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NEW!!【活動報告】第22回「『やさしい猫』を書いて知った入管問題」質疑応答篇

続いて、質問コーナーとなりました。
会場の方1
■武蔵野市の住民投票条例をどう考えるか
ご存知かと思いますが、武蔵野市は住民投票条例という問題が2年前にありまして、外国籍の人も住民投票ができるようにしようという案に対し、「それは危険だ」と、ほとんどヘイトスピーチのような形で、たくさんの声が上げられ、議会では否決されました。
私はとても残念でした。今日のお話にもありましたが、1952年に、もともと日本国籍を持っていた人たちが、国籍を失わされました。朝鮮や台湾から来た人たちは、「お前は日本人だ」と言われて日本に来て、日本の戦争にも参加し、日本軍の一員として戦争責任を問われて処刑された人もいます。
それなのに、戦争が終わったら日本国籍を失い、軍人としての恩給などの一切の権利も奪われました。こういう歴史があったことは、とても残念に思います。入管で「何をするか分からない外国人」と見られるのは、戦前から続いていることだとやっと気づきました。
何とか、未来に向けて、新しい移民の人たちも一緒にやっていきたいと思います。
住民投票条例についてのご意見を伺えたらと思います。

中島京子さん
住民なので、外国籍の方でも投票する権利があるのは当然だと私は思います。
私は隣の杉並区におりまして、注目していましたが、攻撃してきた方は、武蔵野市の方じゃなかったりしますよね。全国からネトウヨが結集していたようでしたので、住民の本当の声が生かされたのかは疑問に思っています。議会で否決されたのは残念です。
外国籍でも住民なので住民投票に参加する。これは、おそらくその方向へ行くしか未来はないと思います。残念ながら否決されましたが、未来はそういうふうに変わっていくと、私は希望を持っています。

■日本をこうしたいとの思いがあって、『やさしい猫』を書いたのですか

会場の方2 男性
先生の今回の著作は、大変大きな問題提起をされていると思います。小説がそこまでできることに、驚いています。
定住外国人との共生という課題は大きな問題だと思います。簡単には解決しにくい。一般の日本人の意識は、たとえば在日コリアン、2世、3世、もう4世の時代になっていますが、彼らに対しての認識が薄く、「なんだ、あなたは選挙権、ないの」という感じです。選挙権があって当然だと思っている人が8割くらいいる。一方で、納税義務は日本人とまったく同等なんです。ですから、「在日特権」というのはないんです。
いまの政権は、外国人だけでなく、日本人に対しても管理しつくそうという考えで動いてきた感じです。
この小説を書いてみようと思った動機のなかに、日本社会を日本人として、こういうふうにしたいとの提起があったんでしょうか。

中島京子さん
そういうふうには、考えていなかったと思います。
最終的にはメッセージ性がある作品になったと思うんですけども、自分としては、そこを出発点にしたくないという思いがありました。
小説がメッセージを運ぶものにだと考えてしまうと、つまらなくなるというか、辛くなるし、私にそんなことができるわけがないと思っています。
本が出ると、新聞記者の方から「どうしてこれを書いたんですか。これを知らせたいからですよね」と訊かれと、そうでなくもないので、「はあ」とか答えると、そう書かれてしまうんですけど、微妙に違うんですよね。
どんな小説でも「書く」というのは「考える」作業です。私の場合、頭があまり良くないので、小説を書かないと、何にも分からない。小説を書くのは、知りたいこととか考えたいことがあって、それを書くみたいなところがあります。
書き始めたときは明確ではなく、書いているうちに、「ああ、私はこういうことを知りたいんだ」と、自分で分かることもあります。
入管の問題は、亡くなられる人がいるとか、あまりに知らないことがたくさんあったので、ショックでした。まずは知りたい、その知ったことを他の人にも知らせたいというのも、割合と素朴な思いとしてあったと思います。
そこから日本が変わらなければいけないという考えにたどり着いたのは、書き終わった段階でしたから、最初から、そういうメッセージを書こうとしたのではないんです。

会場の方3
お話のなかにあった、子どもたちの絵とか作文の展覧会を見に行きました。家族の絵がありました。作文では、みんなと同じように暮らしたいよねとか、将来の夢はお医者さんとか弁護士になりたいとあったりしました。
先生が、それをご覧になって率直に感じたことを教えていただければ。

中島京子さん
作文は、「夢」という題だったんです。そうなると、必然的に、夢を持てないという話を引き出すことになるんです。夢について語るときに、自分の夢がいかに制限されているかを考えなければならない。そのことがとてもせつなく、こんなことを子どもに考えさせてはいけないと思いました。

会場の方4 府中から来た方。質問ではなく、ご自分の体験を語りました。
東京外国語大学の大学院生、留学生のサポートをした経験があるんですが、彼らの在留に関しては、もろもろの厄介な手続きがあるんです。日本人の我々には、まったく関係のない手続き部分ですから、我々の目には触れないんです。
そういう部分を我々にアピールしてくるんです。品川と立川に管理局があるんですが、品川は人数が多いから、行くと4、5時間かかるんです。窓口は設備的にはいくつもあるんですが、何人並んでいようが、ひとつしか開けない。
立川は、駅からだいぶ離れた工場地域の隅にあって、道路は舗装されていないので、雨になると水たまりができる、そういう所です。我々の目に触れない部分での扱いは、本当に劣悪だなと、前々から感じていました。
役人たちの小さな正義感が、形式犯なのにあいつは悪いやつだとなると、スイッチが入ってしまうんですね。そういうことを感じています。

