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NEW!!【活動報告】第20回「少子化爆速中の日本、安心して子どもを産み育てることができるのか?」質疑応答篇

続いて、質疑応答となりました。テーマが子育てだったこともあり、女性の発言の多い回となり、予定時間を15分延長しました。

■少子化は若者の低収入が原因
会場の方1 男性
今日は内容があって、かつ楽しかったです。私は71歳で、孫が3人います。いま長女が具合が悪いので、孫娘を預かって育てています。子育ての大切さ、楽しさ、すごくよく分かります。
私も青野さんと同じ「昭和の男」で「仕事第一」でした。結婚したとき、「これで自分は仕事に専念できる、仕事を通して社会に貢献したい」と思い、3人の子の子育てはすべて妻に任せました。私たちの世代は、それで何も問題はありませんでした。
いまの子育て支援は、共働き世帯のための問題だと思います。我々の時代には何も問題なかったんですが、女性も働かなければならなくなり、働きかつ子育てとなると、とてもしんどい。だからこそ、支援が必要なんだと思います。
その背景には、若者の収入が低いことがあります。先ほど、非婚化の問題も手をつけなければいけないとのお話がありましたが、私も絶対にそうだと思います。3人の子どものうち、ひとりは大企業に入りその収入で家族も養っていけるんですが、それでも共働きです。収入の問題ではなくて、女性も自己実現のため働くというふうに、社会も変わってきたんです。2人は中小企業で、逆に、共働きしないと普通の生活ができない。
日本のエコロジカル・フットプリントで言うと、江戸時代の人口は3000万人でしたので、少子化は別に悪いことではないのではないか。2050年には8500万人に減ると言われていますけど、それはドイツの人口とほぼ同じです。今日の課題は「爆速中の少子化を止める」でしたが、そもそもなぜ少子化はいけないのかとお考えですか。

松下 わたしは、少子化を、「善・悪」、「いい・悪い」で捉えていません。いろいろな側面があります。
いまの日本社会の機能、社会保障制度などが、少子化が進むと維持できない、成り立たなくなるということに、危機意識を持っています。介護とか年金とか、健康保険などの制度が成り立たなくなるわけです。
少子化を社会の問題として捉えて、解決をしていかなければならないとの視点で話しました。少子化はいいか悪いかとなると、哲学とか理念の問題になるかもしれず、そうなるとまた別の議論だと思っています。
あくまで「善・悪」ではないです。社会の現象として、いまの社会機能を維持する上では子どもが減っていくと維持できなくなるので、これを問題・課題として捉え、解決していこうという方向でお話をしたつもりです。

羽生 江戸時代は3000万人だったという話は、よく見ます。江戸時代は日本のなかでいちばんきらびやかで文化も良くて、わたしは大好きなんです。戻れるなら戻ってもいいと思うくらいです。
ただ、人口の絶対数だけでスライドできる話ではないと思います。年金ですとか社会保障が、このペースで人口が増えることを下敷きにして設計されているからです。問題は、そこなんです。文化とか社会に漂う空気は、人口の増減に比例するわけではありません。
おっしゃるように、若者の低収入がほとんどの原因です。私の父や祖父の世代は何ら問題がなかった。年功序列というパーフェクトな制度で、年々収入が上がっていくことがほぼ保証されていましたし、企業年金だって10パーセントくらいという、信じられない利率でまわっていました。
そこを考えると、性別役割分担そのものに100パーセントの原因があるのではなく、収入の部分で破綻がきているのかなと思います。
一方、データをアップした方がいい点があります。女性の社会進出が進んだことによって、いったん、子どもの数が減ったのは事実ですが、その現象は世界中でみても、実は1999年で終わっているんです。2000年前後の議論だったんですね。女性の大学進学率が高くなり、社会進出すればするほど子どもを産まなくなるという議論は、15年前、せいぜい2005年までのロジックなんです。
いま、世界がどういう現状になっているのかという風景を見える化して、共通の知識のもとで議論できるといいのかなと思います。

