続いて、質疑応答コーナーとなりました。
コーディネーターの五十嵐えり都議会議員から、最初の質問がありました。
■緊急一時避難施設は役に立つのか
五十嵐
これから質疑応答に入りますが、まず、私から質問させてください。
東京都は国民保護法に基づいて、緊急一時避難施設を指定しています。これはミサイルが撃たれたときに爆風から一時的に身を守るための施設です。地下鉄の駅や、武蔵野市内でも、小金井公園とか都立の高校などが緊急避難施設に指定されていますが、これが果たして台湾有事、戦争になったとき、どれくらい有効なのでしょうか。
井筒
ミサイル攻撃に対する避難として適切なものであるとは、まったく言えません。学校がいつからミサイル防衛に寄与する施設になったのか、私は存じ上げない。公園に行ったら何とかなるとも思えません。
どこかの県で、しゃがんで頭を抱えて、一生懸命にミサイルから逃れる訓練をしていましたけど、キカイダーしかできないと思います。というぐらい現実的ではないです。
よく、「密室に逃げたらいい」と言われますが、ミサイルはどの方向から着弾するかによって、違うんです。着弾したときに、例えば南から北に風が抜けるとしたときに、密室にいると風が逃げていかないので、圧死してしまう。
いまいる、この施設で避難するとしたら、風を逃して爆風をいかにやわらげるかを考え、それを伝えるべきです。しゃがんでも、爆風の衝撃で倒されてしまうと思います。振動波もすごいです。
基本的に、ミサイル攻撃があったときに、地上で生き残ること自体が、ありえません。
国民保護というのなら、そういう実態を、リアリティを持って公表して、「逃げ場所がなくなってしまうから、戦争をしないよう、外交交渉をしましょう」というふうに持っていくべきです。
東京都の都心部は、地下鉄があちらこちらにありますから、最悪の場合、とにかく地下に逃げることを選択するのは賢明です。
少なくとも何とか保護法の「保護」を信じることは、しないほうがいいと、私は思っています。
■Jアラートが鳴ってから逃げても遅い
五十嵐
政府は「Jアラートが鳴ったら逃げましょう」と言っていて、リアリティがあると言われていたんですが。
井筒
Jアラート自体が間違えていましたね。何年か前のデータを消し忘れ、まったく着弾してない、東京の島しょ部に避難指示を出してしまったぐらいお粗末なのが実態です。
Jアラートが鳴ってから逃げても、基本的に遅いです。
先ほどの繰り返しになりますが、北朝鮮からのミサイルは、韓国とアメリカ、中国からのミサイルはアメリカから教えてもらわない限り、撃たれたことすら、日本の情報システムでは、探知できません。「発射しました」と教えてもらったときには、どこかに着弾しているわけです。
■台湾有事になって、米軍は動くのか
会場の方1
だいたいのことは分かっていたつもりですけど、現場にいらっしゃる方のリアルな話は重いなと思いました。一番気になるのは、日本人の多くがメディアによってコントロールされていることです。戦後、GHQによって統治されて作られたものが続いているわけです。そこを何とかしないと、日本国民は眠ったままで、何にも危機感もない状態でいるのかなと思います。
自民党の国会議員でも、ロシアとウクライナの深い歴史的な関係を何も知らないで発言しています。これを何とか変えていかないと、対策も打てない。お話を聞いていて、戦争することはまったく無意味だということが、よく理解できました。
戦争をしないためにどうするか、国民全員で考えていかなければいけないと感じました。
沖縄にある米軍基地は、台湾戦争になったときは一番近いところにありますが、中国は米軍基地を攻撃しないと思うんです。アメリカとは地下では繋がっているかもしれない。その辺のところはどうなんでしょう。
台湾有事の際、米軍がどう動くかがちょっと分からない。
井筒
