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【活動報告】第8回第二部「地域と暮らしの現場から政治を立て直す」篇

第2部「虫の目」より 地域から、暮らしの現場から、政治を立て直す!

 

第2部は事務局がまとめました。
壇上には、司会の角倉邦良さんの他、松下玲子・東京都武蔵野市長、小枝すみ子・東京都千代田区議会議員、鈴木あつ子・群馬県議会議員と、女性3人が並びました。
まず、3人がそれぞれの自治体での活動を述べ、その後、猿田佐世さんも加わり、会場の声も聞きながら、平和のこと、自治のことなどを語りました。

 

■武蔵野市は住民と情報を共有、住民参加で決めている
武蔵野市長・松下玲子さん

 

  • 「子育て支援」を訴えて市長に

武蔵野市は人口は約14万8000人で、面積は10.98平方kmというコンパクトな市です。
私は現在2期目となりますが(2017年初当選、21年再選)その前は都議会議員を2005年からしていました(2009年再選)。市長選挙では、「子ども子育て応援宣言のまち武蔵野」をスローガンに掲げて、選挙に出て当選できました。
いま国は「異次元の少子化対対策が必要だ」と言い始めました。昨年1年間に日本で生まれた子どもの数が初めて80万人を切ったからです。しかし、子どもの数が減るのは今急に始まったことではなくて、30年前から予測されていたことです。

子育て支援に、もっともっと国が力を入れて取り組まないと、高齢者を支えることもできません。若い人が仕事と子育てを両立することもままならない。このことは、ずっと言われ続けていたのに、国はなかなか手を打ってきませんでした。

私が武蔵野市長に就任した5年前、市が抱える課題は大きく2つありました。ひとつが、少子高齢社会への対応です。子どもが少なくて、高齢者の方が相対的に増えているなかで社会保障制度など、さまざまな制度が立ち行かなくなろうとしていました。

これは何とかしないといけない。高齢者の方が住み慣れた地域で、安心して住み続けられるための政策と、子育てを応援する政策に取り組みました。
もうひとつが老朽化したインフラの整備です。道路や上下水道などの都市基盤と、学校やホールや図書館や様々な公共施設が、築30年、50年となっていましたので、計画的に建て替えていかなければならない。

この2つに取り組んできました。

 

  • 住民自治を実践

住民自治は、憲法で定められています。第8章第92条には、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」とあります。
「地方自治の本旨」とは何でしょう。それは、「団体自治」と「住民自治」があります。国や東京都に何か指図を受けるのではなく、武蔵野市のことは武蔵野市で決めますというのが「団体自治」です。
「住民自治」は、その町に住む住民が自分たちで決めていくことです。
武蔵野市は自治基本条例を定めています。「国民主権」はよく言われますが、「市民主権」「住民主権」という言葉はあまり聞かないと思いますが、その町の主権者はそこに住む人たちだと定めたのが、自治基本条例です。
市長には責務があり、住民には役割があるわけですが、ここで大事なのは「情報共有」です。住民が決めるとしても、何も知らなければ決めることはできません。
住民が情報を共有して、参加をして、市と住民が協同でより良いまちを作っていきます。これをサイクルと呼んで、くるくるとまわしています。

 

  • パートナーシップ制度、介護職のリスタート支援、子どもの権利条例

武蔵野市では条例で「パートナーシップ制度」を定め、多様性を認め合う社会作りを進めています。
国が選択的夫婦別姓も同性婚も認めそうもないので、武蔵野市では同性同士のパートナーや、異性だけれども結婚によって名前を変えたくないので事実婚を選択している人、それぞれが生き生きと自分らしく暮らせる制度を条例で定めました。
この制度によって、たとえば不動産を借りるときなどに差別的な扱いを受けないとか、公営住宅に家族として入れるとか、手術のときの同意書も書けるようになりました。
高齢化対策としては、高齢者の皆様が住み慣れた地域で安心して住み続けるためには、医療と介護の連携が必要だと考えました。すると、ヘルパーさんや介護の従事者が足りないという課題が持ち上がりました。