青野 人口減については意見が分かれるところで、「1億2000万人を維持すべき」と言う人もいれば、「3000万人でもいいんじゃないか」と言う人もいる。少子化がいいかどうかは、ひとによって異なると思います。
ただひとつ言えるのは、コントロールができていないことなんです。わたしが生まれた1971年、第2次ベビーブーム世代の頃は、「日本の人口が増え過ぎているので、ちょっと抑制した方がいいんじゃないか」という意見が多数派だったと聞いています。
それで本当に抑制されて、いまは減っています。おそらく、いまは多数派としては、「減りすぎてまずいね」だと思います。問題なのは、減り続けていて、増やせるめどが立っていないことだと思います。このままいくと、3000万人にまで減るわけですが、それで終わらないです。コントロールできていないんですから。多分、1500万人、1000万人になり、究極的にはゼロに向かっています。止める術を持っていない限り、残念ながら江戸時代のようにも戻れない。
コントロールできる状態、マネジメントできるような状態にしないといけないのではないかと、いうのが僕のひとつの提案です。
もうひとつ、いまの日本人が子どもを欲しくないと思っていて子どもを持っていてないのだったら、問題はない。欲しくないんだから。でもアンケートをとると、だいたい1.8人ぐらい欲しいという数字です。2に近い値です。欲しいと思っているのに持てないという状況があり、これは問題だと思います。持ちたいのに持てないのは、そこに社会的なハードルがあるからです。
少子化そのものが問題かどうかは難しいんですけども、少なくとも、子どもを持ちたいのに持てない人がいるのであれば、そこは解決すべきだと思います。

■婚活パーティーは大事、いまはマッチングアプリでの結婚が多い

会場の方2・女性(露木さん)
私は「婚活パーティー」、「縁結びおばさん」をしています。昔は行政のなかで、無料の結婚相談員をしていたんですが、社会福祉協議会が手を引いてしまいました。なかなか人集めが大変です。でも一生懸命やってまして、昭和48年から、80組以上を結婚させています。子どもが生まれると連れてきてくれ、「露木さんたちがいなかったら、あなたたちはいないのよ」と言ってくれます。
菅直人さんに「人が集まらなくて困っている」と言ったら、Twitterで、「こういう支持者がいて、3000円で50歳以下の人の婚活パーティをしています」と知らせていただきました。いまは、50歳以上は1500円でもやっています。
【以下、個人情報に関わるお話となったので割愛させていただきます。】
青野さんにぜひお願いしたいです、婚活パーティーのチラシがありますから、ぜひご紹介ください。

青野 僕は婚活パーティー、すごい大事だと思っています。昔、僕よりも上の世代は、結婚していない若い人がいると、まわりが気づかってくれて、紹介してくれました。いまは、そういうのがなかなか難しい時代になっているので、新しい「おせっかいおばさん」の仕組みを作っていかないといけないですね。活動には協力させていただきたいです。
びっくりするんですが、最近、結婚する社員にどう知り合ったのかを訊くと、普通にマッチングアプリみたいですね。
松下 社内結婚よりもマッチングアプリで結婚するほうが多いというデータが出ています。
青野 僕なんかからしたら、マッチングアプリなんて怖すぎるんじゃないかと思うんですが、時代も変わってきています。マッチングアプリもいろいろあって、相手がしっかりした人かどうかを確認してから紹介してくれるものもあるようです。

■人口が減って困ることは何なのか
会場の方3 男性
私は少子化はまったく問題でないと思うんです。70万人は生まれるとして、80歳までで掛け算すると5600万になります。おそらく日本の適正人口は6000万ぐらいと思うんです。それで困ることって何だと思いますか。
地方の田舎のインフラが保てないという問題は「集住」とかしてもらって、いまのように保つのは無理だから諦める。青野さんの言われるように、やれることは全部やったとしても、1億人を切らないようにするのは無理だと思うんですよ。
外国人をどんどん入れていいと思うんですが、外国人を入れることでのデメリットって、あるんでしょうか。想定しうるものがあったら教えていただきたい。

青野 適正人口が6000万というご意見だと理解しましたが、残念ながら、今のままいくと6000万人で止めることもできないんです。僕はここが問題だと思っています。僕たちがある人口を理想として、そこを目指してそうなっているんだったら問題はありません。人口減を止める術を持ってないとするならば、6000万人を下回って3000万になってしまい、さらに減っていく。そこが問題だと思っています。今のうちに、21世紀において人口マネジメントのノウハウを身につけないといけないのに、それができていないことに問題意識を感じています。
移民を入れると、実際にどんな問題が起きるのかとのご質問ですが、おそらく他国でも起きているようなことが、同じように起きるんだろうと思います。それもうまいやり方はあります。移民も、うまくやっている国もあれば、うまくやれてない国あるので。そこも早くチャレンジをして、ノウハウを身につけないと、「いい移民の受け入れ」ができないと思っています。