アメリカ軍がどう動くかということになると、大統領の一存で勝手に軍を動かすわけではないので、アメリカ議会がどう判断するか、つまりアメリカ世論がどう判断するかです。東アジアの端っこのところで、アメリカ人が命を落とすことを是とするのか否とするのかによるでしょう。
アメリカはそういうことに関してはドラスティックだと思いますので、日本のために一緒に戦う話には、ならないと思います。
むしろ、アメリカからしたら、台湾有事はアジア人同士で殺し合いをして、アメリカの覇権と国益にかなうという結果に結びつけばいいわけで、日本と中国で殺し合いをしても、どうってことはないんじゃないかと思っています。
■トマホークは迎撃用ではない
会場の方2
先日、国会で辻元(清美)さんが質問していました。
トマホークは1発や2発じゃないと、大体、湾岸戦争とかかイラク戦争で、アメリカが何十発も相手国に撃ったように、そういうことをするのが普通の通常の戦争の仕方である。
トマホークは普通の航空機と同じぐらいのスピードなので、東京から沖縄まで飛ばすのに1時間40分ぐらいかかるので、これが役に立つのか。
攻撃してくる艦艇にトマホークを使う、上陸するときにトマホークを使うから、沖縄の地域にトマホークを落とすこともあるとの説明もありました。
いろいろ問題があるんですが、トマホークは攻撃する役目だけで、守るためには役に立たないと思うんです。でも、前のめりにやろうとしている。
井筒
トマホークミサイルについて申し上げますと、いまご指摘のように、先制攻撃に使う、しかも大量に集中して使うのが効果的です。国会答弁を聞いていると、本当に戦争する気があるのかと思います。トマホークは、敵が撃ってきたミサイルを迎撃する、何とかするためのものではありません。やってやれないことはないと思いますが、当たらないでしょう。
戦争は、いかにリスクを下げるかが前提条件になりますので、たとえば沖縄が取られたとしたら、沖縄に向けてトマホークを撃つのは戦術的にはありうる話です。
つまり、自国の国民を守るというよりも、そこを攻撃することによって相手の力をそぐことができるのであれば、それは攻撃の戦略としては成立するという話です。
本当に沖縄に撃つかどうかは、最高指揮官たる内閣総理大臣と、防衛大臣、いわゆるシビリアン、文民の判断と、総司令部も含めてアメリカ軍の相対的な判断になるだろうなと思います。
■自衛隊は世論操作をしているのか
会場の方2
自衛隊も世論操作に力を入れているという話もありますが、情報操作についてのお話は何かありますか。
市民が平和を守る、自分たちの命、暮らしを守るという横の繋がりがなければならないと思うので、そのご意見を聞きたいと思います。
井筒
自衛隊の駐屯地とか基地には、情報保全隊というのがあり、情報収集をしています。こういう集会も含めて、戦争に反対の集会があれば、どういう人が参加してるか、講師はどんな話をしていたかという報告が書かれます。そういう報告をもとに、世論操作をしています。SNSとかで誘導をかけたりするというのもありうるというか、現実的に行なわれているのが実態です。
私は民放のニュースは必ずスポンサーなどの意向があるので、中立とか公正だという観点では見ていません。
NHKは、政府の広報だと思って見ていればいいです。NHKを見れば、政権が何を目指してるのかが分かります。そういう意味で参考になるのは、日経と産経新聞と読売新聞です。相手の手の内を知る意味では、とてもいい新聞だと思います。
■台湾戦争で食料が断たれる
会場の方3
食料自給率37%という話でしたが、実際には10%だと書いている方がいました。種と肥料は、ほとんど海外に依存しているからです。
台湾戦争になったとき、中国が何を使うか。単純に食料、経済戦争だと思います。
井筒
本当に台湾戦争になったら、中国だけではなくてロシアも、日本に経済制裁するでしょう。いまロシアは経済制裁されていますから、そのお返しです。天然ガスも含めた他のエネルギー資源は断たれると思ったほうがいいでしょう。本当の兵糧攻めで、すぐギブアップせざるをえない。