そこで、市としてできることとして、看護職や介護職のリスタート支援金を始めました。資格を持っているけれども、何らかの事情でその仕事に就いていない方が、就いてくれれば、30万円の支援金を出す制度で、介護職や看護職を支えています。

さらに、「子どもの権利条例」を作ろうとしていまして、いま検討委員会で検討してもらっています。この条例では、子どもが権利の主体であること、子どもの権利を侵害するような、たとえばいじめや虐待などが起きたときに子どもが相談できる、学校でも親でもない第三者の機関という仕組みを作りたいと思っています。

 

  • 民主主義は時間がかかるが、大切なこと

武蔵野市は、半世紀前から脈々と続いてきた市民参加で、長期計画を作ってきました。市民と、議員、職員が参加して作ります。これは市長が暴走しないためでもあり、いまは、第6期長期計画という10年間の計画に基づいて、いろいろな取り組みをしています。
10年は長いので、半分過ぎたところで、計画を見直すための「調整計画」を、いま作っています。
民主主義はすごく時間がかかりますが、とっても大切なことだと思います。誰かの好き・嫌いで政策を決めるのではなく、法律や条例に基づいて検証可能な形で、市民が参加をしながら、議会が議決をしながら、制度を決めて、それに基づいて、武蔵野市は運営されています。
それでも、市民から「そんなの聞いてなかった」と言われることもあります。情報って伝えるのが難しいです。市報に書いてあっても、「見てない」と言われたら、知らせたことにはなりません。大切な情報は、何度も発信し、あの手この手で伝えなければならないと思っています。

武蔵野市が、民主主義の基本的な取り組みを大切にしているのに、国はちゃんとやっているのでしょうか。とても残念でなりません。「閣議決定」だけで決めてしまうのは、民主主義に反するのではないか。大きな方針転換をするときは、ちゃんと国会で、国民の代表の国会議員の議決を得るべきでしょう。
内閣は、市でいうと行政です。行政が主権者を無視して、自分たちで勝手に決めて戦争に突入していくなんてことは許されません。私には子どもがひとりおりますが、戦地に送りたくはない。戦争なんて絶対にしたくないという思いで、地域から何ができるのかを考えています。

 

【司会の角倉さんが、会場には高校生・中学生もいると紹介があり、「自分たちでルールを決めることが大事なので、学校の校則も、自分たちで作って、それを守っていくのが大切だ」という話をされました。

角倉さんは2007年から21年まで群馬県議会議員でした。「県会議員だったときに、今の教育に一番欠けているのは、自治のルールを、学校教育の中でどこまで育めているのかなということだと思い、教育委員会にも言ってきた」そうですが、結果として、「まったく変わりませんでした」とのこと】

 

 

■群馬県の多様性をめぐるエピソード

群馬県議会議員・鈴木あつ子さん

 

【続いて、県会議員の鈴木あつ子さん。鈴木さんは派遣社員を経て、2005年に毎日新聞社に入り前橋市局の記者となり、中越沖地震、東日本大震災を取材。21年に退社して、群馬県議会議員の補欠選挙で当選。これは角倉さんが衆院選に立候補したための補選でした】

 

松下市長から多様性というお話がありましたので、それに関連する、群馬県の象徴的なエピソードをひとつ紹介させていただきます。
群馬県知事の山本一太さんは自民党の参議院議員だった方で、その前は国際的なところでお仕事をされていたので、非常に国際感覚も優れています。それもあって、知事就任後に、「群馬県多文化共生・共創推進条例」を作りました。
群馬県内には、外国籍の方、外国にルーツを持つ方が多いので、そういった方たちも、ともに県民として、群馬県を一緒に盛り上げてもらおう、ビジネスにおいても教育のさまざまな分野においても活躍してもらおうという思いの条例でした。群馬県は、外国籍の人たちを歓迎しているかのように見えていたのです。そして、たしか昨年9月の議会で、知事は「県職員の国籍条項を撤廃する」と発言しました。私が属している会派「リベラル群馬」は、前からこのことを言っていたので、知事が踏み切ってくれたと歓迎していたのです。

