Skip links

【活動報告】第1回「どうしても野党を立て直したい!」 ー維新を知り尽くした人たちに聞くー

10月10日、スポーツの日。吉祥寺駅から徒歩5分の、武蔵野商工会館で、「武蔵野政治塾」設立記念のトークセッションが開催された。テーマは「どうしても野党を立て直したい!」。
野党を立て直すには、「野党」と称しているが、自民党の別働隊ではないかと疑われている「維新」を知ることが不可欠。そこで、「維新の会」をよく知る4人が登壇し、それぞれの見解を述べ、互いに意見を交わしました。
90名の定員は予約で満席となり、キャンセル待ちも出るほど。熱心に聞く客席からも質問・意見が活溌に出て、政治塾が目指す「静かに、落ち着いて、そして激しい議論の場」となりました。
当日、参加していた、作家・中川右介氏によるレポートです。
ダイジェスト版

異なる立場で、維新を語る

最初に橘民義・運営委員事務局長が「静かに、落ち着いて、激しい議論の場にしたい」と宣言。
司会は運営委員でもある武蔵野市長・松下玲子氏。市の業務としてではなく、個人としての参加。

まず、登壇者4人が「維新の会」との関係を中心に自己紹介。
米山隆一氏は、新潟県知事をつとめ、2021年の衆院選に無所属で当選、いまは立憲民主党に入党。もともとは維新塾一期生で、2015年まで維新の会の党員だった。しかし、維新が東西に分裂した時に、離党。「維新の良いも悪いも分かっている」という立場。中にいた人ならではの皮膚感覚が伝わる話が多かった。

大石あきこ氏は、元大阪府の職員。橋下徹府知事に「噛みついた」ことで知られる。大阪が維新のおかけでどうなったかを、身をもって知っている。切実な思いが伝わる。
「維新は邪悪」と言い切る。「上級国民」「資本家」「支配層」という「れいわ用語」がポンポン出て、小気味よく、斬っていく。

松本創氏はノンフィクションライターで、『誰が「橋下徹」を作ったか』の著者。神戸新聞記者からフリーになり、関西を拠点としているので、維新について詳しい。
「マスメディアが橋下徹を持ち上げたので維新は支持されている」と思われているが、それだけではないと、繰り返し述べる。

菅直人氏は、立憲民主党のなかでも最も激しく維新と対峙している。今年の夏の参院選では特命担当として大阪に乗り込み、「維新政治を斬る」という小冊子を自ら作った。
「維新はいいとか悪いではなく、インチキなんです」と断言。

米山氏、大石氏は、維新・大阪を内側から知っている。松本氏はジャーナリストとして維新を取材。そして菅氏は維新と闘うと宣言し、実行している。立場の違う4氏によるセッションだ。

維新と大阪のメディアとの関係

「なぜ、大阪のメディアは維新の政治家をテレビに出すのか。メディアが維新を強くしているのではないか」とよく言われる。
この疑問には、
「メディアは知事や市長が言ったことを報道しなければならないから、毎日、何分もニュースで流れる」
「橋下時代から、維新の知事・市長は、メディアの前に出て、恥も外聞もなく、喋りまくる」
「知事・市長であることが維新の最大の武器になっている。それを利用し尽くしている」
といった指摘が相次ぐ。
知事・市長の言うことはウソでも、そのまま流される。そんな大阪の実態が、伝わってくる。
菅氏は、「東京のメディアには政治部があるが、大阪にはなく、社会部が府政・市政を取材している。だから、批判されない」と指摘する。
自身が新聞記者だった松本氏は、「大阪の社会部は、昔は市井の人を取材していたが、いまは役所の廊下に詰めて、府政・市政を取材していて、政治部的になった」と言う。
こういうトークイベントは、登壇者が順番に話すだけのものが多いが、「トークセッション」と銘打たれているだけに、4人の間でのクロストークとなっていき、予定調和ではない感じ。

