的に運動
勝共連合は、全国でダミー団体を使って「家庭教育支援法」の陳情を上げて採択させて、中央に持っていき、国会では統一教会関連議員が付託するということをやっていたことを、記事にしました。
反ジェンダーの動きに関しても、教団は組織的に運動しています。
渋谷区で2015年にパートナーシップ条例が制定をされた時期、教団が反対の署名活動をし、「家庭を守る渋谷の会」という名目で、チラシをまいています。
沖縄の基地問題に関するチラシと、教団の性教育を批判するチラシは、フォントが全く一緒なんです。

■安部カルト内閣
教団は安倍政権と蜜月を築いておきながら、韓鶴子は2018年9月の「日本人幹部修練会」で、安倍晋三首相を「屈服と教育」の対象であると設定し、幹部に指示をしていました。
教団側は着々と国会議員へのセミナーを開き、泊りがけで行った議員もいます。
教団の内部資料を見ると、「VIPの教育と教団救世基盤描拡大」とあり、政治家をいかに取り込んでいくかが書かれています。
北村経夫さんは2019年の二度目の参院選でも教団が組織的な支援をしていました。北村さんの選挙演説会に行ってみると、教団幹部が全部、現場を仕切っていました。
2019年の参院選で、萩生田さんを直撃し、菅原さんからも相変わらず取材妨害を受けました。
参院選後の第4次安倍再改造内閣が最も統一教会汚染が進んだ時期で、閣僚クラスに統一教会と関係を持った議員がやたらと抜擢をされています。僕は「安部カルト内閣」とコメントしたんですが、全国霊感商法対策弁護士連絡会が国会議員の事務所に2回目の申し入れをしています。この時期は、メディアもある程度来たんですが、あまり報道されず、政治家は無視し、前と変わらず大規模な集会に行ってます。
名古屋で2019年10月に開かれた「サミット&4万人信者集会」は、山上徹也被告が韓鶴子を殺害しようと狙った集会です。このときは酷くて、地方議員が合同結婚式を挙げています。ここまで汚染されていたということになります。

■青年信者を選挙運動員として政治家へ斡旋
統一教会の信者だけでは実質8万票くらいしかありません。
政治家が一番欲してるのは、票ではなくて信者運動員なんです。
その運動員を政治家に斡旋する会があるという情報を得て、会場の京王プラザホテルへ行ってみました。すると、北村経夫さんの選挙演説会を仕切っていた男性がいました。僕はこの人から、「隠し撮り野郎か。そう言えば、私にそっくりな知り合いが、こう言ってました。『あの隠し撮り野郎、今度会ったら、ぶっ殺す!』と」
「それは、あなたが僕を殺すってことなんですか」と訊くと、「いや、私そっくりの知り合いだ」と言い張るので、本当に別人なのかなと思って調べたら、ネクタイは一緒で、スマホのケースも一緒で、顔の形も一緒なので、同一人物ですね。

■教団のダブルスタンダード

安倍さんは一時、教団とは一線を引いていたのですが、2013年の参院選で組織票を頼むまでのズブズブの関係になったのはなぜなのか。それを埋めるピースとして、教団の古参幹部がやっている「世界戦略総合研究所」という団体があります。この団体の事務局長が「桜を見る会」にも毎年招待されていました。
この教団が悪質なのは、信者2世にUNITEとして安倍政権を支持する活動をさせておきながら、一方では、2019年暮れに韓国で元徴用工の方とその遺族、従軍慰安婦の方たちに対しての謝罪ツアーをさせているんですね。
日本大使館の横で安倍政権に謝罪を迫る会見などを開いています。
このように、2世を使って安倍政権を支持し、一方で安倍政権を批判するダブルスタンダードが発覚しました。これを記事に書いたとたん、教団は慌てて記事の削除命令の仮処分申請などを裁判所に申し立てをしてきました。教団にとって都合の悪い報道されるのが、一番まずいと、彼らは分かっています。