【注・国家公務員は、その採用試験で「日本の国籍を有しない者」に受験資格がないことが法律で規定されているが、地方自治体の職員については法律では国籍条項は明文化されてなく、各自治体が決めている】

ところがその2か月後の議会で、知事はあっさりとひっくり返してしまいました。
議会の場でははっきりと言われなかったのですが、要は、保守系の、知事を支えている最大会派の自民党の議員たちから、「国籍条項撤廃なんて言われたら、次の統一地方選挙で戦えない」という発言が出たそうです。

実は、知事が議会で「国籍条項を撤廃します」と言った瞬間、Twitterが大荒れしまして、「こんなことでは群馬県は外国人に乗っ取られる」とか、「大事な情報が全部外国に抜き取られる」といったネガティブな話がたくさん流されました。

私自身も、Twitterで、「知事が国籍条項を撤廃しますと発言したのを歓迎します」と、つぶやいたら、「そんなことをして群馬を守れるのですか」といったような反応が、少なからずありました。
それで、知事は2か月後の議会で「時期尚早でした」と言って、引っ込めてしまったのです。多くの人が、外国人に対して差別的なことを言い、そういう声に知事もひよってしまったことが非常に残念です。

これは象徴的な出来事だと思いました。
まだまだ一進一退ですが、こういった部分においても、私としては群馬県で一生懸命問題意識を持っていきたいと思っております。

 

■「失われた30年」を痛感

千代田区議会議員・小枝すみ子さん

【次は、東京都千代田区の区議会議員、小枝すみ子さん。角倉さんとはご夫婦でもあるそうです。1991年に初当選し32年間、現在8期目(連続6期当選後、13年に都議選に立候補して落選、19年に8期目当選)】

 

今日の猿田さんのお話を、危機感を持ったというか、涙が出るほど感動しながら聞いていました。
千代田区は人口7万人です。その小さな町の自治を、「虫の目」の仕事をずっとしてきました。

私は30年間の区議会議員生活の中で、「失われた30年」を痛感してきました。こんなことならば、55年体制の方が良かったのじゃないか、もしくはこんなことならば地方分権なんかしない方がよかったのではないか、そんな後ろ向きなことを言ってしまいそうです。前向きに言うならば、民主主義の根っこをもっと強くしないといけない。

民意をしっかりと確かめながら前へ進んでいく。みんなの夢を重ねていって共有していく。そういうことが得意なのは女性だと思います。でも、政治の現場に女性があまりにも少ない。家族として、角倉邦良がした「いちばんいいこと」は、鈴木あつ子さんを後継として県議会に出したことだと思っています。

【ここで、拍手】

ありがとうございます。でも、本当にそうだと思っております。
昨年12月10日に、武蔵野政治塾でサイボウズの青野慶久さんと橘民義さんのお話を聞きました。

青野さんは夫婦別姓の件で国を相手に裁判をしている方ですが、私たちも、30年前から夫婦別姓を言っていました。もし30年前に実現していれば、もっとみんな結婚しやすかったし子供も増えたかもしれません。もっと生きやすい世の中になってるはずだった、なんか30年止まっていたね、と思いました。

また、橘民義さんから、「あの3.11のことを思い出してもらいたくて、僕は武蔵野政治塾を始めた」と聞いて、思い出しました。東京は神様の気まぐれのおかげで、原発事故のとき、助かったんですね。3つの偶然が重なったから、東京はいまも経済活動ができますが、それがなかったら、東京も避難区域に入っていたところでした。