松下 いま、介護の現場では「EPA(Economic Partnership Agreement)、経済連携協定」の制度を使って、インドネシアなどから来ていらっしゃいます。何年か働いた後には、本国に帰られて、本国で介護の仕事をされています。
ただ、現状、日本は移民政策を取っていませんので、今後の人口減少社会の中で、日本としての移民政策をどう考えるか、移民にしっかり考え向き合って議論しなければいけないと思います。
その上で、人権が大切です。人権は、どの方であっても等しく大切だということを理解した上でいかないと、日本が移民先に選ばれないんじゃないかという気がしてならないんです。

■子育てを終えた女性が再び輝いて働くのは可能なのか
会場の方 4 女性
私は去年、3人目の子を産みました。今年の4月から復帰して、時短勤務をバシバシ使わせてもらっています。ママ友のなかに、子どもができたのをきっかけに退職して、幼稚園に行かせていて、「手が離れたらパートでいいわ」と言っている人がいるんです。話していて、この人頭いいなとか、この人こんなこともできるんだ、すごいな、と思う能力を持った人がたくさんいます。でも、子どもの手が離れたら、将来はこんなことするんだって話す人が、全然いないことに、ちょっとショックを受けました。
私は、いま時短勤務でヒーヒー言いながらやってはいるんですけど、職を手放したときに、子どもから手が離れたらまたがんばるぞと思っていたんです。でも、自分の可能性を信じてやってみることが、なかなか難しい状況かなと思っていて。
女性が再就職して再び輝けるのは、限られている人だけなのかなと思っています。もちろん、ワーママ(働くママ)もいますけど、無理だなと諦める人もいると思います。女性の再浮上について、どう思われていますか。

羽生 前提として、辞めざるをえなかったぐらい続けるのは無理だったということは、個人の能力の問題ではなく、その会社の働き方などに問題があったんだと思うんです。そういう会社は、その勢いでそのやり方を続けていったら、男性・女性に関わらず、続けていけなくなると思うんですね。まず、今の若者の労働観にあったように、ソフトを新しくしていくしかない。
いったん辞められた方は、本当に多いです。それが、まったくチャンスがないかというと、私は逆だと思っています。
メンバーシップ型よりジョブ型とか、仕事を限って賃金を限って、そこのパーツを外に出さないと、会社も正社員だけでキャリアラダーのハシゴをまわしていくことができなくなっているので、いまこそ、すごいチャンスがあると思う。
ただ、何もしないでチャンスをマッチングできるかというと、そうはいきません。会社としては、「ここの部分を切り出して誰かにお願いします」というのを提示し、受ける方も、これまでまったくやったことのないことにチャレンジするのではなく、今までやってきたことを整理整頓して、「この部分はできます」と、提示するんです。
企業の中ではそういう取り組みを死活問題としてやっています。私はそれがもっと広がればいいと思うんですが、企業側の理論として、「手の内を明かすと他社に取られてしまう」と言うんです。どういう人材を見つけたか、どこからどこまでを正社員ではない外部の方に出すかは、結構、企業秘密だったりするんですよ。そこで、経産省と厚労省とが連携して、そのルートをオープンにしてもらいたいなと思っています。
ですから、女性の再浮上、再び輝くことは、まったく不可能ではないです。

■子を持てないのは教育費が高いからでは
会場の方5 女性
いま中学生の母親です。子どもを持ちたいけど持てない人をなんとかするというお話でしたが、私は、子どもを持てる最後ぐらいの年齢になったとき、ひとりでいいかなと思ったんです。その理由は、教育費です。いま、子どもが中学生になりまして、ひとりでよかったと思っています。いろいろな手当とかありますけど、焼け石に水です。
学費もそうですが、学習指導要領が変わって、公立学校も内容が難しくて、塾へ行かないとついていけない。塾って湯水のようにお金がなくなるんです。そこを解決しないと、子どもは持てないと思います。
いまでのお話は、わりと「勝ち組さん」のお話みたいな気がします。
中学生のうちの子も、自分が子どもを持てる将来を描いていないと思います。今の子どもさんたちって、割と希望を持っていない。それなりに楽しくやってますけれども、中学生の時点で、家族を持つとか結婚とかの未来を描けない子が大勢います。
学校とか教育について、何かいいアイディアがあれば教えてください。