■教団イベントに参加する世界の大物政治家
2020年2月、韓国で大規模なサミットが開かれ、トランプ、文在寅(ムン・ジェイン)、金正恩などから電報やビデオメッセージが届いていました。
一番特筆すべきは、前の国連事務総長の潘基文(バン・ギムン)です。教団から5000万円もらっています。教団の関連団体に「世界平和女性連合」(WFWP)があり、なぜかNGOの資格を持っていますが、その背景にはこの潘基文の存在があると僕は見ています。
このときも日本の国会議員、元国会議員がどんどん参加していました。
2019年6月には衆議院議員会館で統一教会系の集会「日本・世界平和議員連盟懇談会」が開かれています。細田博之さんもいます。
地方議員から国会議員へ育て上げることを、教団はやっています。

■発表の場がなくなる
2020年5月、僕が教団を追及する記事をメインに書いてきた、ハーバー・ビジネス・オンラインが諸事情によって配信停止となりました。書く場所がなくなってしまいました。
僕がいろんな出版社に企画を持って行っても、どこも興味を示してくれなくて、「統一教会なんてもう旬じゃないしね。まだあったの」みたいな感じでした。
そこでいろいろノンフィクションの賞にも応募したんですが、最終選考にすら残らない形で、この問題をまったく世に問えない状態が続いていました。
2世問題もちゃんとやりたくて企画を出したんですが、「宗教系の2世だけじゃ弱いよね」などと言われました。2世問題も、2018年に唯一「AERA」に記事を書けただけで、一切、出版もできませんでした。

■安部元首相のビデオメッセージの衝撃
関係性を問えないまま政界汚染が進んでいました。
そんななかで起こったのが、2021年9月、安倍晋三がビデオメッセージを教団のUPF集会に送ってしまったことです。それも、ほぼその場で登壇しているような、リモート登壇に近い演出がされていました。
僕はこの映像を見たとき、安倍晋三という政治家がこの時点で統一教会との関係を隠さなくなったのかと、本当に驚きました。
これは、アーカイブに残さない、配信だけで、それ以降は録画などを出さないという条件のもとで撮影されたもので、実質的には広告塔として使わないことになっていましたが、ネット社会なので、こういうのが一斉に広がることは、安倍さんも当然わかっていたはずです。
教団との関係が指摘されても、自分の選挙、自分の政治生命、自民党の選挙に何も影響がないだろうと、安倍さんが高をくくっていたことに、本当に驚いたんです。
いろいろな元2世の方々に聞いても、この映像を見たときの衝撃、なんとも言いようのないマグマのような怒り、憤りがあったと言います。
山上被告は、このときのことを「絶望」と書いてるんですけど、彼がこの映像を見たときの絶望感はいかほどのものか。僕にも本当に衝撃の映像でした。
安倍晋三の目論見は正しく、一般メディアはこのことを全然報じなかったんです。報じたのは、「しんぶん赤旗」「フライデー」「週刊ポスト」「実話BUNKA超タブー」の4誌だけでした。
しかも弁護士団体が事務所に公開質問状を送ったんですが、国会事務所は受け取りを拒否しています。完全に開き直ったということになります。

■政治家への直撃取材
2021年10月の衆院選では、山際大志郎さん、岸田内閣でコロナ対策担当大臣をやっていましたが、この人の選挙を直撃取材しました。
この議員の秘書に、統一教会信者がいっぱいいるんです。この情報を仕入れて、現地に取材に行きました。
その翌日に行なわれた憲法改正イベントでは、2世たちが、昭和の感じで、勝共推進応援歌を歌っていました。
【スライドには、岸田首相と教団関係者とツーショット写真】
僕は、これが教団との関連を示すものではないということで、Twitterに出したんです。
選挙運動期間に屋外で写真を頼まれれば、政治家は誰とでも撮るので、「これは別に教団との関係を示すものではありませんよ」とツイートしたんですけど、逆に、これが岸田首相が教団とつながりがあるという感じで拡散されてしまって、ちょっと申し訳ないなのと思っています。
そこで、2022年の参院選のときに撮った、「疑惑の政治家とのツーショット」というのを出しました。
【スライドには、鈴木エイトさんと下村博文議員のツーショット】
別の取材をしていたら、たまたま下村博文さんに会ったので、「下村さん、2015年の教団名変更について、いろいろ書かれていましたよね」と言ったら、「ほんとに、いろいろ書かれちゃって、ひどいんだよね」と言うんで、「書いたの、僕なんですよ」と言ったら、「今度変なこと書いたら訴えるよ」と言われているところの写真です。
さらに数ヶ月前、非常に貴重な写真が撮れました。
【スライドには、鈴木エイトさんと、菅原一秀議員のツーショット】
あれほど僕を「嫌がらせ」とか言っていた菅原一秀さんです。たまたま秘書がいたので、その人と話していたら、菅原さんが近寄ってきて「お、テレビに出ている有名人」と声をかけてきたんです。
せっかくなので、仲良く写真を撮りました。まるで、今までのいろんな、いきさつがなかったかのようですね。
この写真を公開したところ、ツイッター上では芸人みたいと話題になりました。