いま千代田区にはいろいろな紛争が山のようにあり、皇居の周りは紛争だらけなのです。街路樹を切るのに反対して、昨日の夜も座り込みをしてきました。
そういったなかで、日本の国の行方としての間違った選択がなされようとしているし、私たちの身近な問題でも、基礎的自治体が住民の意向を無視して強行することが頻発しています。これも、ひとりひとりの暮らしが分断されて、繋がりにくくなっているからではないかと思います。

武蔵野市の話を聞いて、穏やかにレベルの高い論争をしてるなと思いましたが、全国がそういうわけではないですね。
千代田区では、秋葉原で、あるテレビ局が超高層のビルを建てようとして、地権者や住民は反対の方が多いのに、3月・4月に強行しようとしているのです。

どうしてこういう民主主義が後退することばかり起きてきたのか。民主主義の力が弱っている。「そこは違う」と言って繋がっていくことの先でしか、戦争は止められないのじゃないかと思っているところです。

共感できる人たちと繋がって、労働組合や町内会や農協とか、いろんな繋がりをもう一回繋げて、理想を共有することと、「おかしいことはおかしい」と言うことを続けないと、子どもたちに責任が持てない国になると感じています。

 

【これからトークセッションとなります】

 

■外国籍の住民投票参加をめぐっての攻撃

松下 群馬県や千代田区のお話をして頂きましたが、武蔵野市もそんなに穏やかなことばかりではないのです。

一昨年、自治基本条例19条に基づいて、住民投票制度を確立するための条例を議会に上程しました。その投票できる住民の定義として、市に3か月以上住民票のある方は外国籍でも投票資格者になるとしたので、ものすごい攻撃を受けました。TwitterなどのSNSでの攻撃がものすごく、ひどい言葉を浴びました。

SNSってまともな議論ができませんね。「そんな条例ができたら、武蔵野市に中国人が5万人やってくる」とか、めちゃくちゃなことを言う人もいました。人口14万8000の市に5万人も中国人が来るなんて、ありえないじゃないですか。でも、「そうだそうだ」と同調する人もいて、大騒動となりました。

議論はすべきです。なぜ外国籍でも投票できるようにすべきなのか、なぜそれはいけないのか、議論はすべきです。でも議論にならないのです。子どものケンカみたいでした。

結果として、議会では否決されてしまいました。今後、冷静な議論ができる形でと思っております。
国は、多文化共生推進計画を各自治体で作れと言っています。日本はコンビニでもどこでも外国籍の方が仕事をしていて、共に生きるしかない。共に生きていくのは、戦争にしないためにも絶対大事です。戦いながらも冷静にやっていきたいなと思います。

 

■「外国」をめぐり、なぜ対立してしまうのか

鈴木 「外国人」というキーワードが、人によって刺さり方が、けっこう違うのだなと最近思っております。「外国」という言葉から、どの国を想像するかによっても違ってきますね。

私自身の最近の体験ですが、挨拶まわりをしていたときに、ゴリゴリの自民党支持の方にお会いしました。その方は、お医者さんの家系で、ずっと自民党しか支持をしたことがないという方でしたが、こう話してくれました。

「最近、日本の若者が海外に出稼ぎに行っているというニュースを見て、すごくショックだった。今の日本がどこまで大変な状況にあるのかに気づいて、今まで自民党だけを支持してきたけれど、自民党政権がやってきたことは、果たして正しかったのだろうかと思うようになった。そこで、立憲民主党の人の話を聞いてもいいかなと思っている。まだあなたを応援するかどうかはわからないけど」

そういう方もいらっしゃいます。いろんな意味で、いまどんどん変わってきているのだなと感じております。

 

小枝 さきほども話した、サイボウズの青野さんは、「世界中の人が幸せになれば、それが一番いい」とすごくシンプルにおっしゃっていて、私はその言葉にストンときました。

日本を守ろうとか、この町・この地域をよくしようということと、戦争をさせないということとはまったく矛盾しませんが、そこを無理やり対立させようとするような議論が、SNS上で増えていることは確かです。トランプ現象とも似ています。

