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【活動報告】第4回「政治を変えたい経営者たち」質疑応答編

今回も多くの方が挙手をされ、活発な意見交換の場になりました。
実際には、2人か3人の方が質問し、それについてまとめて答える形で進みましたが、このレポートでは一問一答に編集します。

■選択的夫婦別姓反対派とは議論しようと思わない

最初は、大手出版社に勤務されている男性。
「夫婦別姓に反対の人に会ったことがありません。政治家でも、自民党だけが反対しています。
敵はどこにいるんだろうと思います。反対している人たちは、『子供の人格形成に問題がある』とか、『家族の一体性が損なわれる』などと言います。
それに対して、『家族の一体性が損なわれることなんかない』と反論する人がいますが、それも間違っていると思います。『家族が壊れようが、うちの子の人格がどうなろうが、そんなの、あなたに関係ないではないか。あなたに、面倒かけないでしよう」と反論すべきなんです。
私はカジノにも賛成なんです。国が口出しするのを止めてくれ、と言いたい」

青野「選択的夫婦別姓の反対派の説得については、これ以上は難しいと思っています。もう8割が賛成です。いま反対している人たちは、議論するつもりがない人たちですし、議論していてもウソをつく人たちなので、言葉が通じません。会話が成り立たない。『子どもの名前が決まらなくなる』とか、言うんですよ。
ですから賛成派を9割、10割にするのを目指す必要はないと考えています。
反対している人のなかには不安な人もいると思います、それはおかしな感情ではないです。ルールが変わるわけですから、何が起きるかわからない。でも、チャレンジしてみようよ、何か起きたらまた考えればいい、と思います。だから、いまあまり議論をしようとは思っていないんです。
でも、統一教会の支持を受けて当選したがために頑なになっている議員がいるんで、それはさすがにおかしいでしょう。そういうことは言っていきたい」

■解雇規制があるからだめとは思わない

この方からは、もう一問。
「解雇規制の緩和を維新などが言っていますが、経営者としてどう思われますか」

青野「解雇規制については、いまのままで、そんなに問題はないと思っています。いまも経営が厳しくなった会社はリストラしていますし、それで大きな問題になっていません。
国民も受け入れていると思います。
解雇規制があるから、経済がだめだという理屈は、よく分からないです。
サイボウズが目指しているのは、100人100通りです。ひとりひとりに向き合いたい。同じことをやっているけど、結果が出ていない人の給料を下げる場合には、ちゃんと対話して決めます。情報を共有してオープンにして議論しています」

■国に「希望」はない

岡山県岡山市から来た27歳で、夏まで農林水産省に勤めていたが辞めて、江田五月さんに憧れ、市民政治を目指している男性から。
「行政に勤めていたので、いままでと同じことを続けるという行政の体質をよく分かっています。
政府として、自民党のおえらいさんが言ったことにそって、進んでいくこともあるのを実感しています。
この国の希望はどこにあるのだろう。この先、日本がだめになっていこうとしている一方で、どこに希望を見出して、そこへ向かっていくべきなのか。
私は青野さんと同じ大阪大学で学びました。アカデミズムと行政の経験はあるのですが、経営は経験がないので、経営者として、日本のどこに希望があると考えていらっしゃるか」

青野「誇張して言いますけど、国に希望はないです。僕は国が邪魔だと思っています。人類が国という枠組みにとらわれて、いかに、大事なものを見失っているか。
国に勤められていた方にはショックかもしれませんが、企業のほうがはるかに希望はあります。
LGBTの問題でも、たとえばディズニーは闘ってますよ。『うちの国では配信しない』と言われても、ひるむことなく、作っています。それをみんな、応援しています。
いま、社会を動かしているのは、企業だと思います。テスラがイノベーションを起こし、ディズニーも変えようとしている。
マイクロソフトもGoogleもトップはインド人です。アメリカの会社とはいえなくなっています。国境は関係なくなっています。
いったん、国家に希望を持つのを止めて、企業に社会をよくすること
を考えてもらう。
暴走した企業を止める仕組みは、この100年くらいに、たくさん編み出されています」

橘「青野さんの話は、いいですね。
白紙に絵を描くわけではなく、いまある現状をどうしていくか、なんですね。何を変えるか。
世界を変えたいと思ったら、日本を変えないといけない、日本を変えるには、自分の住んでいる地域をどうにかしないといけない、という考えもありますね。
世界を見ようじゃないか。インターネットでもテレビでも、見える。世界を見ないと、方向を間違う。いつまでも原発やっている場合じゃない、ガソリン車を作っている場合じゃない、夫婦が同姓じゃなればいけないなんてことをやっている場合じゃない。そういう発想が大事だと思います」