羽生 私も2児、中学生と高校生を育てているので、よく分かります。日経デュアルで編集長をしていたとき、一番読まれたのが、教育費の記事でした。
公的にもらえる児童手当を、お父さんが飲み会に使わずに全部貯めていったらいくらになるのかと計算し、公立だけで進んだ場合、3年間塾に行った場合、中学・高校が私立だった場合、私立の理系に行った場合など、すべてのパターンでいくらになるかを調べてみたら、どれも破綻するんですよ。足りない。
いや、「児童手当だけでも子育てできますよ」と言う会もあります。それはそれで間違いではないんです。プライベートなサービスをまったく受けなくても、国公立の大学にも入ることはできます。ただ、そうなると、子育ての話とはちょっと違うなと思います。
私立の塾に行けないと進学できないという状態は、個人の学力の問題とは違って、社会のレールの中で、辻褄が合わっていないわけですよ。
個性を活かしなさい、アクティブラーニングです、なんて言うけど、全然、アクティブじゃないですよ。都立高校に見学に行くと、とてつもなく大きいポスターが下駄箱のところにあって、偏差値のランキングが書かれているんですよ。それを毎朝、見ているんです。
そういうのがベースにあって、やっぱり塾へいかなければということになっています。
「10年間の子育て費・教育費特集」をして最終的には、教育現場の問題になりました。
お金の節約の方法はいくらでもあるんです。増やす方法も投資信託とか、学資保険とか、いろいろあります。でも、実は、それでは乗り越えられない。本当によくないと思っています。回答になってなくてごめんなさい。

松下 国の教育費予算、もっと増やしてほしいなと思います。私大への私学助成などありますけど、公私の格差があります。「好きで私立へ行っているんだろう」と言われることもありますが、そうじゃなくて、その子に合ったところを選んだら私立になったということもあります。そもそも、東京の高校は、私学がなければ成り立たない。都立だけだと子どもの数に足りないわけです。
そうした部分から、高校の授業料の無償化もされるようになっていますが、所得制限などもあるので、その所得制限をギリギリで外れた人たちがどれだけ負担が大きいか。
国の予算で、子育てに新たに3兆円ということですけど、そこには多分、教育費は入っていません。もうちょっと、国家予算で教育費の部分を増やしていのが大事だと思います。

■育児をする父親の「鬱」をどうしたらいいか
会場の方 6 女性
私は助産院を経営していまして、産後ケアの最前線にいます。お母さんたちと触れ合って、いろいろ話を聞いています。
羽生さんの資料で、ノルウェーが子育てしやすいということでした。私の同僚がノルウェーで出産したんですが、何が政策で生きたのかを考えると、高校生まで教育費が全部無料なんです。さらに、男性と女性ともに、育児休暇が240日取れるんです。夫婦合わせて480日取れるから、取らないと損ということで、男性の育児休暇率が90%ぐらいあるそうです。
公園の写真を見せてもらったんですけど、男の人しかいない。パパしかいない。すごいなと思いました。税金が高いとも言われますが、子育てしやすい政策なんだろうなと感じたんです。
お母さんたちといろいろ話して思うのが、法律改正があって、いま男性の育児休暇も取りやすくなっていますが、厚生労働省の統計では、20年前と比べても5パーセントだったのが、14パーセントぐらいに上がった程度です。
その14パーセントをどう考えるか。男性が育児休暇を取ったとしても、何をしていいのかが分からない。どこに行ったらいいのか分からない。そういったことの政策が次に必要かなと思います。
いま、問題になっているのは、男性の鬱(うつ)です。育児をしているお父さんが精神的に病んでくる現状があります。お母さんには、行くところ、話を聞いてくれるところがあるんです。でも、お父さんは行くところがない。青野さんの話を頷きながら聞いていたんですが、お父さんの鬱について、どう考えますか。

