Skip links

【活動報告】第2回「旧統一教会と政治家」

フルバージョン

第2回は武蔵野公会堂で開催されました。定員300名と、前回の3倍でしたが、予約で満席となりました。
当日の様子は映像も公開しますが、どういうお話があったのか、事務局でまとめてみました。
(必ずしも、実際の対話の順ではありません。)
冒頭の開会の挨拶で、橘民義・事務局長は武蔵野政治塾を、「アゴラ」がモデルであると、語りました。アゴラとは古代ギリシアの都市国家ポリスの「広場」のことで、多くの人が交流し、集い、議論を交わした、民主主義の原点とも言える場です。
そして「静かに、落ち着いて、激しく議論を」と呼びかけ、第二回が始まりました。
テーマは「旧統一教会と政治家」。いま最も話題になっているテーマです。
対談をしていただいたのは、ジャーナリストで夏まで参議院議員だった有田芳生さんと、元文部科学省事務次官で現代教育行政研究会代表の前川喜平さん。
ともに、旧統一教会について詳しい方ですが、意外にも、お二人が会うのは今回が初めてということです。
司会は東京都議会議員・五十嵐えり氏。
以下、旧・統一協会、現・世界平和統一家庭連合については「統一教会」とさせていただきます。

「私も統一教会を知らなかった」と、衝撃の発言

まず司会の五十嵐さんから、「統一教会の問題が大きく報じられたとき、最初はピンとこなかった。正直なところ、そんなやばい宗教団体があるなんて知らなかった」という発言がありました。
五十嵐さんは1984年生まれなので、合同結婚式がワイドショーや週刊誌で話題になった1992年前後はまだ小学生。知らなくても当然です。
この30年、統一教会をマスコミがほとんど報じられてこなかった「空白の30年」を象徴する発言でした。
五十嵐さんの冒頭の発言からは、「知りたい」という強い思いが感じられました。

安倍元総理狙撃の第一報

五十嵐さんからの最初の質問は、「7月8日の安倍晋三元首相の狙撃事件の第一報を聞いて、どう思ったか」でした。
有田さんは、参議院選挙の候補者でしたので、横浜で遊説中に事件を知ったとのことでした。「状況がまったくわからないなか、韓国の知人から、統一教会関係で撃たれたのではとの問い合わせのメールが届きましたが、情報がなく、答えられなかった」。
韓国のジャーナリストのほうが、すぐに統一教会がらみだと察したことが、うかがえます。
山上容疑者が逮捕され、その日のうちに「ある特定の宗教団体」が関係していると報じられましたたが、「統一教会」とは発表されなかったことなど、当日を振り返ります。

続いて、前川さんも事件当日について、語ります。
「安倍さんについては、気の毒とは思いましたが、悲しいとは思わなかった」。
また、狙撃の動機が、「ある宗教団体との関係」との報道を知り、「すぐには統一教会とは思わなかった。意識の外にあった。統一教会が生き延びていることは知っていたが」と正直な胸の内を明かされました。
そして、文部科学省の役人として、「しっかりやっておくべきだったと反省している」と、はっきりと認められました。

その後、おもに有田さんが、統一教会と政治についてのこれまでの歴史・背景を説明されました。何のメモも見ずに、スラスラと年号が出てくるのが、さすがです。
まとめてみました。

統一教会と日本政治のこれまで

韓国で文鮮明氏によって教団が設立されたのが、1954年。
教祖・文鮮明を「世界の王」にするのが目的の宗教です。
日本で宗教法人として認証されたのが、1964年。本部教会は、渋谷区の岸信介元総理の私邸の隣に移転しました。
1968年に、関連の政治団体として「国際勝共連合の」が設立され、代表世話人に岸信介元総理が就きます。岸氏は本部を何度も訪問し、また文鮮明教祖とも握手している写真が残っています。

1974年に、東京・帝国ホテルで開かれた文鮮明教祖の講演会「希望の日晩餐会」では、当時、大蔵大臣だった福田赳夫元総理が祝辞を述べ、「アジアに偉大な指導者現る、その名を文鮮明と言う」と紹介。
ちなみにこの会の名誉実行委員長が岸信介元総理です。
その後、福田派は安倍晋太郎氏が継いで、安倍晋三氏にまでいたるわけですが、自民党のなかでも、統一教会との関係が最も深いのが、安倍派(清和政策研究会)なのは、岸信介元総理にまで遡るわけです。