維新政治の本質は

大阪府庁で働いていた大石氏は、「中から見て、ウソをついているのはすぐに分かる」と断言。
維新の姿勢として、「労働組合や住民運動への嫌悪感がある。弱い人が徒党を組むのが嫌いなようだ。それと、既得権打破を求める支配層の希望が合体し、資本家に都合のいい行政になっている」
そして、「大阪は貧しくなるばかり。維新の政策にいいところなど、ありません。存在が邪悪なんです」
このあたりから登壇者間のクロストークが熱を帯びてくる。
松本氏は、「維新はネオリベが支持していると言われるが、そうではない」と強調し、「支持者は庶民も多い。普通の人が支持している。知っているだけでも、難病の子を持つお母さんなど弱い人も支持している。学生は維新の教育政策を支持している」。
大石氏も「維新は、普通の人が選んでいます」と同意。
維新の政策で不利益になるはずの弱者がなぜ支持するのか。
「たとえば、全国で唯一、私立高校無償なんていうウソを言い続ける。悪質です」
また、維新は「自分たちのために闘ったとイメージさせるのもうまい。見た目の演出がうまい」
そして「コアな党員と、ふわっと支持している層、その中間という、3つの層にあわせた宣伝ができている」と分析。
そして、維新の政策は、カジノに象徴されるように安直なのだが、緻密でもあると指摘。
松本氏も、維新の演出のうまさとして、「自民党は社会システムを微調整するが、維新は大改革する」「自民党は調整型だが、維新は一点突破だ」と、自民党と対比させていることを挙げる。

維新・橋下徹氏はリベラルなのか

参加したのは、武蔵野市民、立憲民主党・れいわ新選組の支持者が多そうだが、元産経新聞記者で維新に入っていた人や、自民党支持と公言する人、長野県からこの会のために来た人も。
「橋下氏は同性婚や夫婦別姓に賛成するなどリベラルな部分もあった。いまはどうなのか」との質問に、米山氏は橋下氏について「リベラルだと思ったこともあるが、何もない人。石原慎太郎氏や安倍晋三・菅義偉氏と親しいように、ファザコン的、権威好きなところがある」と断言。
松本氏は、大阪府が教職員に君が代の起立斉唱を条例で義務づけしたことを例に、「安倍さんだったら愛国的イデオロギーが理由だが、橋下さんはマネージメントの観点で考え、決まったことには従うのがルールだからという理由」。
同じことをしていても、違いがあると指摘。なるほど。
維新はイデオロギーがあるようで、ないのか。しかし、ないようでいてあるのかもしれない。
「イデオロギーがない」というも、イデオロギーだし。

立憲と維新の国会内での共闘への疑問・反対

会場からは、立憲民主党が維新と「国会で共闘する」ことへの疑問・反対の声が(それほど多くはないが)あがった。
大石氏は、「六項目の合意を交わしたら、立憲民主党は本会議場で、二党を「私たち」と言っている。これはよくない。維新は野党じゃない」と疑問。
菅氏が「野党がまとまると、自民党は応じなければならなくなる。だから、国会内での項目ごとの共闘はあっていい。国会対策と割り切っている。立憲の考え方が維新にすり寄っているとは思っていない」と、説明。
米山氏は「維新が約束を守るとは思えない」
大石氏は「国対のテクニカルと言うのは分かるけど」と完全には納得できない様子。

東京では理解できない、大阪の「維新人気」

2時間で分かったこと、気づいたことは多かったが、疑問、疑念、懸念などは増殖していく。
印象に残った発言は、2つ。
維新が東京では理解されていないこと自体に、大阪を拠点としている松本氏は「アウェイ感がある」と何度も言っていたこと。
大石氏が、「反エリートという点では、維新とれいわは、似ている」と漏らしたこと。
いろいろ解説されても、「なんであんな党が支持されるのか」分からないのは、東京にいるからだろうとは思う。
大石氏の言葉は裏返せば、「立憲はエリートの党」ということで、そのイメージがあるのはたしかだ。
といって、立憲民主党の支持拡大のためには「反エリート」を打ち出せばいいとも思えない。

野党を立て直す道は、険しそうだ。


中川右介 作家・編集者。著書に『国家と音楽家』(集英社文庫)、『冷戦とクラシック』(NHK出版新書)、『悪の出世学 ヒトラー・スターリン・毛沢東』(幻冬舎新書)他多数。
Send this to a friend