■国の予算をどう組みますか

次は、長野県からいらした絵本作家の女性。
「今の日本の政治の状態、予算の組み方、考え方について、経営者としてどうみていらっしゃるのか」

青野「国の予算は、投資分野が間違っていると思います。私が税金を集めて投資する立場であれば、何に投資するか、シンプルに言います。
短期的にはデジタル化に投資します。アナログでやっている無駄な仕事がたくさんあるので、徹底的にデジタル化していくと、そうとう、仕事が減らせて効率がよい社会になります。
中期的には、ベンチャー企業を育成すべきです。企業は大きくなるとしがらみも多くなってくる。活性化するのは、新しい企業です。アメリカや中国は新しい企業によって、いまのようになりました。
若い人にチャンスを与えろ、ということでもあります。
長期的には、間違いなく子どもです。とにかくこの国がやばいのは子どもの数が減っていることです。東京都の出生率は1.08(パーミル)らしいです。これ、すごい数字です。しかも5年連続下がっている。
子どもを育てやすい環境を作るために、お金を使うべきです。子どもを産みにくい、育てにくい理由は、複合的です。賃金、保育園、いろんな問題があります。それを徹底的に解決していく。
ひとりの保育士が30人の子どもをみなければならないような状況を、どうにかしなければ、誰も、そんな仕事やってくれなくなります。
デジタル、ベンチャー、子どもに、徹底的に投資をすると、5年後、10年後、30年後に、日本はそうとういい状態になると思います」

橘「政府は防衛費を2パーセントにしようとしていますが、そんなお金、どこにあるんですか。敵基地攻撃能力をもって、本当に戦争は止まるんですか。
なんでそういうことになるのか、私には分からない。アメリカとの付き合いだとか言う人もいます。
海外でのリアルな戦争が目に入ってきたから、急に軍事費増強を言い出す。その単純さは、どこからくるんですか。本当に防衛のためなのか、アメリカのものを買わなければならないからなのかもしれないと、疑ってしまう。
政府の予算には、腹が立っていますし、国会議員だったら座り込みをしたいくらいです」

■パラパフォーマーに支援

ここで、橘事務局長は、質問とは関係がない話として、パラパフォーマーについて、語ります。
パラパフォーマーは、パラスポーツの芸術版をする方たちのことです。

橘「パラアスリートの支援をする会社は増えてきましたが、うちの会社は、パラパフォーマーを応援しています。ひとりはダウン症の人で、ヒューマンビートボックス(人間の発話器官を使って音楽を創りだす音楽表現)ができるんです。喉と鼻と口を同時に鳴らせて、リズム感もあって、ショーになるんです。その天才的能力をもった人がいます。
もうひとりが難聴の人で、フリースタイルバスケットボールをします。バスケボールを自由に扱える。
この2人がチームを組んでパフォーマンスをしています。この前、見て、感動しました。
社員のありかた、障がい者のあり方を変えていきたい。そういうところに、国の予算をドカーンとつけたい。それだけでも、世の中、変わりますよ。
いままで差別的にものを見てきた政治家がたくさんいたけれど、そうでない人が増えていかなければならない」

■選挙はなぜネットで投票できない?
男性から、「選挙の投票方法がなぜデジタルにならないのか」と質問。

橘「私はインターネットで投票できるようにすればいいと思うけれど、自民党が絶対にやらせません。
それができたら、選挙は全然違ってくるはずです。投票率も上がる。そうすると、政治も変わります。
これまで、だいたい投票率が高いと野党が勝っています。
いま、投票率は50パーセント。大雑把にいうと、与党に3割、野党に2割です。では、残りの50パーセントが投票したら同じ比率になるかというと、そうはならないでしょう。野党が多くなるんです。
その意味でも、投票率を上げたい。だから、インターネットで投票できるようにするのは大賛成。でも、同じ理由で、自民党は大反対でしょう」

青野「選挙が変わらない理由は、僕にはわかりませんが、変えたくない人がいるんだろうな、と。
マイナンバーカードを止めて、スマホのアプリにしたらというのは、選挙にもつながってきます。
いまの選挙は、代理人を選ぶ制度ですね。これがよろしくない。だって、意見が全部合う代理人なんていないのに、なぜ、その人に投票しなければならないのか。
たとえば、選択的夫婦別姓では、スマホのアプリで国民投票できるようにしてほしい。
コスト、ほとんどかからないですよ。
国民の意見がすぐに反映される。政治家、いらないですよ。直接民主制が、インターネットでは可能なんです。
デジタルを社会インフラにして、インターネット型の仕組みに変えていくと、僕らの暮らしはもっとスピーディーによくなっていきます。それが、僕の思っている理想の選挙制度です」