青野 13年前、初めて育児休暇を取ったときは、男性の育休率は2パーセントか3パーセントでした。
男性が子育てをした場合、まず、男性トイレにオムツ替えの台がない。男性用の子育てグッズが売っていない。区にピヨピヨ広場というのがあるんで、子どもを連れて行ったんですが、若いお母さんしかいないので、僕は端っこの方で、何かうずうずしといて、すぐ帰ってしまい、二度と行きませんでした。
本当に、精神的にもつらくて、追い込まれて、すごく鬱でした。だから、僕は体験として、リアリティを持って理解できます。
それでも、少しずつお父さんの子育てが増えてきています。保育園の送り迎えは、結構、お父さんが多くなっています。少しずつ緩和されているのかなとは思います。
けれど、やっぱり「お父さん育成講座」を増やしてほしいなと思います。区のそういう講座で、赤ちゃんの抱っこの仕方から、お風呂の入れ方、どう考えればいいかなどを教えてもらいました。だから、何とか向き合えましたが、それがなかったら、相当つらいと思います。
なので、ぜひ「お父さん育成講座」を充実させていただき、義務で参加させるぐらいがいいと思います。

松下 お父さんの鬱については、基礎自治体としてできることがありそうなので、考えていきたいと思います。

■沖縄の出生率が高いのはなぜ
会場の方 7 男性
基本的に、文化があって、その下に制度がある。制度は、本当にゆっくりではありますけれども、SDGsの達成などG7並みになろうと追いつこうとしています。
青野さんは、文化をご理解されて実践されている。サイボウズのなかで文化になっている。
気になっているのが、沖縄です。南西諸島は、公衆衛生学的に非常に面白い地域なんですが、県民所得がいちばん低いところが、出生率がいちばん高いんですね。これはどうしてか。制度なのか、文化なのか、分析してほしい。

羽生 ありていに言えば、沖縄は、すごい低年齢で結婚しています。それで、確か離婚率も日本でトップ、いちばん高いですよね。そのプロセスのなかで出産もあるのでしょう。
それがいいか悪いかは別として、海外型なんだろうと思います。アメリカへ行ったとき、中学生が妊娠したというので、クラスの皆が募金箱をまわしていて、びっくりしました。日本で、中学生が妊娠したら、もう人生終わったみたいになって大変な騒ぎになるところを、割とウェルカムなんですね。
沖縄もそれと似たところがあって、さっさと2、3人産んで、さっさと離婚して、非常に低所得で困りながら暮らし続けるみたいです。ちゃんと沖縄の分析をしたことはないのですが、それに近いのかなと思います。それを目指していいのかどうかは議論になると思います。
そういえば、少子化対策大綱のときも、沖縄の事例が出て、エキスパートの方が来て話していました。

■子どもではなく、親の数が減っている

最後に、会場にいた、作家の中川右介さんが発言されました。(第13回「世襲政治を斬る!」講師)

中川 多分、3人の皆さんより10歳くらい上の1960年生まれで、残念ながら子どもはいなくて、子育ての経験はありません。その立場から言わせていただきます。
松下さんや青野さんからは、「そんなの子育てじゃない」と言われるかもしれませんが、いまの入学式とか卒業式は、必ず両親が揃って行きますよね。僕の子どもの頃は、母親しか行かなかった。お父さんが来る子なんていなかった。そういう意味では、男性もかなり子育てに参加するようになったのかなと思っています。
いまのお話を聞いて思ったのは、もしここに高校生・中学生の男の子・女の子がいたら、子どもを産みたくないだろうな、と。つまり、「大変だ、大変だ」とばかり言うから。でも、僕からみたら、「え、給食費はタダなの。子どもの医療費もタダ、育休もお父さんが取るなんて、昔と比べたら、すごい、いい世の中じゃないか」です。
「これだけ、世の中変わっているよ、まだまだ足りないかもしれないけど、これだけ変わっているんだから、安心して産めますよ、育てられますよ」と、良くなったところをPRしないから、ますます少子化というか、子どもを産まなくなってしまうのではないかと思います。
もうひとつ、言葉について言えば、もう「少子化」ではないですよね。「親が少ない」。つまり20代30代の人口が、50年くらい前と比べて、ぐっと減っている。だから、産む人の率が同じだとしても、親が減っているから、子どもの数はますます減るわけです。さきほど、いまの出生数70万人が、80年続けばいいというような話も出ていましたが、続かないです。いま生まれた70万人の人から生まれる子どもは、もっと減っていくんですから。縮小再生産なんです。
その意味でも、本当にアンコントロールな状況になっています。まず意識を変えて、「少子化」ではなく、「少親化」なんだ、親が少なくなってる世の中なんだということも、確認というか、周知させることが必要だと思います。
沖縄の話も出ましたが、昔から「貧乏人の子沢山」と言われています。なぜ昔は貧乏人の子沢山が成り立ったのに、今は成り立たないのか。そこを究明すると、何か改善策があるかもしれないとも思います。