清和会ではありませんが、中曽根康弘元総理も、統一教会とは近い関係にあったそうです。
その中曽根内閣のもとで、1986年の衆参ダブル選挙で自民党は大勝しました。
すると統一教会は、女性信者を旅館に集めて、「国会議員秘書養成講座」を行ない、秘書に必要なマナーなどを伝授し、100名近くを自民党の国会議員の秘書にすることに成功します。

統一教会はなぜ政治に近づくのか

五十嵐さんから、素朴な疑問として、「統一教会はなぜ政治に近づくのですか。何の目的があるのですか」との質問。

有田さんの説明をまとめますと、以下のようになります。
統一教会が政治に近づくのは、彼らの教義に「家庭が大事である」というのがあり、それを日本の政治・行政に働きかけで実現するため、というのがひとつ。
地方自治体では、いま「家庭教育支援条例」を制定するところが相次いでいて、それは統一教会が地方議員にはたらきかけているからです。

また、1986年当時の統一教会にとって、政治に近づく最大の目的は、文鮮明教祖の来日を実現することでした。
文鮮明教祖はアメリカで脱税し実刑判決を受けたため、入国管理法の規定で日本に入国できない状況でした。そこで政治にはたらきかけようとなったわけです。

中曽根元総理も文鮮明来日に向けて動いたようですが、87年に総理を退任し、89年にはリクルート事件に関与したとして、表立って動けなくなっていました。
そこで、次は田中派・竹下派だった金丸氏が仕切って、92年に文鮮明来日が実現しました。布教活動はしないという条件でしたが、平気で破って布教しました。
この頃の政界は、竹下派の天下で、清和会は87年に岸信介氏、91年に安倍晋太郎氏が亡くなり、総裁候補もいなくなり、自民党のなかでは非主流派でしたので、統一教会は竹下派に近づいたのでしょう。

「空白の30年」

1992年は歌手の桜田淳子さんも参加した合同結婚式が行われた年です。
このときは「マインドコントロール」という言葉が流行語になるほど、騒がれましたが、1995年にオウム真理教事件が起きると、関心はそっちに向かい、統一教会は忘れられてしまいます。
「空白の30年」の始まりです。

有田さんは、マスコミが報じなくなる背景として、赤報隊事件との関連も指摘します。
統一教会の「霊感商法」を批判するキャンペーン報道に熱心だったのが、朝日新聞社が発行する「朝日ジャーナル」という週刊誌でした。
1987年5月3日に、朝日新聞の神戸支局が襲撃され、記者が亡くなった事件があります。赤報隊と名乗る犯人グループは、いまだ逮捕されていませんが、当時、警察が捜査対象としていたのが、新右翼・民族派と、統一教会でした。
しかし、結局、証拠がなく、いまだ未解決です。
統一教会のなかには武装した軍隊のような部隊もあったそうです。
朝日新聞社を襲った動機は、霊感商法批判をやめろという圧力です。

有田さんからは、衝撃の事実も語られました。
オウム事件が裁判に移った頃、ジャーナリストとして活躍されていた有田さんは、警察幹部から、「次は.統一教会をやる」と言われて、知っていることをいろいろ教えたそうです。
ところが、何も警察が動かないまま数年、いえ、数十年が過ぎました。
数年前、その幹部に会う機会があり、「統一教会をやるって言っていたじゃないですか」と言うと、「政治の力でできなくなった」との答えだったそうです。