■デジタル通貨で信用創造は可能か

続いて、男性から「デジタル通貨をうまく使って信用創造ができるんじゃないか」とのご意見。
「別の種類の通貨を作ることで、たとえば銀行間取引に使えないか。銀行間取引であれば、デジタル通貨が悪用される可能性は非常に低い。それを使って何ができるかというと、国家予算、大赤字ですよね。国債の問題とかいろいろありますけれども。市中銀行は日銀に担保としてお金を預けてるんですよ。眠っているお金になっている。これをデジタル通貨に交換してしまう。政府が今預かっているお金は全部取り上げて、国債と入れ替えてしまう。利子も発生しなくなりますし、かなり財政赤字が改善するんじゃないかと思います。そういうことが本当に技術的に可能かどうか、何かご存知でしたら教えてください」

青野「デジタル通貨のいいところは、誰でも発行者になれることです。中国は、デジタル人民元を発行することにしたようですが、日本はまだわかりません。
企業がデジタル通貨を発行できるようになれば、ゲームがまた変わってくると思います。ディズニーがデジタル通貨を発行したら、みんな欲しがるでしょう。Amazonが発行したら、日本円より上がるかもしれない。日本の総理大臣とアップルの社長のどっちを信用しますかとなったら、アップルでしょう。
国が通貨の発行権限を失っていくというのが、僕の持つデジタル通貨の未来のイメージで、これが可能になってくると、面白い」

■原発
次はフリーの記者の男性。
「菅直人元首相は、脱原発、再生可能エネルギー推進ですが、いま、国会のなかでは少数派になっています。国会全体では自民党もちろん、立憲民主党も、はっきりと原発再稼働反対と言わなくなっています。
また、敵基地攻撃能力についても、立憲民主党ははっきり反対を言わない。
維新と国会で共闘しているので、気をつかっているのか
河野大臣がマイナンバーカードについて見直しをはっきり言わないのは、なぜなのか」

橘「脱原発派が少数派になったのは不思議でしょうがない。物事をちゃんと考えないからです。
原発がだめな理由は、さっき言ったとおりです。再生可能エネルギーはできます。バッテリーも10分の1になりました。それなのに、そっちの方向に行かないのは、別の理由があるんでしょう。
たとえば、プルトニウムを持っていたいからだと言う人がいますが、本当ですかね。核爆弾をいつでも持てるようにしたいというのも、違うと思います。
既存の勢力を殺したくない、既存の原発を作っている会社にご機嫌をとる。そうしないと日本の経済がうまくいかないということから、原発をやめられない。
矛盾に矛盾を繰り返した結果が原発推進が増えていくということで、とんでもないですよ。
3か月前までは『原発の新設はしない』と言っていたのに、急に、新設もすると言い出してますね。コンクリートは40年か50年しかもたないのに、そのコンクリートで台ができている原発を、60年以上も使うなんて、何を考えているのか。
『自然エネルギーでできます』と言っても、『あんたは信用できない』と、議論にならない。
あと、維新の話がありましたが、別に私は立憲民主党の人間ではありませんが、維新の政策に対して、立憲の人がいいと思っているわけではないと思っています。
ただ、国会というのは、たとえば統一教会のこの法案を通そうよという点などでは、一緒にやったほうがいい。そういうふうに理解しています」

■増税は「失われた30年」にさらに冷水ではないか

次は、若い男性から、税金の質問。
「岸田首相が増税の話をされ、所得税からは取らないと言っていましたが、そうなると、消費税、もしくは法人税を上げることになります。失われた30年にさらに冷水をかけることにならないか。増税について、どうお考えですか。
もうひとつ、失われた30年を脱却するためには、政治にどのように問いかけていくのが必要なのか」

青野「増税するかどうかは、あまり問題ではないと思います、何に使うかです。さきほど話したように、デジタル、ベンチャー、子どもに投資する。
この3分野に徹底的に投資しますというのであれば、増税もいいと思いますが、どうもそうじゃないっぽい。沈むための増税になるんじゃないかというのが、率直な思いです」