■子育ての楽しさを伝えるためには
羽生 おっしゃる通りです。子育てのいい面を言わないのは、メディアの問題もあります。
さっきのアンケートで、睡眠時間が少ないとか、いろいろ大変だという質問をして、いちばん最後に隠しクエスチョンとして、「とはいえ、あなたは子を産んで楽しいですか」というのを入れたんですよ。そうしたら、半数以上が「楽しい」と答えていました。ちょっと私、涙が出そうになりました。眠れないとかいろいろあっても、やっぱり楽しいんだな、幸せなんだなと。でも、そういうことをなぜメディアは言えないのか。
私はいつも、編集部では両論併記でやってきました。悪いことを10書いたら、いいことも10書かなければだめとやってきました。そうしないと偏ってしまいますから。
メディアは、ネガティブなコンテンツが好きなんです。ペシミスティック・クレバー(
悲観的な様)と言われますが、それと同じで、株価だって「暴落する」と書くと読まれるんです。「これから上がる」なんて書くと、頭に花が咲いていると思われる。
それと同じなんですね。「子育て楽しいよね」というタイトルだと誰も読んでくれない。そういうメンタリティもあるのかなと思いますが。
だからこそ逆に、おっしゃる通りで、いいところを書いていかないと、どんどん悪いスパイラルになるなと、今一度思いました。

青野 子どもの頃は、近所のあの家には何くんが住んでいて、何が好きで、一緒に遊ぶのが当たり前だった。大人も、他人の子どもでも普通に接することができた時代だったと思います。今それをやると、安全上、大丈夫なのかとなって、僕自身も近所の子に何か気軽に声をかけたりするのが、ちょっとはばかられるような社会になっています。
これが何を生むかというと、子どもと接する機会が減ることによって、子どもを作る喜びを感じる機会が減って、「やっぱりうちも子ども欲しいな」と思うきっかけが減っているのかなと思いますね。
でも、それを昔に戻すのはなかなか難しいので、現代風に作り直すことだと思うんです。うちの会社でやっていることを紹介させていただくと、子連れ出勤OKとしています。保育園は子どもが熱を出すと預かってくれないので、そういうときは、会社に連れてきていいんです。それで会議室で介護しながら、横で働くみたいなことをしていると、他の社員が来て、「ちょっと、抱っこさせて」みたいなことになるんです。このように、子どもと触れる機会を意図的に作っていきたい。
あとファミリーデーもやっています。その日は子どもを連れてきて、会社でどんちゃんやっていいんです。そうすると、独身の人とか、まだ子どもがいらっしゃらない若手社員とかが、「子どもを持つってこういう感覚なんだ」「何か楽しそうだな」「お母さんお父さんニコニコしていていい感じだな」と思う、そういう時間を作っています。
それがないと、なかなか「子どもを持つ喜び」を伝えていけない。そこはやっぱり頑張らないといけないんだろうと思います。

松下 予定より15分もオーバーしてしまいました。最後に、ひとことずつ、いただきます。

羽生 こんなに緊張したイベントはありません。住んでるところで何か言うのは、きついですね。これを毎日やっている(松下)玲子さん、すごいな、政治家ってすごいなと思いました。

青野 良い機会をありがとうございました。どうしても悲観的になってしまう問題ではあるんですけれども、その悲観を乗り越え、楽観にする、明るい未来を作ろうという話をしているんで、楽しく、こういう問題を議論できればいいですね。

松下 どうもありがとうございました。お2人の講師の方といろいろ少子化対策、子育て支援について議論ができてよかったなと思っています。また、参加された方からの質問・意見などで、武蔵野市としても、参考にしたいと思うこともあります。男性の方の鬱のことなど、男性が子育てをする女性たちの輪の中に入っていくのが大変だと知りました。どんなプログラムを用意したらいいか、武蔵野市としても何か取り組めないかなと考えたい「気づき」をありがとうございました。

最後に、武蔵野政治塾の橘民義・事務局長からの挨拶です。
後半では政局に関する秘話が披露され、さらに、松下さん、青野さんには国会議員に、羽生さんには武蔵野市長になってほしいとの発言も飛び出しました。