■統一教会の政治家の取り込み
ちょうど1年前の安倍晋三銃撃事件ですべてが変わりました。
顕在化したのは、教団の悪質性です。金銭被害がまだあったのか、家庭がこんなに崩壊していたのか、2世問題、政治家との関係、地方でもあんなに暗躍していたのかを、多くの国民が知ることになりました。
教団の政治家の取り込みを見ると、2015年の内部資料では、地方では「食口」(信者)議員は44人とありますが、今は、もっと増えています。ただ、特定できてるのは10人ぐらいで、隠れ信者議員がいっぱいいます。
後援会を結成してもらった国会議員は76人。
現状では地方議員800人と連携していますが、これを1万人にするとありますが、過去、いろいろな報道ベースでは、こんな数は分かっていませんので、隠れた関係を持つ政治家がたくさんいることになります。
国会議員は、現状150人と連携しているのを362人にするのが目標とあります。
教団本部は政治活動に関わっていないと言っていますが、統一地方選に対しての候補者の擁立なども内部で協議していることが分かります。
教団の2世信者のSNSにあった資料には、「神奈川県で衆議院議員に当選された政治家の方が秘書を募集しているとのことです。(UCの方ではないとのこと)」とあります。
「UC」というのは統一教会のことです。
さらに、「現在衆議院議員の秘書をしている方(食口の青年)がおりまして、その秘書の方から少し経由して、連絡が入っております。」これだけで、秘書に信者がいることが分かります。
「情報によると、議員は体育会系の方(UCではない)」と、わざわざこの国会議員が統一教会の信者ではないと言っています。ということは逆に国会議員のなかにも信者がいるということがうかがえます。

■統一教会に関するメディア報道
安倍さんの祝電のときのように、国会議員が教団の関連イベントに祝電を送ったぐらいのレベル、関連団体に年会費数万円払ったぐらいでも、2006年以前のメディアは報道していたんです。政治家はその弁明に追われ、ちゃんと権力への監視が効いていました。
その後、ほとんど報道がないです。それは当然、クレームが来るからでもあるんですが、どちらかと言うと、「この団体のことを報じると、クレームが来て面倒くさいから、扱わないでおこう」という自主規制が働いていた。
メディアの大事な機能である、権力への監視機能が働かなくなり、「空白の30年」が生まれてきた。
ただ、昨年の事件をきっかけに、やっぱり健全なジャーナリズムが復活してきていると思います。一方でまったく取り上げていない番組、メディアもありますが、全体としてメディア関係者の意識が変わってきたことは、すごく嬉しいことでした。
僕はずっと1人でこの問題を追いかけてきたので、特に地方局も含めて、いろいろなメディアが一緒に疑惑を追っているような感覚があります。

■事件後のメディア報道
事件直後のメディア報道を見ると、参院選の投開票日の2日前でしたから、選挙が終わるまでは教団名がちゃんと報じられなかったんです。
教団名をメディアが報じるのは、教団が会見をしてからです。
選挙の投開票の前に、安倍晋三という人間が統一教会との関連が原因で殺害された、自民党の政治家は統一教会と関係があったと分かっていたら、選挙結果も変わっていたと思います。
教団はメディアをコントロールしようとして、著作権侵害でクレームを入れたり、コメンテーターとか番組に対して訴訟をしたり、政治家に対しても情報を小出しにしてコントロールしている節があります。
教団が最初に開いた会見は、事件から3日目で、このとき、教団はウソ八百を並べていました。僕は会見には入れてもらえなかったんですが、それを見越して、この会見が終わった後に、ホテル側と交渉して中に入れてもらって、さっきまでやっていた会見の中身は全部そうですよという会見を開きました。