自分は苦しい、自分の会社の経営が明日どうなるかわからないという不安の中で、自分以外の誰かのことを心配することに寛容ではない人たちがすごく増えています。

東京でも、秋葉原や新宿などで、支援が必要な女性のための場を作っている団体があるのですが、激しい反発が起きています。日本はまだ家族を中心にした社会です。それでも、地域で支えていこう、それもできないのなら、NPOとかいろんなネットワークでやっていこうという動きが芽生えています。なのに、ものすごく叩かれています。とてもよくないことだと思っています。自分にはそんなに力はないかもしれませんが、やっぱり対話をしたいなって思います。

でも、叩いている側の心にも何かかがある。それは何なのか、情報が足りないため対立となっているのかもしれない。だから、私も諦めないで、「なぜそんなことを言うのですか、なぜそういう攻撃をするんですか」と、とことん聞いてみたいと思っているところです。

 

松下 猿田さんの話にも通じますが、外交・安全保障はとても重要なのに、今の日本の政府がやろうとしているのは、相手を威嚇する外交・安全保障です。そうではない外交・安全保障があるはずです。なぜ、軍事費、軍事費になるのか。外交って、話し合いで仲良くなることじゃないですか。

軍備増強、自衛隊を増強するのではなくて、その予算を食糧安全保障にまわす。食糧自給率の低い日本が戦争になったら餓死してしまいます。大切なのは農業ですよ。ソーラーシェアリングとか。そして子育て支援をするほうが、よっぽど安全保障だと思います。人がいなかったら、軍事費だけあっても、使う人がいません。
方向性が間違っています。それを地方自治体、地域からも声を上げていきたいなと思っています。

 

【ここから会場の方からの質疑応答となり、猿田さんも壇上に上がり、女性4人が並びました】

 

■外国人も義務を果たしているのだから、投票権があっていい

【会場の方からの発言です】

小学校のとき、義務と権利は一体だと教わりました。外国籍の方だって税金を払い、犯罪をしたら日本人と同じように罰せられるなど、日本人と同じように義務を果たしている。同じ住民なのだから投票権だってあっていい、そうする制度を作るべきだと思います。

一方で、そういうことを考える人が増えるのはまずいと思っている人、なんとなく日本の国を守りたい、どうしても外国人を敵にしたい考えの人もいます。

それは歴史の問題もあります。アメリカやフランスとの歴史ではなく、アジア、朝鮮や中国との歴史です。鈴木さんが言っていたように、「外国人」という言葉に対して、いろいろなイメージを持つ人がいます。地理的に近いアジアの人を、悪く言うケースが多い。
外交の問題も含めて言えば、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国と本気で外交をして、平和条約を結べばいい。そうしたら攻めてくるわけもないし、戦争にはならないじゃないですか。

そういう努力もしないくせに、なんとなく敵対意識をもってきたのが、日本の政治だし、そういう考え方が、多様性を尊重しないし、人権を軽く見る考えになっている。逆に言えば、朝鮮人や中国人の人権は下でいいという考え方が、植え付けられている。それは、日本人の中にも人権が尊重されない人がいることになる。

 

■中学生も主権者です

【来場されていたなかの、中学生からの発言に、松下さんが答えました】

こんな中学生が意見を言うのはどうなのかと思っている人もいるかもしれませんが、私も、私だって主権者ですから、質問します。
先ほど、松下さんから、安全保障は軍だけではなくて、農業なり、子育て支援もそうだとのお話でしたが、武蔵野市は具体的にどのようなことをやっているのでしょうか。

 

松下 「子どもの権利条例」の制定を目指しています。「子供の権利」を知ってもらうことから始めました。自分たちも権利の主体なのだと分かってもらうところから始めました。