橘民義
去年の12月10日に、青野さんと私とで「政治にものを言う経営者」と題して、話しました。私も経営者なんです。
私と青野さんの会社は、同じぐらいの規模の会社です。でも、青野さんの会社は女性の採用数がどんどん増えていくし、働きやすい会社として有名なんです。最近、うちの社員がいなくなったなと思ったら、青野さんのところへ行ってしまったんではないかと心配しているんです。
羽生さん、よく言うよね。どこが緊張しているんですか。まったく緊張なんか、何もしてないです。
それで、青野さんと会って、「今度またやりたいね」と言っても、なかなか「うん」と言ってくれなかったんですが、「羽生さんとやろうか」と言ったら、すぐに「やりましょう」となったんです。この人は本当にしっかりしてます。
今日は、本当に楽しかったですね。武蔵野政治塾、今日で20回です。1年経たないうちに20回やれました。必死になってやっていますが、それは、皆さんが来てくれるからです。
お客さんがなかったら、テレビやネットだけやっても面白くも、なんともないんです。こうやって皆さんが来てくださることに、心から感謝をしております。
ひとつだけ、私の考えを言わせていただきます。
やっぱり、将来を見なきゃいけないことが、すごく大事です。しかし、現実を乗り切らないといけないのも大事で、両方大切なんですよね。
実は先月、立憲民主党の小川淳也さんと、れいわ新選組の山本太郎さんとを、私がお招きして、一緒にランチをして話しました。面白かったのは、この2人、政治的には絶対合わないんです。小川淳也さんは「消費税25パーセント」と言う。山本さんは「0にしろ」と言う。そんな2人が話が合うと思いますか。でも私は、合う自信があった。
なぜかというと、同じなんですよ。小川さんは、将来、日本を福祉国家にしたい。みんなが子どもを産めて、歳を取っても幸福に安心して生きていけて、学費もほとんど払わなくていい、そういう国にするためだったら、消費税は30パーセントでもいいくらいだというのが、小川淳也さんの大きな考え方です。
山本太郎さんは、「いま日本は地獄だ」と。「そんなときに消費税なんか取ってどうすんだ、こんなものでゼロにしないといけない」と言う。「たった10パーセントと言っても、年収300万しかない人にとっては30万ですよ、この30万の違いがわかるんですか」とこういう意見なんです。
どっちが正しいと思いますか。私は両方正しいと思う。だから2人が会えば話もできるという自信がありました。
それで、ランチに誘って2人で話をしてくださって、じゃあこれで終わりはないなと、シンガポールへ、一緒にマイナンバーカードの視察に行ったんです。そこでまた、いろいろ話をしましたが、そのあとどうなるかは、私の仕事ではない。山本太郎さんと小川淳也さんが、自分たちのそれぞれの政党をどういうふうに変えていくのか。何もしないのか、しようとしてもできないのか、そこは分かりません。
何が言いたいかというと、少子化の問題も、そこだと思うんです。将来をどこまで考えるか。いま本当にできることは何なのか。この2つのバランスだと思います。
そこで大切なのは、やっぱり政治だと思うんです。日本が本当に住みやすい国であるかどうかがいちばん大事なんです。本当に住みやすい国だったら、子どもを産んで、大きくなって卒業しても海外には出ていきません。だけど、この前テレビで報じていましたが、若い女子学生は日本に就職しないんです。学歴を持ったらアメリカなど、よそへ行ってしまう。日本より遥かに給料もいいし、女性の人権もはるかに強い。アホらしくて日本になんかいられるか。これが若い女性の考え方になってしまっている。
「外国人が来たらいい」なんて言いますが、外国人労働者もどんどん少なくなっていますよ、日本なんか来てくれません。入管で殺されるんですから。そんな国へ誰も来ません。
日本がいかに住みにくい国か、そして外国人から見ても、来にくい国になってしまっている。そこでこの日本全体をどういうふうにしていくかという、いちばんの大きなプランがないと、施策がないと、それを持って政治でやらないと、いつまで頑張っても、いくら議論しても、前へ進まないと思います。
そういう意味で、今日の議論は本当に面白かったです。こういう会を、武蔵野政治塾でできたことは、非常に嬉しく思います。この議論をどんどん外に広げて、そして政治を変えていこうじゃありませんか。

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