武蔵野政治塾コラム『統一教会の入り口に。』
武蔵野政治塾 事務局長
橘 民義
1969年の春。
岡山から上京してきた私は同じクラスのたった一人の友達M君と毎日のように学生運動の集会を近くで見ていた。
彼はいつも私を誘って
は論議をふっかけてきたが、その続きが話したいこともあって、夜はしばしば大学の近くで飲んだ。
M君は静岡県の出身で、仕送りを一晩で飲んでしまうほどの酒好きだった。そして酒に飲まれる自分が許せず、いつも何かの出口を探しているようだった。
少しばかりすると、キャンパスはロックアウトされ、学生たちは去って行き、夏休みを迎えた。そして授業が再開した2学期にまたM君に会った。
私は一瞬にして彼の顔が別の人のように変わったのに気がついた。
M君は私にある場所に一緒に来てほしいと懸命誘った。
奇妙な話だとはわかっていたが私の好奇心がじっとしてることを許さなかった。
行った先は早稲田大学の近くのある教会。早足で歩く途中、原理研究会に入って欲しいと言われた。原理研が何かうっすらと知ってたが足は止まらなかった。
中に入ると、全てが用意されていて、すぐ信者になるように儀式のようなものが始まった。
もしあの時、好奇心に任されたままその時間を過ごしてたら、私は逃げ切ることができたのかだろうか。
それは今でも不明だ。とにかくその異常な雰囲気を後にして、まるで逃げ帰るようにして行きつけの喫茶店のドアを開けた。学生たちのたわいもない声と強いコーヒーの匂いが安堵を与えてくれた。
M君とはそれ以後会ってない。探しようもないが、今回の統一協会の問題が大騒ぎになったこととは関係なくあの日のことはしばしば思い出す。
マインドコントロールから一人でも早く抜け出して欲しい。もしM君がまだ協会にいるなら一日も早く。