子どもの意見を聞く試みとして、小学生・中学生ひとりひとりに配布している学習者用コンピュータに、直接質問を送って、意見を届けてもらいました。

いろんな意見が来ました。公園でボール遊びをしたいとか、試験の成績が悪くて親に怒られてつらいとか、そんな意見も来ました。子どもから直接意見を聞くことが大切だと思っています。

都市農業の振興にも努めています。武蔵野市は比較的コンパクトな狭い町ですけれども、農業に従事している方もいます。この物価高、エネルギー高騰で飼料の値段が上がって大変なので、市独自で補助もしています。

平和の取り組みでは、武蔵野市は11月24日を平和の日と定めています。市でシンポジウムを行なったり、市民団体の皆さんもそれぞれ行なって、一緒に「武蔵野から戦争も核もない平和な未来を共に作っていこう」という運動なり活動をしています。

 

 

■宮城県ではどうのように男女共学を実現させたか

宮城県議会議員・ゆさみゆきさん

 

【会場にいらした宮城県会議員の、ゆさみゆきさんからも発言がありました。】

宮城県は、東日本大震災から12年経ちました。思い出すと、いまも涙が出てきます。たくさんのお子さんが亡くなった小学校で、その子どものお姉さんが映画を作りました。いま松下さんがおっしゃった、ひとりひとりの声を大切にすることは、本当に大切だと思います。平和って皆さんの何気ない日常です。目の前にいる人が次の日にいなくなってしまうって、どんなに悲しいかということか。改めて思います。

 

鈴木さんと、公立高校の男女共学化について、伺いたいと思います。

【注・群馬県では公立高校の男女別学校は12校あり、2022年の時点で公立高校の別学率の割合は全国1位】

宮城県も男女別学でしたが、2010年に、すべて共学になりました。私がこれを進めていたとき、反対の人から「訴える」とまで言われました。それをどう解決したかといいますと、賛成・反対の間に「第3の道」を作ったのです。「今の状態をあなたはどう思いますか。いまの学校、伝統がありますよね。大切ですね。でも今のままでいいですか」と言うと、「ダメですね」と言う人もいます。そこで「あなたの力を貸してください」と言って、道を開いていきました。誰も悪者を作らないようにして、解決しました。

平和の道は賛成・反対ではなく、真ん中のもうひとつの道を作ることだと思います。

どう解決に導いていくかが、私たちの政治の命題だと思うのです。

自民党の議員とは、憲法改正に反対か賛成かで意見は別々でしたが、旧優生保護法について、全国で初めて県議会の超党派で意見書を出すことでは、ひとつになれました。

私は「あなたの力を貸してほしい」という言葉で、解決してきました。
ここにいらっしゃるみなさんにも、そういう政治の道を変えたいときの一言はありますか、というのが質問です。

 

■岸田総理は、人権の問題が分かっていない人

参議院議員・高木まりさん
【その質問への答えの前に、会場にいらした、参議院議員・高木まりさんからも発言がありました。高木さんは、埼玉県の県会議員に2011年から3期連続当選し、2022年の参院選で埼玉選挙区から立候補して当選されました】

 

今日、それぞれのお話を聞いて、いろいろな意味で刺激されました。
国政に行かせていただくと、人権の問題がないがしろにされているのに、なぜ誰も怒らないのだろうという憤りがあります。
人権って、自分が同じことをされたらどう感じるかということです。岸田総理は、自分がされたら嫌だと思うことを誰かがされているのに、それを何も感じない人なのだなと思います。これに大変、憤っています。
これを変えていくために、みんなが足元から民主主義の感覚を持ち、いまの政府は駄目だと倒していけるようにならなければいけない。平和のことも同じです。
できることは、身近な人たちに、それを伝えていくことしかないのかなとも思います。
ぜひ皆さんから、何か一言ずつ何かご示唆いただければ。

 

 

■「第三の道」をめぐって

【ゆささん、高木さんからの質問に答える形で、猿田さんを含めた4人が、最後にひとことずつ、発言しました】

 