橘「消費税を安くするかは別として、取れるところからは取らないといけない。よく言われるのが、金融所得課税ですね。株は、いくら儲けても20パーセントしか税金が取られない。
株を持っている人は、お金持ちが多いので、そういう人からはもっと取っていいと思います。普通の総合課税にすればいいと思います。
これは証券会社に対して、気を使っているんですね。
いま、企業がなぜお金をため込んでいるか。ひとつは投資したくても投資先がない。もうひとつは、日本の経済に不安があって、急に何か起きたときにお金が必要になるかもしれないので、持っていたい。
でも、企業は投資しなければいけません。投資しないなら、社員にボーナスで払うべきです。
私の試案は、ストック課税です。利益が出て3年間、保有したら、その半分を税金で取りなさい、というものです。
そうなると、企業は税金を払うのがいやだから、4年目にどこかに投資するか、社員にボーナスを払う。その結果、企業が弱くなるなんてことはありえませんよ。
消費税あげるなんて、とんでもないです」

青野「僕の言う、中期としてベンチャーに投資するというのがそれに当たるんです。
がんばろうとしている若者のところにお金をまわすことが大事なんです。
テスラがなぜあんなに大きくなったか。国のお金がふんだんに投資されているんです。だから、急速に成長できた。日本は、それやっていない。
日本の若者だって、面白い人、いっぱいいますよ。そこにお金をまわすと、大企業も、一般のお金持ちも投資します。
若者に一律的に投資するのではなく、人をみて、がんばっている人に投資する。そうすると、そこが上がると、ほかも上がります。それができていないから、停滞しているんです」

■企業には暴走を防ぐ仕組みがあるがり、国家にはない。

最後に質問したのは、作家・編集者で、武蔵野政治塾のレポート作りなどを手伝ってくださる中川右介さん。

「国家が邪魔だというのは、たしかに、そうだなと思うんですけども、一方で企業だって暴走もするし、悪いことをするじゃないですか。いまは、オリンピックでの電通が問題になっています。
果たして企業にだけ、期待していいのでしょうか」

青野「企業にまかせればいいかっていうと、そんなこともないです。いろんな会社がそれを証明しています。カネボウや東芝がそうですね。
ただ、そこで何が起きているか。経営者が交代させられたり、企業が分割されたりします。
企業には淘汰される仕組があります。だが、国家にはその仕組みがない。そこが大きな違いだと思います。自浄作用がきく仕組みがあるかどうか。たとえばAppleが暴走し、変なことをしたら、みんな、iPhoneを使わなくなります。そうなると困るから、彼らはガバナンスをきかせてがんばっていく。
この仕組みが企業にはあるけれども、僕たちは、日本国家がどれだけおかしいと思っても日本国家から逃げ出すことは相当難しい。
ここが企業と国家の違いです。企業から顧客は離れていけるけれど、国家から国民は逃れられない。
だから、企業のほうがうまくいきやすい状態になっていると思います。」

■サイボウズはもっともっと大きくなるのか

中川右介さんから、もうひとつ、サイボウズの将来についても。
「サイボウズはすごく働きやすい会社で、いいなと思います。青野さんは、サイボウズを今1200人くらいいるそうですが、将来、1万人10万人、20万人と大きくしたいのか。
それとも、もしかしたら、将来は企業というものもなくなっていって、みんなが個人事業主になって、それぞれ、個々に契約して仕事を請け負ってお金をもらう、そういう社会に進むほうがいいと考えているのか、どちらでしょう」

青野「めっちゃ面白い話ですね。目指すのは全人類が幸せな状態であればいいんで、サイボウズが大きくなる必要は、まったくない。むしろサイボウズが大きくなっていった方が問題が起きそうな気がします。
大きな組織は、トップの権限が強くなっていきます。社会的影響力も大きくなりますので、ここが暴走したら社会に与えるマイナスの影響もとても大きくなります。
イメージとしては、インターネットは『自立分散』という言い方をしまよね、そこです。理想は1人1人の個人が1人1人の人類が自立心を持って、主体的に生きること、働くことのできる社会にする。
その結果として、どういう仕組みをとっていくのか。企業という仕組みもあるだろうし、個人事業者という形もあるでしょう。
でも、向かっている先は、全員が個人事業主のような方向だと思います」

経営のことから、税金、さらには国家予算についてまで、さまざまな質問が出ました。
「こんなこと、政治家に聞いてよ」と思うような質問もありましたが、青野慶久さんは逃げずに、真摯に答えてくださり、会場に集まった人たちも、満足だったと思います。
終わった後は、青野さんと名刺交換したいという人が行列を作りました。

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