会場の方5
『やさしい猫』はドラマで知って、先生の本も読みました。
入管の問題が、新聞などで読むのとは違って、小説だともっとリアルに、現実が分かりました。マヤちゃんは、いまどきの子で、ちょっとオタクも入っているみたいですが、起きたことに関して、怒ったり反省したりすることに、共感しました。
伺いたかったのは、小説に出てくる入管の職員が、すごく冷たい言い方をしたり、裁判で入管の代理人が入管はオーバースティにならないように配慮しているのに、あなたの落ち度だと言っています。
これはフィクションとして書かれたのでしょうが、実際に、入管の職員は、ああいうことを言ったり、裁判の場面も実際にあったこと、現実の言葉だったんでしょうか。

中島京子さん
取材した中で、実際に言われたことを生かしています。
この小説を書くとき、何か極端に入管を悪者にして、ものすごく悪い人たちみたいに書くと、そういうバイアスのかかった人が書いている小説になってしまうから、それは避けたかったんです。
実際に入管の職員さんが自分のこととして、あるいは同僚が言ったこととして言ったこと、実際に審査で言われたことなど、そのまま生かしています。
実際はもっとひどいことがたくさん言われていましたが、それをそのまま書くと、おそらく「中島は特定のバイアスをもって入管を悪く書いている」と思われるので、それは避けたかった。だから、一番ひどいことは書いていないんです。わりかしマイルドになってる気がします。
「日本の女性はすぐ騙されるから、目をさまさせてあげる」というのも、実際に言われたことです。

会場の方6 男性
入管の問題は、日本の文化に根ざしたものだと思います。
ひとつは、対象になってるのは外国人であることです。これは、村社会文化が関連しているのではないかと思います。日本の中には、閉鎖社会が非常に多い。たとえば宝塚の問題でも、女性が自殺したのは閉鎖社会だから、そういう問題が起きたと思います。刑務所でもそうですし、警察だとか自衛隊も、非常に村社会文化がはびこっていて、そういうところで起こる問題は、外に出にくい。
ですから今回の入管の問題は、外国人が対象だから余計に極端な形で出ていると思います。
ただ私としては、今、若い人はだいぶか変わりつつあると思っています。昨日、大谷翔平のドジャースの入団会見がありましたが、若い人はサッカーでも何でも、どんどん世界に出て、活躍の場を確保しています。メジャーリーグでホームラン王になる日本人選手など、出てこないだろうと思っていたのが、あれだけの活躍ができるんです。
経済界でも何でも、ああいう若い人が出てくると思うので、若い人に期待しております。いかがでしょうか。

中島京子さん
若い人は感覚が違うと思います。
入管のことをやっていると、関心をもってくれる学生さんが多く、それはおそらく、身近に外国籍の人がいるからだと思います。
さっきお話しした姪が、日本に留学してファッションの専門学校に行っていたんですが、ミャンマーから来た女の子が同じクラスにいました。ミャンマーがとんでもないことになったとき、家族から「大変だから、帰ってこないで日本で就職しなさい」と言われ、一生懸命に就職活動して、就職が決まったとき、姪たち仲間が、お祝いをしていたんです。
うちの姪やクラスメイトにとっては、どこかの知らない外国人がかわいそうな思いをしているとかではなく、お友だちの話なんです。
多分、入管問題を一生懸命にやっている学生さんが多いのは、同じクラスに外国から来ている子がいるからなんでしょう。私たちの若い頃とは比べ物にならないくらい、たくさんいるんだと思います。そういう人たちの感覚は、すごく違うので、それが未来を絶対に変えてくれると思っています。

【中島京子さんの最後の挨拶】

今日はありがとうございました。
本当に、いい方向にいくといいなと思っています。そのためには、入管法の採決のときだけちょっと騒ぐのではなく、関心を持ち続けることなのかと思います。
それで、私もこういう場に出てきています。みなさんも、関心を持ち続けていただければ、未来は変わっていくと思います。

【武蔵野政治塾運営委員の松下玲子さんから】

今日のテーマは、「『やさしい猫』を書いて知った入管の問題」でした。
私も小説を読み、そのうえで今日のお話を聞いて、新たな視点が変わりました。
中島京子さんが小説を書きながら、たくさん取材を重ねて、いろんな方に会って、仮放免とか、いろいろな言葉を知って、知りたいと思いながら、小説にされたんですね。
私なりに考えますと、この問題は、日本の社会の中で、異なるものを受け入れることに、ものがすごく抵抗感がある、そういう部分が出てきてしまっていると思います。
同じ地域の中で同じ日本の中で、国籍も性別もまた育った背景も違う人たちがいる。みんな違っている、みんなのいい部分を、もっともっと生かしていく、そんな多様性が認められる社会でなければいけないのかなと思いました。
国は総務省が多文化共生を推進しようと、旗を振っているんです。各自治体には、多文化共生推進プランを作りなさいと、言ってきているんです
武蔵野市も多文化共生推進プランというのを作って、どうしたらいろんな違いのある人たち、国籍も違う人たちが、地域の中で生きながら、活躍できるかの計画作りもしているんです。
でも、入管では人権が守られない。外国籍の方を差別するようなことがある。この矛盾を、どうしたら変えていけるのか。
中島京子さんから、一緒に日本の社会を作ってもらうことを真剣に考えなといけないという言葉が出て、とても力強いと思いました。
私自身も一緒に、日本社会や地域社会をともに作っていく、そんな力になりたいなと思っています。
大切なお話をいただきました。これからも、ひとりひとりの人権が守られて、多様性が認め合う、支え合う社会を作っていけるよう、ひとりひとり人が知って、考えて、そして選挙の投票行動とかいろんな方法で意思を示して、より良い社会を作っていきたいと思いました。

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