小枝 ゆささんから「第三の道」というお話をいただきましたが、まったくその通りです。戦争だけは絶対にやってはいけませんが、私が関わっているまち作りとか、さまざまな環境政策、人権もなどの問題は、丁寧に話せば、答えがあるのです。歩み寄ることができます。
ところが、それをさせないものがある。それとの戦いだと思っています。一言では言えないのですが。

 

鈴木 男女共学の話、難しいです。私も群馬県議会で、男女共学化すべきだというスタンスで質問をしました。すると山本知事からは「男女共学にしたくない人もいる。そういった意見も尊重するのが多様性だ」と切り返されてしまいました。

なかなか難しいなと思っていましたが、さきほどの「第3の道」に通じるのかもしれませんが、「共学化」ではなく、成立条件を撤廃するという方向で、今までの男子校でも女子を受け入れる、今までの女子高でも男子を受け入れるという形にすれば、少しはハレーションが起きないのではないですかと、提案をしてみた段階です。残念ながら、そこから先は進んでいません。

ゆささんから教えていただきました「第3の道」で、反対の人たちひとりひとりと、一対一で話していくことが大事だと教えていただいた感じです。
人権についても、高木さんがおっしゃったように、おそらく自分の身に降りかかって初めて、これが必要だ、人権を守る条例が必要だと気づくと思います。

また山本知事の話になりますが、群馬県は全国に先駆けてSNSなどインターネット上で誹謗中傷された被害者を保護する条例を作ったのです。これは知事の目玉政策でした。すると、この条例ができた後、知事をネットで誹謗中傷した人が立て続けに逮捕されました。うがった見方をすれば、知事がご自身の身を守りたくて作ったのなと思ってしまいました。
このことからも「あなたがその立場だったらどう思いますか」という視点は、すごく大事なことだと思います。

 

松下 意見が対立し、賛成・反対と異なる意見があったときに、どう同意形成を図っていくには、「第3の道」をさぐることも、あると思います。でも、結論を出さなければならないことがあるのも事実です。

そこで考えるのは、政治の役割とは何だろう、です。それは、より弱い立場の人、より困難な人を支えることだと思います。少人数でも困っている人がいて、それを助けられるのであったら、制度を変えていいではないかというのが私の考えで、そこで、パートナーシップ制度を作りました。

総理秘書官のように、同性同士で結婚している人が隣に住んでいたら気持ちが悪いと思う人、そういう発言をする人がいるのは事実です。
でも、幸せになりたい権利を制限するのはおかしいのではないか、愛する人とそこで共に暮らしたいと思う人の気持ちを大事にしたいと思い、議会に提案したのです。議会では、反対の意見もありましたが、賛成多数で可決できました。
国の法律も変わったらいいなと思っています。

 

猿田 今日この舞台の上で話しているのは全員女性です。それだけとっても武蔵野政治塾は素晴らしい。【拍手】

その女性たちのなかで、私は唯一、政治家ではないので、一市民として何ができるのかをお話しさせていただいて、今日の締めとしたいと思います。
私はいま、大学で授業を持っています。東京六大学のひとつの大学で、一般教養科目で「外交と人権」を教えています。そのクラスで、「台湾有事になったときに日本はどうするべきか」、5人くらいずつのグループで議論させました。

そして感想文を出させたのです。自衛隊派兵をすべきだとか、経済制裁を中国にすべきだとか、あるいは何もしないで中立でいくべきとか、どんな考えが出てくるかなと思って感想を読みました。
そうしたら、「台湾有事って何ですか。意味が分からなかったのでディスカッションで発言できませんでした」という感想があったのです。
台湾有事、みなさんはお分かりになりますよね。端的に言うと台湾で戦争になってしまうことです。最近では新聞にもしょっちゅう書かれている話題です。私自身は、毎日、台湾有事のことばかり講演などで話しているので、大学生が台湾有事の意味が分からなかったというのは、強烈でした。