■鈴木エイトへの攻撃
ここ1年、教団は解散命令請求をしないでくれと嘆願書を出したり、地方議会への提訴をしたりしています。
僕に対しても、「鈴木エイトはウソを書く人間だ、こういうライターを使わないようにしてください」といろんなメディアに出したりとか、ハゲタカジャーナリストと書いた怪文書が去年、国会でまかれたりしています。
僕の、「本業はない」とも書かれています。名前を知らないようなメディアに記事が出て、これを調べると、ある関係者がやっていると分かりました。
内部文書で「0801対策」があります。「エイト対策」ということらしいんですが、「8」だけでいいんじゃないかと思います。【笑い】
ここに、僕が教団のイベントなどへ来たら、どう対応するかとかが書かれていました。

■『安倍晋三回顧録』に統一教会は出てこない
最初に言いましたように、これは「宗教と政治」の問題ではなく、「カルト団体と政治」の問題です。政治家は、反社会的な団体と付き合ってはいけないという問題なんです。
本来政治家とは、そういう反社会的な団体をどう規制していくか、被害者をどう救済していくかを考えるのが役割のはずなんですけど、そんな団体と裏で取引をしている。
そういうなかで、起こった事件でした。
『安倍晋三 回顧録』には、統一教会は一切登場しません。安倍さんにとっては、外聞が悪かったこともあるでしょうけど、統一教会は、その程度の存在だった。過小評価していて、大した団体じゃない、誰も問題にしていないと、という認識だったと思うんです。
それなのに、教団との関連で亡くなったというのは、非常に皮肉なことだったと思います。

■政治家への追及の緩さ
昨年8月の自民党の点検は本当に緩いものでした。
最初から枠がはめられていて、「党として組織的な関係が一切ないことは、既に確認済みであります」と先に書いてあるんです。さらに、8項目あるなかで、一番重い関係が「選挙支援の依頼、組織的動員の受け入れ」があったかどうかなんです。
本来ならば、「秘書として統一教会信者を受け入れているか」「政策決定に統一教会の影響があったか」、あるいは、「誰の指示で教団のイベントに参加したか」ということを問うべきなのに、そういうことは一切ありませんでした。
山際大志郎や山本朋広は小物なんですよ。たまたま大臣をしていただけで、こういう使い捨てのコマにされている議員を派遣した大物政治家を追及すべきなんですが、まったくされていません。
萩生田光一さんで面白いのは、3月の番組で「人違い説」を言っていました。「統一教会のイベントに顔を出していたのは、自分じゃなく、自分にそっくりな議員と勘違いをしているんだ」という説を唱えています。「メディアの人は、本当は分かっているのに、みんな言わないんだよね」などと言って、番記者を抑えています。

■救済法成立で幕引きを図りたい政治家
2022年末に「不当寄付勧誘防止法」ができたんですが、その実効性は薄く、なかなか本当の被害者を救済できるものにはなっていません。こういう団体を規制する法律ができたことだけは、評価できますが、網を広げすぎていて、寄付とか献金で成り立つ団体全部に網をかけることになったのが反省点です。
簡単な自主点検と、救済法の成立で幕引きを図りたい人たちがいます。なので、そういう人をいかに追求していくかが、今後のポイントになります。

■政治家へのお金
政治家にどれだけお金が渡っているかですが、教団の内部資料にある政治家への対策費と、実際にこれまでに表に出ている金額には、かなりの開きがあります。
教団が首相経験者をイベントに呼ぼうとしており、福田康夫さんと鳩山由紀夫さんが依頼があったことを認めていると朝日新聞が報道しました。
記事には、福田さんは5年ほど前に出席依頼があったが拒否したと書いてあります。でも、僕は一昨年ぐらいに、福田さんに取材し、「ブッキングされていたという情報がありますが」と訊いてみたら、「一切関係ありません。そういう声がかかったことも一切ありません」と否定していたんです。でも、朝日新聞の取材には正直に答えたことになります。
鳩山さんは、金銭の提供を持ちかけられたとあり、こないだ会う機会があったので訊いてみたら、「直接ではないんですが、人を介していくらでも出すと言われた」ということです。