アメリカの偉いところは、ちゃんと中国ともホットラインを持っていることです。アメリカ軍と中国軍の間にもある。オモテの喧嘩はしますけど、裏ではちゃんと妥協を探ることをします。そういうことも含めて、日本は使い捨てにされてしまうぐらいの、厳しい目で見ておく必要があります。
食料自給率ですが、37%というのはカロリーベースです。飼料などもすべて中国から輸入していますので、それがなくなったら、国産和牛とか東京の豚肉も食べられなくなってしまうことも、火を見るより明らかです。
■横田基地は攻撃対象
会場の方4
私は横田基地の近くに住んでおります、映画プロデューサーです。
戦争は首都を狙うのが当然だとのお話でした。戦争になった以上は、首都に住むのはそれなりの覚悟が必要だということです。
横田基地は米軍の極東の総司令部、つまり全ての軍事戦略を決定、発信する最大の拠点と聞いております。当然、一番に狙われるのは当たり前であります。
私は映画プロデューサーとして、真実を多くのに知らせるべきだと考えています。
立川の横田基地がどのような位置づけだと捉えておられますか。我々は知らされていないけれど、実態はこうであるということをご教示いただければありがたい。
井筒
横田基地は朝鮮戦争の後方の指令都という位置付けなんです。今も朝鮮戦争は休戦協定中ですから、いつ戦争を再開してもおかしくないという状態です。
横田基地に行ったときに見ていただきたいんですが、アメリカの国旗と日本の国旗の他に、国連旗も掲げられているんです。
横田基地はロジスティックの総司令部になっていますので、当然、朝鮮戦争がまた勃発したときは、北朝鮮の当然攻撃対象となります。
それから国連旗をなびかせているのは横田の他にも岩国とか7カ所あるんですが、地位協定を締結する11カ国が無料で利用することができます。
在日米軍基地の中に国連旗があったら、そこも攻撃対象なんだと認識してもらったらいい。
沖縄だけが危ないのではありません。
横田基地周辺の皆さんは、可能であれば、引っ越しをされた方がいいんじゃないかと、思っています。
■自衛官の声が報じられない理由
会場の方5
最初の自己紹介の映像を見ながら感じたんですが、この事態のなか、自衛官の意識がどうなのか、家族の声はどうなのかといったことが、マスコミでほとんど報道されていません。前の2014年から15年の集団自衛権や安保法制のときは、マスコミでも報じられていたと思うのですが。
ご存知でしたら、教えてほしい。
井筒
2015年の安保法制の頃から、自衛官への箝口令がすごく厳しくなりました。
2015年当時も、私があるテレビ局から現場の声を聞きたいと頼まれ、同期の自衛官に、場所も分からないようにして、音声も変え、顔も真っ黒にして映さないという条件を伝えて出てくれと頼んだのですが、処分が怖いというので、カメラの前で話してもらえませんでした。
家族も同じです。ネガティブなコメントを求めてマスコミが来ても、対応しないようにという通達があったのは事実です。
私のいた第31普通科連隊は、朝霞から今は横須賀の武山駐屯地にあるんです。自衛隊をやめてからも、毎年正月には呼ばれて行っていたんですが、2015年の安保法制で私が報道で取り上げられるようになってからは、「井筒は呼ぶな」となり、翌年の16年はメインの会はだめでも2次会は呼ばれたんですが、17年からは2次会にも呼ばれなくなりました。
戦争になって、現場の隊員が一番困るのは何かというと、生命保険です。皆さんも保険に入っていると思いますが、特約条項といって、戦争と天災は免責条項があります。
残念なんですけど、自衛官は台湾戦争になると、いまかけている生命保険がおりてこないというのが実態です。
防衛省には職員の共済組合があり、任意という名のほぼ強制加入で、1口500円なんですが、これも戦争と災害に対しては免責情報があって、保険がおりない仕組みになっている。自衛官は死んでしまうと、単なる犬死になってしまう。そこで、それをフォローアップするような補償ができないか、今の国会で議論されているのかというと、全くそんなことはないんです。