そこで、その次の授業で聞きました。「ごめんね、説明しないまま台湾有事について議論させてしまったね。先生が悪かった。分からなかったと感想文に書いてきた人が2人いました。正直に言って、台湾有事を知らなかった人、意味が分からなかった人は、どれくらいいますか」
すると、なんと、3分の2の学生が手を挙げたのです。
これが東京六大学の一角をなす、日本の中でも優秀と言われる大学の実態なのです。

【会場、どよめく】

これをきっかけにいろいろな話をしました。

「日本は憲法9条があって、軍事力が全然ないので、やっぱりちょっと軍事力を持つのはいいことだ。予算を少し増やさなければ守れない」と学生が言うので、「いえ、日本の軍事力は、今でも世界5番目との評価すらありますよ」というと、「全然知りませんでした」とのリアクションです。

何が言いたいかというと、東京六大学ですらそのレベルなので、街を行く方々に世論調査をすると、「軍事力を増やした方がいいと思います。日本には軍隊がない。お金をほとんど使ってないんだから、ちょっと増やさなければ」という感じで、軍事力を増やすべきという考えに賛成する人もたくさんいるだろうということです。

そして、それが結論となってしまっている現状に、頭が痛い、もう日本はダメだと憂うことも簡単なのですけど、これって、国民が為政者にばかにされているということなんだと思うんです。政府は「台湾戦争」と言えばいいのに、「台湾有事」と言っているわけです。

これは20年も前、有事法制を決める際に、本当は「戦争法制」なのに、それだと誰も賛成してくれないからと「有事法制」と言い換えて、通してしまった。「戦争」を「有事」と呼ぶことになったのです。しかしそれでは、国民は「有事」が戦争の話だと分からなくなってしまう。

言い換えは、今でも続いています。「敵基地攻撃能力」と言われたら、反対します。敵の基地を攻撃するなんてしたくない。そこで「反撃能力」と言ったら、誰も反対しない。でも結局同じことを言っているわけです。

国民を、考えさせないようにしてきた結果、考えない国民になってしまいました。

政治は怖い、少しでも政治から遠ざかっていたい、政治的な議論をしない、となってしまい、その結果、閣議決定で何でも決まる国になっているのだろうなと思うんです。

ではどうするか。ここが一番大事です。いま、ここにおられる方はですね、もうお疲れかもしれませんが、もう一歩、もう一歩動かないと、政治は変わらないのです。

大学生も沖縄の基地問題についての授業で、感想に「沖縄の人たちは気の毒だと思う。こんなふうになったのは無関心な僕のせいで、僕は加害者だ」と書いてくる。とてもいいコメントがたくさん寄せられます。考えることは大きな第一歩です。
しかし、ただ、残念ながら、考えているだけでは政治は変わらないのですよね。
ですから、今日はお帰りになったら、お疲れとは思いますが、たとえば国会議員の事務所に「安保3文書は問題があるから、国会でちゃんと取り上げてください」と書いてFAXを送るとか、手紙を書いてほしい。

考えるだけとかここに集まるだけでは残念ながら変わらない。メディアに働きかけるとか、議員に働きかけるとかしないと、本当にこの国はおしまいです。
そういう状態にまで迫っていると思います。私たちひとりひとりがあと一歩、頑張る努力をすることを、私自身も約束させていただいて、今日のまとめにしたいと思います。

みなさん、がんばりましょう。

 

 

角倉 元気な女性の政治家たちが増えれば増えるほど、この日本は、地域から変わっていくと思います。高木さんも今は参議院議員ですけど、埼玉県会議員を三期やられてから国政に携わっていただいていて、すばらしいことだと思います。

皆さん、今日のお話を聞いて、いろいろ考えることがあると思います。
何とかまたこの群馬県で、このメンバーで、テーマをもう少し絞って、いろんな形で議論したい。そうすることが政治の可能性と市民の政治参加を促進していくと思います。

 

こうして、2時間半にわたる、武蔵野市政治塾in高崎は、終わりました。

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