文部科学省で統一教会と向き合う

前川喜平さんは宗教団体を所管する文部科学省にいました。
その立場から、興味深い話が聞けました。

オウム真理教事件の後、1995年に宗教法人法が改正されました。
それまで宗教法人は都道府県が所管していましたが、全国的に活動している団体については文部大臣が所管することになり、さらに毎年、活動の実態があるかどうかをチェックするための資料の提出も義務づけられ、法令違反などの疑いがある場合は質問できるようになりました。
この改正には、キリスト教、仏教、新宗教を含め、宗教界から猛反発がありました。日本には宗教団体が弾圧されたという戦前の歴史があるので、政治を信用していないのはわかります。
ですから戦後は、性善説でやってきたわけですが、オウム真理教のような団体が出てしまったので、法改正することになり、世論も、宗教団体への規制を求めていました。
このとき反対しなかったのは、神道だけだったそうです。
それを文部省(当時)は、この法律を宗教弾圧などに悪用しないからと説得しました。
実際、文部大臣にはそれほど強い権限は与えられていません。
いま話題となっている「解散命令」についても、文部科学省が命令を出せるのではなく、命令を出してくれと裁判所に求め、裁判所が命令するという法律になっています。
文科省としては「注意深く見守る姿勢」です。

前川さんは、1997年から98年にかけて、文化庁文化部宗務課長でした。
このとき、統一教会が名称変更したいと相談に来ました。
統一教会に悪いイメージがついて、新しい信者を獲得するのに支障を来すようになったので、それを隠すために名称を変えようと考えたわけです。
宗務課の中で議論した結果、「統一教会として活動し、社会に認知され、訴訟の当事者にもなっている。その実態が変わっていないのに名前だけ変えることはできない」と、申請しないように伝え、統一教会もそれを納得し、申請しませんでした。
このときは統一教会側も、政治力がなかったのか、諦めたわけです。
前川さんが宗務課長だったときは、「政治家からの圧力はなかった。それを意識したことはありませんでした」。

名称変更承認を指示したのは誰か

それから18年が過ぎて、安倍政権となっていた2015年、前川さんは文部科学省の審議官に就任しました。
各省では、トップが大臣で、副大臣、大臣政務官という政治家のポストがありますが、官僚では、事務次官がトップで、その次が審議官です。
ですから、「審議官の私の上には、次官と大臣しかいません」
当時の大臣は、下村博文氏です。
前川審議官のもとに、宗務課長から、突然、「統一教会の名称変更を認証することになりました」と報告が来たので、「認証すべきではない」と意見を述べました。
しかし、宗務課長としては、どうしようもなかったようです。つまり、前川さんよりも上の立場の人から、認証するように言われていたわけです。
審議官の意見と正反対の決定を下せるのは、事務次官と大臣しかいません。いくら事務次官でも、こういう政治的なことは、恐ろしくて決定はできません。

安倍元総理狙撃事件の後、この問題が浮上すると、下村氏は関与を否定していましたが2015年当時、有田さんの事務所が文化庁に質問したところ、「本件については、事前に大臣にお話した」と認めたことを、明らかにしたそうです。
すると、下村氏は「報告は聞いたが、判断はしていない」と、苦しい言い訳をしています。
結果として、大臣に報告した上で認証されているので、下村氏は「認めるな」とは言っていないわけです。さらに、事後ではなく、事前に報告を受けるのは異例です。
前川さんは、「役人にはできないことです。大臣の意向が働いていると思った」と断言します。

猛烈な資金集めは何のため

五十嵐さんから、「猛烈にお金を集めるのは、何のためですか」との質問。
有田さんによると、統一教会は韓国では宗教団体というよりは経済団体、「宗産複合体」だと解説がありました。
日本にも、統一教会の人が経営している企業や関連団体が200くらいあります。
そのひとつとして、有田さんがポケットから取り出したのが、「ウコンの力」。
これを製造しているのは、統一教会系商社として知られているハッピーワールドから独立した、コスモフーズという会社で、他にiMUSEも受注製造しているそうです。
「ウコンの力」が出てきたとき、会場からどよめきも起きました。
統一教会が売っているものといえば朝鮮人参が知られていましたが、それだけではなかったわけです。
「ウコンの力」そのものは違法でも何でもないのですが、その製造現場で働いている方は統一教会の信者が多く、30万円の給料を払うと言いながら、20万円を献金させるようなことが行われているそうです。
私たちは、自分が知らないうちに、統一教会の経済活動の顧客になっているわけで、ちょっと不気味です。