■過去の検証なしに関係を断つのは不可能
今年の地方選では、統一教会が争点にならなかったので、関係のある議員、信者議員も当選していました。
岸田さんがずるいのは、「未来に向かって関係を断つことが大事だ」だと、先の話しかしないんです。過去の検証をしないままで関係を断つのは不可能です。これだけ長年にわたって継続してきた問題なんですから。
自民党執行部は検証したくないんです。これまで関係を持ってきた政治家が保身に走っている。本来なら、自民党の中からこそ、「安倍晋三という政治家がなぜ殺されたのかを検証すべきだ」との声が上がるべきなんですけど、ごく一部の人が言うだけです。
赤報隊事件を捜査した兵庫県警捜査1課の資料には、自民党本部職員の中に勝共連合のメンバーが10人いたことも書いてありますが、こういうこともまったく検証されていません。このことは『自民党という絶望』という本に書いてあります。
「死人に口なし」と言わんばかりに、亡くなった安部元首相ばかりにすべてを押し付けるような動き、言動をする政治家がいます。これは非常に卑怯なことだと思います。

■純潔の刷り込み
教団の内部資料を見ると、「幼少期からの刷り込み」をしています。「小学生のための原理講義」という本があります。
派手な格好の女性のイラストを乗せ、「こんな格好をしていると淫乱の罪になります」と教えています。2世信者たちは「純潔」を教え込まれ、清い体のまま神様が選んだ相手と結婚することが、唯一の幸せだと刷り込まれています。人類の始祖自体に汚れた血が入っているので「血統転換」しなければいけないという教義なのです。
「純潔ラリー」を全国で行なっているんですが、写真の左側の男性は、現在山際大志郎の秘書をしています。【会場から、「えー」の声】
吉祥寺での純潔デモの取材をしていると、教団職員が飛んできて、「取材の許可をしていない」と言われたんですが、屋外でのデモなんですから、許可なんていらないんです。そういうことも分かっていない。

■カルトの2世問題
2世問題についてですが、「宗教2世」という言葉が広がってしまいましたが、僕はその言葉は好きではなく、「カルトの2世問題」です。
勇気ある告発をした2世に対して、ネット上で心ない攻撃が行われているので、そこを何とかしたいと思います。

■統一教会は開き直っている
今も「先祖解怨」として1000万円以上の過度の献金が課され、献金集めをしています。
事件後、伝道数が減っているとの資料がありましたが、もう回復し、活発な活動を今もやっていることになります。
教団は開き直り、謝罪とか賠償もせず、献金は自由意思だったとして、被害弁護団との集団交渉にも応じていません。改革本部ができたと言っていますが口先だけで、実際に韓国からの献金指令に逆らうこともできず、偏向報道だとして被害者面をしています。

■解散命令請求は出る
解散命令請求についてですが、質問が6回行なわれています。(文化庁は)ちゃんとやっているのかとか、後ろ向きで難しいのではないかと思っている人もいるかもしれませんが、安心してください。
詳細は言えませんが、いろいろな情報、取材からしてちゃんと、この夏には、文化庁が解散命令請求をするとみています。
ただ、問題は、一部の有力な政治家のなかには、教団から首根っこを摑まれている政治家もいることです。教団にとってマイナスな方向に進みかけたとき、そういう政治家がどういう発言をするのかを、メディアはチェックしてほしいところです。

■勇気ある告発者を守る
ジャニー喜多川の問題もそうなんですが、「勇気ある告発をした人」をどうやって守っていくかが大事です。こういう問題は同時に差別問題が起こってしまうので、現役信者や2世信者へ偏見や差別の目を向けない、そういうケアをしていくべきだと思います。