自衛官に限らず、公務員が殉職したときは「賞恤金」というのが出るんですが、その死に方によってランクを付けて、金額が決まるというのが実情です。ですから、現場の隊員は可哀そうです。
■避難計画はつくらないでほしい
会場の方6
先島諸島が住民の避難計画を作っていますが、なんでこんなものを役所が作るのか。
ウクライナを見ていて、1発のミサイルで、建物や何かが崩れて死ぬ人はいますけど、ミサイルの爆発そのもので死ぬ人は非常に限られている。
30年ぐらい前に伊豆大島が爆発しまして、全島の住民を避難させたんですが、いまも伊豆大島は健在です。ですから避難しないで島の中で逃げていれば大丈夫なんじゃないか。
こういう文書を作ることの危険性を強く感じました。
井筒
そんなものを作らなくてもいい政治環境、それから周辺国との信頼関係が築けていれば、ご指摘の通りだとは思うんですが、残念ながら、いまの政府は「台湾戦争をする」と言っていますから、そういう中では、現実的に島の人口はどのぐらいいて、健康な人はどのくらい、入院している人は何人、障がいをお持ちの人は何人かなどを把握した上で、どういうエスコート、サポートができるのか、生命と財産を守るということを組み立てていく必要があるわけです。私は、そういう数字はきちんと公表して政策を練っていくべきだと思います。
会場の方6
作ってほしくないんです。私が島民だったら動きません。年寄りですから死んでかまわないです。
■戦争をしようとする議員には投票しない
最後に、武蔵野政治塾の橘民義・事務局長が挨拶しました。
橘民義
今日は本当にありがとうございました。土曜日の午後にこうやって政治の話を聞いて、そして皆で意見を交換するというのは、すごく大事だと思います。こういう会がどんどんなくなっている。なんか、政治の話なんかしちゃいけないという雰囲気になりつつあるから、平気で戦争が大きく出てくるのだと思います。
今日、井筒さんの話をお伺いしまして、どうですか。
いっぱいお金をかけても、全部無駄で、意味がない。そのことが、まずはっきりしたと思います。
政府が何をしても中国に勝てるわけがないし、抑止力にも何もならない。自衛隊がどんなに頑張ったって、役に立たない。というような感じです。
これをどうやって変えたらいいか。総理大臣というか政治家というか、政府が発令するわけです。自衛隊が戦争を仕掛けるわけでも、国民が仕掛けるわけでもないわけですよ。
だから、政治を変えるしかないじゃないですか。そうしないとどうしようもない。
確かに、市民がやれるかもしれません。2015年には、安保法制、集団自衛権反対で国会の前に12万人のデモが集まりました。すごいことだと思います。でも、それ以降は何も起きない。それはなぜなのか。
やっぱり起きるべくして起きて、なくなるべくしてなくなったんでしょう。それが事実です。
だから、たしかに行動する、いろいろな行動の種類がありますけど、私たちにできることは、選挙で、戦争をしないという人を選ぶしかない。
この4月に統一地方選挙があります。皆さんにお願いしたいのは、戦争しようとする議員には絶対投票しないでください、候補者にしないでくださいという運動をしようじゃないですか。
誰が戦争をしたがっているかは、聞けばいいじゃないですか。「あなたは岸田さんがやろうとしている安保3文書に賛成ですか、増税、軍拡に賛成ですか」と。
それしかないんですよ。
武蔵野政治塾は、そういう議論を皆さんと一緒にやったり、そういう運動もみんなで起こしていこうじゃないかという提案もしたいと考えております。
武蔵野政治塾は去年の10月に始めて、今日は第9回です。いままでいろいろな議論をしてきました。
東京以外では、岡山県、群馬県でも開催し、次は鹿児島県に行きます。そうやって全国にこの動きを広めていきたいと思いますので、ぜひ皆さんにもお手伝いいただけたらと思います。今日は本当にありがとうございました。