宗教法人は簡単に作れるが、解散させるのは難しい

前川さんは「信仰の自由とカネ集めとは、別のもの。信仰については国家が関与すべきでないが、違法なカネ集めには法の裁きが必要だ」と断言。

また、現在の宗教法人法では、「宗教法人を作るのは簡単だ」との説明も。建物と、教義と信者がいて、活動の実態があれば、宗教法人として認められます。
しかし、解散させるのは難しく、過去に2例しかありません。
ひとつが、オウム真理教で、もうひとつが霊視商法をし、代表が詐欺罪に問われた明覚寺。
どちらも、「刑事事件」になっていたので、解散命令が出ました。
しかし、法律には解散命令を申請できる要件として「刑事事件を起こした」とは書かれていませんので、統一教会の場合、民事ではすでに多くの判決も出ていますから、解散命令につながると考えられます。
前川さんの見立てでは、岸田内閣は、ここまで来ているので、解散命令請求をせざるを得ないということです。

解散したら信者はどうなる

政府が解散命令を裁判所に申請すると、2年くらいで決定が出るそうです。
有田さんは「すでに統一教会側は解散命令が出ると想定し、対策を練っている」と指摘。
すでに韓国への送金は、信者が現金99万円を韓国へ持ち込む(外為法で100万円以上の現金は持ち出せない)、ネットバンギングを利用するなどしているそうです。

前川さんは「解散命令が出ても宗教法人格を失うだけで、信仰の自由がありますから、社団法人や企業にすることで、組織としても残る」
「解散命令が出ればインパクトは大きいので、新規の信者の獲得は難しくなると思われる」
「2世の救済など、政治がやらなければならないことは多い」
などが、次々と指摘されました。

統一教会の政治への影響

五十嵐さんからは、「統一教会による政策の歪みがすでに生じている」との指摘も。
「自民党の憲法改正草案課と、統一教会の主張が似ていて、怖い」
「LGBT、夫婦別姓、同性婚、性教育などに、統一教会は反対しており、自民党のなかの保守的な人たちと、その点で一致している」。

有田さんによると、統一教会の信徒で地方自治体議会の議員になっている人が、全国に30人くらいはいるそうです。
議員にならなくても、議員の選挙を手伝うことで、議員を動かしていることも、知られています。
「家庭を大切にしよう」など、誰も反対できないことを言って、近づいてくるのがその手法です」

会場には元信者の方も

今回も会場から、多くの質問希望がありました。
そのなかで、統一教会の元信者という方から、
「今日の話は、外から見ての話で、中から見ていません。統一教会は人を殺せなんて言っていません。人を愛せ、という教えでした」
という発言がありました。有田さんの、「赤報隊事件は統一教会の可能性がある」という発言への抗議です。
有田さんは、「統一教会の信者は真面目な人たちが多いんです」と語り、「たしかに、組織としてはやっていないかもしれませんが、そういうことをやる人がいても、おかしくはないと思います。赤報隊事件で、警察が統一教会を捜査したのは歴史的事実です」と答えていました。

「自民党の右派が統一教会とズブズブなのは、理解できない」との声も。
統一教会は反日的なのに、どうして日本の最も右寄りの人たちが、「反共」という一致点はあったとしても、こんなにも深い関係を結んでしまったのかは、誰もが疑問に思うところです。

話を聞けば聞くほど、「なんで?」という思いは、増すばかり。
どの議員が集会に出たとか、誰が選挙の支援を受けているかということも重要ですが、被害を受けている信者の家族や、信者の救済、そして反社会的宗教団体が政治・行政に影響力を持っていることが分かった以上、それを正常な形に戻すことが重要です。
自民党には、その自浄能力はないと思います。

有田さんも前川さんも、統一教会への深い怒りはお持ちでも、決して糾弾するように語るのではなく、事実を淡々と述べていました。
世代が異なり、「空白の30年」に育った五十嵐さんの素朴な疑問をストレートにぶつける姿には、共感を持てました。

多分、会場にいた方のほとんどが、「今日はいい話を聞けたけど、これで終わらせてはいけない」と思ったのではないでしょうか。
ぜひ、多くの方に、聞いていただきたい、濃い内容の2時間でした。

Send this to a friend