■調査機関で検証を
オウム真理教の事件のとき、省庁連絡会議ができて、報告書を作っています。
その中に、「宗教の問題ではなく、人権問題、犯罪問題、消費者経済問題」と明記されていました。これは、昨年、不当勧誘防止法の国会での審議でも出たことなんです。
その報告書がまったく生かされず、公文書館にしまい込まれていたんです。
少なくとも今回、フレイザー委員会のような、ちゃんとした第三者機関としての調査機関を、国会の調査権を発動して作るべきです。
なぜこういう事件が起きたのか、教団がこれまでどういうことをしてきて、どう政治家と関わり、何が起こってきたのかを、検証すべきだと思います。

■山上徹也被告の裁判
山上被告の公判も来年から始まります。前代未聞の裁判になると思っています。
安倍晋三を狙ったことが計画性があるとして犯情が悪くなって悪質と判断されるか、もしくは、動機面を判断するか。
山上被告は事件前に僕とメッセージのやり取りをしていました。このことは『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』に書きましたが、重要なのは、彼が、僕の記事を全部読んでいたことです。
彼が安倍晋三のビデオメッセージを見ただけで、安倍さんを狙ったわけではなく、安倍晋三と教団との関係を正しく認識した上で、安倍さんを狙った。僕はその手段は、当然、支持はしません。僕はペンの力で安倍晋三を追及しようしていましたが、山上被告は銃撃をしてしまった。
教団の悪質さを知らしめるために政治家をあえて狙ったのか、もしくは安倍晋三という人間そのものを恨み、憤りの対象として狙ったのか、それによっても変わってきますが、少なくとも、動機面において、彼がそう思うにいたった背景は、情状減軽の可能性もあります。
裁判員裁判では、僕が読者に提供するのと同じように、適切な情報を裁判員に提供した上で、量刑を判断してほしいと思います。
それが僕の今後の役割だと思っています。
7月21日に『「山上哲也」とは何者だったのか』という講談社から出る本にも詳しく書いています。

■メディアの役割
再発防止のために、事件を徹底検証する必要があります。
顕在化していない社会問題がまだあるはずなんです。声をあげられない被害者もいるはずなので、そういう人たちを救済していくのが、政治家やメディアの役割だと思います。
報道が減っているのは、これはしょうがないことです。社会問題で、メディアが報じるのはだいたい3か月と言われています。
ですから、これだけ長い期間、いろいろ報じられているのは、異例だと思います。
本当は減ってはいるんですけと、それは別に悲観することではなく、今後もあらゆるタイミングで報道されていくと思います。

■全体の構造
統一教会は政治家を利用し取り入ってきただけでは、ありません。
自民党の政治家と統一教会が相互に利用し合って、「共存・共栄」関係を築いてきたこと。メディアの監視機能が働かないことで、関係がエスカレートしていったわけです。
安部元首相のビデオメッセージ出演へと連なる両者の穢れた関係性が、山上徹也被告による銃弾で広く社会に向けて可視化されたわけですが、本来、あの事件が起こる前に可視化されなければならず、それは僕の力不足でもありました。

■カルト絡みの事件のフェーズが変わった
少なくとも、同じような事件が再発しないようにしなければなりません。
オウム真理教による地下鉄サリン事件など、カルト絡みの大きな事件が2回も起こっているのは、日本社会がおかしいんです。
オウム真理教はカルトが起こした事件で、昨年の事件はカルトの被害者が起こした事件です。やっぱりフェーズが完全に変わってしまっています。

■今こそメディアは矜持を見せてほしい。
僕が、このようにデータを蓄積し問題意識を持ち続けて、教団を追及してこれたのは、フリーランスだからという面もあります。
ちゃんとした大手メディアの人は、自分がこういう取材をしたいと思っても、なかなか続けられないことがあります。いかに社会問題をちゃんと拾っていくかということが大事だと思います。

■主権者は国民
主権者は国民です。国会議員はあくまで代理です。それなのに、民意が反映されていないような法律がどんどんできています。
みんな選挙へ行って、民意を反映してくれる政治家を選ばないといけないと思います。
さっきの菅原さんもそうですが、次の選挙に当選するための活動しかやっていない人もいます。そうではなく、民意に向き合う政治家、ちゃんとした政策のある人、本当に被害者であるとか社会的弱者を見る人、マイノリティに目を向けられる政治家を選んでほしいと思います。

~質疑応答編に続く~

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